2021-04-01 Slide-seq の高性能版 Slide-seqV2 論文の情報を以下に追記
[出典] "Slide-seq: A scalable technology for measuring genome-wide expression at high spatial resolution" Rodriques SG, Stickels RR [..] Chen F, Macosko EZ. Science. 2019 Mar 29;363(6434):1463-1467. Epub 2019 Mar 28.
”Highly sensitive spatial transcriptomics at near-cellular resolution with Slide-seqV2” Stickels RR, Evan Murray E [..] Macosko EZ, Fei Chen F. Nat Biotechnol. 2020-12-07/2021 Mar. https://doi.org/10.1038/s41587-020-0739-1
組織内における分子の局在を測定することは、組織の形成や機能を理解する上で不可欠である。著者らは先行するScience 誌刊行論文にて、10 μmの空間分解能でトランスクリプトーム全域にわたるRNA検出を可能にする技術「Slide-seq」を報告していた。今回、ライブラリ調製、ビーズ合成、およびアレイ・インデクシングを改良したバージョンを「Slide-seqV2」としてNature Biotechnology 誌から発表している。
Slide-seqV2 は、scRNA-seqデータの約50%(Slide-seqの約10倍)というRNA捕捉効率を達成し、液滴(ドロップレット)ベースのscRNA-seq技術の検出効率に迫る性能を実現した。
このSlide-seqV2の高い検出効率を活かして、まず、マウス海馬の神経細胞において樹状突起に局在するmRNAを同定した。次に、Slide-seqV2データの空間情報とシングルセル・トラジェクトリ解析ツールを統合することで、マウス新皮質の時空間的な発生過程を解析し、従来のSlide-seqでは十分に捉えられなかった遺伝的プログラムを特定した。
細胞レベルに近い分解能と高い転写産物検出効率を兼ね備えたSlide-seqV2は、幅広い実験的文脈において有用なツールとなることを、期待できる。
2019-06-25 初稿[出典] "Slide-seq: A scalable technology for measuring genome-wide expression at high spatial resolution" Rodriques SG, Stickels RR [..] Chen F, Macosko EZ. Science. 2019 Mar 29;363(6434):1463-1467. Epub 2019 Mar 28.
背景
細胞集団の平均的な遺伝子発現を見ることから、一細胞ごとの遺伝子発現を見ることが可能になり、さらに、生体組織内での遺伝子発現の不均一性ひいては細胞型の多様性を可視化する技術の開発が進んでいる。
概要
Broad Instituteの研究グループは今回、DNAバーコードを活用してSlide-seqを開発し、遺伝子発現の組織内空間への高精細なマッピングを実現した (実験手法と可視化例について原論文FI.g 1参照)。
Slide-seqの構成
- はじめに、scRNA-seq技術の一種であるDrop-seqで利用されている技術に倣って、ラバーで被覆したスライドグラスに、固有のDNAバーコードを付した10 μm径のマイクロ粒子 (ビーズ)を単一層を形成するようにランダムに敷き詰める(a "puck")。
- この時、DNAバーコードの配列はSOLiD (sequencing by oligonucleotide ligation and detection)法でシーケンシング可能であり、DNAバーコードとpuck上のビーズの位置を紐付け、ひいては解析対象組織の切片との紐付けが可能になる。
- 次に、10-μmの新鮮凍結組織の切片をpuckにセットし、切片から放出されるmRNAをビーズで捕捉し、DNAバーコードを帯びたmRNAのライブラリーをシーケンシング解析する。
- scRNA-seqデータセットから細胞型を同定する計算手法と、組織内の分布がランダムではない遺伝子を同定する計算手法を開発し、細胞型の分布および局所的に発現している遺伝子の同定を実現した。
Slide-seqの利用
- Slide-seqによって、マウス海馬、小脳、嗅球、肝臓、腎臓とネフロン、および、ヒト死後組織小脳の凍結組織に基づき、大小かつ多様な組織内での細胞型の分布を明らかにした。
- マウス小脳皮質におけるプルキンエ細胞が一層に並んだプルキンエ細胞層において分布に偏りがある遺伝子669種類を同定した。そのうち126種類は、zebrin IIの発現パターンと相関あるいは反相関の関係にあった。
- さらに、外傷性脳損傷モデルマウスの脳において損傷を与えてからの細胞型特異的応答の経時変化を追跡し、損傷部位に近い神経細胞において長期間にわたり高発現を続ける一連の遺伝子群を同定した。
Slide-seqの普及
- Slide-seqデータの利用サイト:Study: Slide-seq study
- Slide-seqの初期費用は、1 puckあたりショートリード・シーケンシングの費用 (~200$ - 500$)であり、シーケンシング費用は下落し続けるとみられることから、Slide-seqは器官ごとさらには全身のマッピングへも展開可能である。
- 作業量としては、マウス海馬の分析には ~40人・時間を要した。
- Rodriques SG, Stickels RR, Martin CA、Chen FならびにMacosko EZを発明者として特許申請
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