[出典] "Programmable RNA-Guided RNA Effector Proteins Built from Human Parts" Rauch S [..]  Dickinson BC. Cell 2019-06-20;[Previews] ”Humanizing Transcriptome Engineering” Mali P. Cell 2019-06-27; Research Highlight "Human CRISPR" Rusk N. Nat Methods. 2019-07-30.

概要
  • University of Chicagoの研究チームは今回表題システムを開発し、CRISPR-Cas-inspired RNA targeting system (CIRTS)と命名した。
  • CIRTSは、DNAへの介入に対してRNAに介入することによる本来的な利点に加えて、ゲノム編集に現在最も広く利用されているCas9や、RNA編集Casとして注目されているCas13よりも小型でAAVベクターによるデリバリーが容易であり、また、微生物由来タンパク質ではないためヒトの免疫応答リスクを伴わない、という利点を備えている。
CIRTSの構成
  • 研究チームはCas13の構造と活性機構を分析し、機能部品を切り分けた上で、CIRTSを再構築した。
  • CIRTSは、(1) RNAヘアピン結合タンパク質に、(2) ヘアピン構造にリンカーを介して標的RNAに相補的な配列をリンカーを介して連結したgRNA、(3) gRNAの配列部分に非選択的に弱い結合親和性で結合しgRNAを標的RNAに結合するまで保護する荷電ssRNA結合タンパク (以下、gRNA保護タンパク質)、そして、(4) エフェクター・タンパク質が結合した構成である。
  • 今回、各部品の組み合わせ19種類 (CIRTS-0からCIRTS-18まで)を作出した (CIRTS-0はコントロール用)。CIRTSの構成図と今回テストされた各部品リストおよびその組み合わせが、原論文のFigure 1Figure S1にまとめられている。
CIRTSのRNAターゲッティング性 (CIRTS-1)
  • CIRTS-1は、ヒト内在RNAヘアピンには結合せず、HIVの trans-activation response (TAR) ヘアピンに結合するように改変したヒトRNAヘアピン結合タンパク質U1A (TBP6.7)に、TARヘアピンにリンカー (最適化を経てUUAUUのヌクレオチド配列を選択)を介してガイド配列を連結したgRNAを組み合わせ、エフェクタとして非選択的で近接依存性のRNAエンドヌクレアーゼ活性を帯びたPinドメインを加えた構成である 。
  • gRNA保護タンパク質としては、研究チームが知る限りではその条件を満たすヒト・タンパク質が存在しなかったため、Grapevine virus A由来のssRNA結合タンパク質open reading frame 5 (ORF5) (J Gen Virol, 2006)を採用した。
  • この、CIRTS-1が、ホタルルシフェラーゼmRNAを標的とするアッセイで、gRNAにガイドされて標的RNAに結合し分解し、mRNAレベルとともにタンパク質レベルも低下することを、HEK293Tにて確認した。
CIRTSのモジュール性 (CIRTS-2~4)
  •  はじめに、エフェクタとしてPinリボヌクレアーゼをRNAエピトランスクリプトミクス (epitranscriptome) 制御因子に差し替える実験を行った。
  • 具体的には、主たるmRNAの修飾として知られるN6-メチルアデノシン(m6A)を認識してmRNAに結合しmRNA翻訳装置をリクルートする制御因子、YT521-B homology domain family protein 1 (YTHDF1)からC末端に存在するm6Aを認識するYTHドメインを削除した断片を選択しCIRTS-2を作出した (研究チームは先行研究でdCas13bを介したRNAエピトランスクリプトミクス調節を実現している: J. Am. Chem. Soc, 2018)。
  • CIRTS-1と同じ標的mRNA (レポータ)に向けたCIRTS-2によって、標的mRNAのレベルに影響しなかったが、タンパク質レベルが顕著に上昇した。
  • YTHDF1断片を、m6Aを認識してRNAの脱アデニル化装置をリクルートしRNA分解を誘導するYTHDF2断片に差し替えたCIRTS-3は、レポータのmRNAレベルもタンパク質レベルも低下させた。
  • CIRTS-3から、RNAヘアピン結合タンパク質を、ヒトのヒストンステムループ結合タンパク質 (SLBP)に差し替えたCIRTS-4も、CIRTS-3と同等の効果を示した。
CIRTSの完全ヒト化 (CIRTS-5/6)
  • CIRTS-4までgRNA保護タンパク質としてウイルス由来ORF5を使用してきたが、Cas13dに倣って、ヒトのカチオン性高荷電タンパク質で代替可能とする仮説を立て、CIRTS-3のORF5をそれぞれヘアピン結合EGF様成長因子 (heparin-binding EGF-like growth factor: HBEGF)とβ-デフェンシン 3に差し替えたCIRTS-5 CIRTS-6をアッセイし、CIRTS-3と同等の効果を示すことを確認した。
CIRTSによるRNA塩基編集 (CIRTS-7/8)
  • CIRTS-5のエフェクタをヒトのアデノシン・デミアミナーゼ (hADAR2)とその高活性変異体hADAR2 E488Qの触媒ドメインにそれぞれ差し替えたCIRTS-7CIRTS-8により、レポーターに導入した点変異の修復を実現した。
CIRTSによる内在mRNAsターゲッティング
  • 先行研究のCas13によるRNA編集で標的とした5種類のRNA転写物を標的とするCIRTS-1 (Pinドメイン)とCIRTS-3 (YTHDF断片)が、いずれの標的についてもRNAレベルを顕著に低下させることをRT-qPCRにて確認した。
  • CIRTS-1については、lincRNAの一種であるMALAT1のノックダウンも確認した。
  • CIRTS-2 (YTHDF1断片)でプロリルイソメラーゼB (PPIB)をターゲッティングすることで、RNAレベルは変化しないが、タンパク質レベルが上昇することの確認した。
CIRTSの標的サイト依存性
  • 同一遺伝子内の異なる標的サイトによるCIRTSの編集効率の変動を明らかにするために、gRNAのタイリング実験を行った。SMARCA4 mRNAを例としてとりあげ、CIRTS-3の効果が標的サイトによって変動することを見出した。
CIRTSの精度
  • レポータ遺伝子を利用してgRNAと標的RNAが形成する二重鎖におけるミスマッチ (1~3)の影響を分析し、2ヶ所または3ヶ所のミスマッチによってCIRTSノックダウン効率が低下するが、1ヶ所のミスマッチは影響しないことを見出した。
  • SMARCA4を対象とするトランスクリプトーム・ワイドでのオフターゲット作用も検出限界以下であった。
CIRTSの多重化
  • CIRTS-6とPPIB、SMARCA4ならびにNRASを標的とする3種類のgRNAsを同時に導入することで、いずれについてもRNAレベルの低下が実現した。
  • エフェクタとしてYTHDF1断片とYTHDF2断片を組み込んだCIRTSのそれぞれの完全ヒト化版CIRTS-9CIRTS-10の併用もテストし、レポータを標的とするCIRTS-9とSMARCA4を標的とするCIRTS-10の併用によって、期待通り、レポータ・タンパク質レベルの上昇とSMARCA4 RNAレベルの低下が誘導されることを確認した。
  • 同一エフェクタ (YTHDF2)でヘアピン結合タンパク質を異にするCIRTS、CIRTS-6 (TBP6.7)とCIRTS-10 (SLBP)、の併用も可能であった。
CIRTSは小型
  • CRISPR-Casシステムにおいて、SpCas9のサイズは1,368 aa、RNAヌクレアーゼを帯びたCas13aファミリーのサイズは956 ~1,389 aaであるのに対して、CIRTSシステムでは、例えば、CIRTS-1、CIRTS-2、CIRTS-3はそれぞれ、432 aa、615 aa、341 aaと小型であり、AAVによるデリバリに適している。
  • CIRTS-6とgRNAのプラスミド (2.7 kb)をAAVを介してHEK293に送達し、所期の活性が発揮されることを確認した。
  • 単一AAVベクターで複数のCIRTSシステムを多重に送達することも可能である。