(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/11/21)
- [論文] CORALINA: CRISPRスクリーニング用gRNAライブラリーの汎用構築法
- Corresponding authors: Stephan Beck (U. College London); Stefan H. Stricker (Inst. Stem Cell Research/ Ludwig-Maximilian-U.)
- プール型gRNAsライブラリーを利用したCRISPRスクリーニングが機能ゲノミクスや疾患に相関するパスウエイ解析に活用され始めている。しかし、プール型gRNAsライブラリー構築はこれまで殆どオリゴヌクレオチド合成に依存していることから、技術的制約とコストの面から対象がヒトとマウス、しかも比較的単純なライブラリー、に限られていた。著者らは今回、任意の生物モデルについて、ノンコーディング領域を含む全ゲノムやエピゲノムを対象とするCRISPRスクリーニングに必要とされるgRNAsライブラリーを構築するシンプルで時間と経費を要さない手法“CORALINA (comprehensive gRNA library generation through controlled nuclease activity)”を開発した。
- [論文] クオラムセンシングに依存するCRISPR/Casシステム活性化機構から新たな感染症対策へ
- Corresponding author(s): Bonnie L. Bassler (Princeton U.)
- CRISPR/Casは原核生物の獲得免疫機構であり、原核生物をファージやウイルスから保護する。CRISPR/Casシステムの調節機構を明らかにすることで、自然環境におけるファージの動態を知り、病原微生物のファージ療法(phage therapies)を強化していくことが可能になる。
- 著者らは今回、タイプI-F CRISPR-Casシステムを有する緑膿菌Pseudomonas aeruginosaのPA14株において、細胞間コミュニケーションの一種であるクオラムセンシング(quorum sensing)を介して、細胞密度が高い状況でcas 遺伝子の発現が活性化し、外来DNAを標的とするCRISPR/Casが増加し、スペーサー獲得(adaptation)が亢進することが明らかにした。
- さらに、クオラムセンシングを促進および阻害する化合物によって、CRISPR/Casシステムの活性とファージ抵抗性を上方および下方制御可能なことも明らかにした。
- クオラムセンシング阻害剤によるCRISPR/Cas獲得免疫システムの抑制とファージ療法の併用の臨床応用が考えられる。
- [論文] CRISPR/Cas9によりJCポリオーマウイルスの感染を阻害する
- Corresponding authors: Yi-ying Chou; Tom Kirchhausen (Boston Children’s Hospital)
- 進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)は、JCポリオーマウイルス(JCPyV)のオリゴデンドロサイトへの感染から発症するが、JCPyVに対する抗ウイルス療法は存在しない。
- 著者らは今回、培養細胞において、JCPyV感染の前または感染後に、Cas9とJCPyVゲノムのノンコーディング調節領域と遺伝子のオープンリーディングフレームを標的とするsgRNAを送達することで、ウイルスの複製とウイルスタンパク質の発現を顕著に抑制することに成功した。
- [論文] 多剤耐性骨肉腫細胞のABCB1 (MDR1) を標的とするCRISPR/Cas9により薬剤感受性を回復
- Corresponding authors: Tang Liu (2nd Xiangya Hospital of Central South U./MGH & HMS); Zhenfeng Duan (MGH & HMS)
- 化学療法に対する骨肉腫の多剤耐性の一因は、ABCB1 (MDR1) 遺伝子の産物である薬剤排出トランスポーターP糖タンパク質(P-gp)の過剰発現にある。多剤耐性を獲得した骨肉腫細胞に化学療法に対する感受性をもたらす研究がなされている(例 Ye, S. et al., 2016)が、臨床応用には至っていない。 著者らは今回、ABCB1 (MDR1) を標的とするCRISPR/Cas9システムによって、多剤耐性骨肉腫細胞株KHOSR2とU-2OSR2にドキソルビシンに対する感受性をもたらすことが可能なことを示した。
- [論文] アデノウイルスベクターによるRNP送達によるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療の可能性
- Corresponding author: Manuel A. F. V. Gonçalves (Leiden U. Medical Center)
- Cas9/gRNAのRNPを発現するカセットを単一のアデノウイルスベクター(AdVs)によって送達することで、デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の筋肉由来前駆細胞におけるDMD 遺伝子変異を修復することを試みた。
- 遺伝子内の病因変異を含む読み枠をカバーする狭い領域を標的とするRNPと広い領域を標的とするRNPの組合せを試行した。その結果、2重のRNPsを利用することで、細胞を選択することなくDMD 遺伝子座の10%について読み枠を回復し、症状が比較的軽いベッカー型筋ジストロフィーのタンパク質発現を実現できることを見出した。加えて、AdVによるRNP送達によって、500-kbを超えるDMD 変異のホットスポットを除去可能なことを見出した。
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