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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] DNA Microscopy: Optics-free Spatio-genetic Imaging by a Stand-Alone Chemical Reaction.
Joshua A. Weinstein, Aviv Regev, Feng Zhang. Cell 2019-06-27 (bioRxiv 2018-11-19)

概要
  • 生体組織内で、然るべき遺伝子発現パターンを帯びた細胞が然るべき配置につくことが、然るべき生体応答をもたらし、その不全が疾患をもたらす。
  • Broad InstituteのJoshua A. Weinstein, Aviv RegevならびにFeng Zhangは、CRISPR技術の開発と応用で知られているが今回は、DNAバーコードを利用してmRNAs間の相対的な位置決めとRNA-seqを一体化したプラットフォームを開発し、DNA顕微鏡 (DNA Microscopy)と命名した。
DNA顕微鏡の原理 (原論文Figure 1参照)
  • はじめに、細胞を固定し、mRNAsに対応するcDNAsを合成し一定の長さLのランダムな配列のDNAバーコードで標識する。 DNAバーコードは4のL乗の種類のDNA/RNA分子を標識可能であり、cDNAのunique molecular identifiers (UMIs)として機能する。次に、cDNAをoverlap extension PCR (OE-PCR)のプライマーで増幅するとそのコピーが放射状に拡散する。互いに異なる2種類のcDNA-UMI ("beacon amplicon"と"target amplicon"と表記)の拡散範囲が重なると、beacon ampliconとtarget ampliconのUMIが連結する。この連結の頻度が高いほど、cDNA相互の距離 (beaconとtarget)が近いとし、連結頻度からcDNA/mRNAの相対距離を計算する。
  • 連結頻度の測定にあたっては、OE-PCRに由来するバイアスやキメラ形成の影響を排除するために、連結時にプライミングの対象にならないランダムな塩基配列からなる第2のDNAバーコードを連結形成という事象に固有なunique event identifiers (UEIs)として挿入しておき、連結の結果得られる2種類のUMIで標識したPCRアンプリコンとUEIをペアエンドシーケンスする。
  • 続いて、研究グループが開発したアルゴリズムに基づいて、UEIのデータからUMI同士の近接を計算し、このペアワイズ近接情報に基づいて、全体の配置を計算する。
概念実証実験
  • GFPで標識したヒトMDA-MB-231細胞とRFPで標識したヒトBT-549細胞を混合培養した人工組織において、各細胞に特異的なGFPとRFPおよび双方の細胞に存在するアクチンとGAPDHの4種類のmRNAsを対象とするDNA顕微鏡'観察'により、人工組織の構成を再現した。
  • DNA顕微鏡から得た人工組織は、落射蛍光顕微鏡(Epifluorescence microscope)で観察した結果と整合した。
  • 拡散距離に基づいたUEI行列に基づく細胞のセグメンテーションと一細胞分解能の遺伝子発現解析が可能なことを検証した (前述の人工組織モデルに20種類の遺伝子に対応するcDNAsを追加したモデルでも検証)。
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