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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/11/24)
  1. [論文] Arabidopsis においてPolymerase θを介したDNA二本鎖切断修復の存在を同定
    • Corresponding author: Sylvia de Pater (Leiden U.)
    • 野生型とclassical NHEJ(c-NHEJ)の因子ku80 とKU非依存バックアップNHEJ(b-NHEJ)の因子parp1 parp2 を欠損したArabidopsis のcruciferin 3 遺伝子protoporphyrinogen oxidase 遺伝子に、CRISPR/Cas9を利用してDSBを導入し、DSBからの修復機構を比較解析した結果、Polymerase θを介したDSB修復が起こっていることが示唆された。
  2. [論文] pKAMA-ITACHI Red (pKIR)法:Arabidopsis thaliana のゲノム編集効率を大幅に向上
    • Corresponding authors: 筒井大貴; 東山哲也(名古屋大学)
    • 植物におけるCas9 のプロモーターとして従来よく使われてきたてカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターに変えて、卵細胞の段階からプロモーター活性を発揮するRIBOSOMAL PROTEIN S5 A (RPS5A)をCas9のプロモーターとし、そのDNAを、Cas9タンパク質、gRNAおよび赤色蛍光タンパク質のDNAと共に組み込んだpKAMA-ITACHI Red (pKIR)プラスミドを送達することで、A. thaliana 高効率のゲノム編集を実現。
    • PDS3 遺伝子のノックアウト効率は、35Sプロモーターの3.1%から66.7%へと向上。T1世代におけるPHYTOENE DESATURASE 3 (PDS3)AGAMOUS (AG)、およびDUO POLLEN 1 (DUO1) のノックアウトも確認。ADH1 遺伝子のノックアウト実験ではT2世代への継承も確認。赤色蛍光タンパク質をマーカーとして、Cas9からフリーのT2世代の選別も実現。
  3. [論文] Pseudomonas aeruginosa のI型CRISPR/Casは、宿主に対する毒性を調節する
    • Corresponding authors: Guoping Li (Affiliated Hospital of Southwest Medical U.); Jianxin Jiang (Third Military Medical University); Min Wu (U. North Dakota/Sichuan U.)
    • 日和見感染菌のPseudomonas aeruginosa の中でよく研究されてきたP. aeruginosa PAO1にはCRISPR/Casシステムが存在しないが、毒性が強いP. aeruginosa UCBPP-PA14(以下、PA14)はI-F型CRISPR/Casを備えている。研究チームは、野生型PA14とCRISPR/Cas領域を欠損させた変異株の双方について、モデルマウスおよびマウス肺胞マクロファージ由来MH-S細胞への感染実験を行い、CRISPR/Casシステムが宿主感染に関与する機構を明らかにした。
    • PA14のI-F型CRISPR/Casは、クオラムセンシングのマスター調節因子であるlasRmRNAを分解することで、宿主のToll様受容体4(TLR4)の認識を掻い潜り、宿主の炎症誘発性を抑制することを見出した。
      • CRISPR/Casシステムを欠損させたPA14がファゴソームに取り込まれると、LasRに依存するPA14の毒性因子が宿主のTLR4の発現、ひいては、免疫応答を亢進する。
      • 野生型PA14の場合は、そのCRISPR/CasがlasR を分解することで、宿主のTLR4の発現ならびにマクロファージにおけるTLR4による検知を低減し、ひいては宿主の炎症応答を低減する。
  4. [論文] CRISPR/Cas9複合体(RNP)をパーティクル・ガン法で打ち込みトウモロコシのゲノムを編集
    • Corresponding author: Sergei Svitashev (DuPont Pioneer)
    • トウモロコシの未成熟胚に、Cas9とgRNAのリボ核タンパク質複合体(RNP)を付着させた金粒子を高圧ヘリウムガスで打ち込むことで、変異アレルを帯びたトウモロコシ個体を高い効率で生成することに成功した。この手法は、Cas9などの外来DNAや、変異アレルの存否をスクリーニングするためのマーカーも必要としない特徴を有している。
  5. [論文] 神経細胞において遺伝子の迅速かつ効率的な遺伝子不活性を可能にするプラットフォーム
    • Corresponding author: Vania Broccoli (San Raffaele Scientific Inst.)
    • 重篤な神経病理的疾患の病因となるTSC2遺伝子KCNQ2遺伝子の不活性化をモデルとして、神経細胞の迅速かつ効率的な遺伝子不活性化プラットフォームを開発した。
      • SpCas9をドキシサイクリン(Dox)で活性化するゲノム編集システムと神経分化促進因子Ngn2を利用する神経細胞促進系を組み合わせて、ヒト多能性幹細胞(hPSC)、ヒト神経前駆細胞(hNPCs)および繊維芽細胞からの ダイレクト・プログラミングに適用。
      • Indel発生率は80〜90%%に達し、また、目的とするゲノム改変神経細胞を5週間で樹立することに成功した。
  6. [研究資源] 転写活性化因子群を結合したdCas9を安定発現するiPS細胞株を樹立
    • Corresponding authors: Kristine Karla Freude (U. Copenhagen); Yonglun Luo (Aarhus U.);
    • はじめに、不活性化したCas9(dCas9)に転写活性化因子VP64を結合し、さらに、sgRNAにアプタマーを介してMS2-P65-HSF1を結合した転写活性化システムを付加したCRSIRP-Cas9 synergistic activation mediator (以下、SAM)を発現する繊維芽細胞を作出した。この改変繊維芽細胞を、OCT4SOX2KLF4、およびC-MYC を発現するレンチウイルスで形質転換し、SAMを発現する2種類のiPSCsを樹立した。
      • 多能性遺伝子(OCT4SOX2LIN28ANANOGGDF3SSEA4、およびTRA-1-60 )の発現、三胚葉への分化および核型が正常であることを確認。
      • SAM-iPSCsは、内在遺伝子の活性化を介した幹細胞増殖と分化の研究に有用である。
  7. [Preview & 論文/短報] CRISPR/Casシステムが免疫記憶を更新する機構“primed adaptation/priming”
    • Preview corresponding author: Scott Bailey (JHU) 短報 corresponding author: Dipali G. Sashital (Iowa State U.)
    • CRISPR/Cas免疫システムにおけるプライミングの機構に関するMolecular Cell 掲載2論文をプレビュー:
    • CRISPR/Casの獲得免疫機構とファージの獲得免疫回避機構
      • “acquisition”:Cas1-Cas2インテグラーゼが侵入DNA由来のスペーサーをCRISPRアレイに組み込む 
      • “expression”:CRISPRアレイから転写されプロセスされたCRISPR RNAs(crRNAs)が、タイプIシステムの場合は、Cascadeと呼ばれるサーベイランス複合体へ組み込まれる。
      • “interference”:Cascadeは、crRNAに相補的な配列(プロトスペーサー)とPAM(E. coli ではCTT)を認識して外来DNAに結合し、Cas3をリクルートし、 Cas3が外来DNAを巻き戻し分解する。
      • ファージは、プロトスペーサーとPAMの変異を介して宿主のCRISPR/Cas免疫応答を回避することが可能である。
    • “primed adaptation/priming”の機構
      • 宿主は迅速にCRISPRアレイに新たなスペーサーを加えるprimingを介してCRISPR/Cas耐性を得たファージに対抗する。
      • Künne et al. (2016):“interference”を逃れた外来変異DNAをCas3が分解してスペーサーの前駆体を形成し、それをCas1-Cas2が新たなスペーサーとしてCRISPRアレイに組み込む。
      • Xue et al. (2016):“interference”の段階でPAMを認識するCascadeのCse1サブユニットにはクローズド/オープンな2種類のコンフォメーションの動的平衡状態にあり、変異PAMとオープンコンフォメーション、そして、“interference”の減弱と“priming”が相関していることを示唆。しかし、Cse1サブユニットがオープンコンフォメーションをとった時の新たなスペーサー獲得の分子機能は不明である。
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