(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/05)
- Corresponding authors: Jean-Philippe Pin (U. de Montpellier); Bernhard Bettler (U. Basel)
- 代謝型GABAB受容体(GABABRs)と代謝型グルタミン酸(mGlu)受容体(mGluRs)は、神経・精神疾患の治療に向けた創薬の格好な標的とされてきた。GABABアゴニストは筋痙攣、アルコール依存症、およびナルコプレシーを伴う脱力発作の療法に利用されている。また、mGluリガンドは、不安症、統合失調症、パーキンソン病、うつ病、薬物依存症、自閉症スペクトラム、強迫性障害、レット症候群、および胃食道逆流疾患を対象とするPOC (proof-of-concept)臨床試験(第II相試験)において、有効であるとされている。
- 一方で、めまい、吐き気、てんかん発作、運動障害などの副作用を伴うことから、GABABアゴニストの利用は限定的であり、mGluリガンドは認可に至っていない。
- 近年、これらの受容体は、そのサブユニット・ドメイン間の多重なアロステリック相互作用を介して活性化され、加えて、輸送、エフェクターおよび調節因子のタンパク質が加わった多タンパク質からなる受容体複合体の構造と構成が明らかにされ、GABABRsとmGluRsを標的とする創薬の手がかりが増えつつある。
- [レビューの構成]
- 受容体がオリゴマーを形成する機構;活性な構造と不活性な構造
- 細胞外Venus flytrap domain (VFTD)が膜貫通部位のアロステリック作用を介して受容体を活性化する機構;受容体のシグナル伝達を調節するタンパク質群(GABABRインタラクトーム;mGluRインタラクトーム)
- 受容体プロトマーを標的とする創薬(細胞外ドメイン/オルソステリック部位/7回膜貫通領域);受容体に結合するタンパク質を標的とする創薬(Sushiドメイン/エフェクターチャネル/細胞質タンパク質)
- 今後の課題:活性状態と不活性状態およびGタンパク質存在下と非存在下での二量体受容体全長構造の解析、GABABRsの超構造の生理学的意味の解析、受容体インタラクトームのプロテオミクス解析、受容体複合体の構造と構成のより高精度な解析、細胞内動態の解析
コメント