crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Sequential LASER ART and CRISPR Treatments Eliminate HIV-1 in a Subset of Infected Humanized Mice" Dash PK, Kaminski R, Bella R [..] Khalili K, Gendelman HE. Nat Commun 2019-07-02. (注: LASER ART (Long-acting slow effective release (LASER) anti-retroviral therapy (ART))/長期間作用型・徐放性・抗レトロウイルス療法)

 University of Nebraska Medical CenterとTemple Universityの研究グループが今回、University of Nebraska Medical CenterのH. E. Gendelmanらが開発していたLASER ART (Expert Opin Drug Deliv, 2017)と一定期間加えた後、CRISPR-Cas9によりHIV-1のLTRからGag遺伝子に至るサブゲノムDNA断片を削除したところ、HIV感染ヒト化マウスモデル7匹のうち2匹において、ゲノムDNAに組み込まれたプロウイルスDNAが除去され、LASER ART中断後に見られるリバウンドも抑止された。
  • LASER ARTとCRISPR-Cas9を併用することで、HIV-1は、血液、脾臓、リンパ系組織、骨髄、腸、脳、肝臓、腎臓および肺および脳のいずれにおいても、一部のマウスにおいて、非検出に至った (ネステッドPCRとddPCRに加えてRNAscopeにより判定)。CRISPR/Cas9のオフターゲット編集は非検出であった。LASER ARTまたはCRISPR-Cas9の単独療法ではこの効果は実現できなかった。
  • 下図左に、LASER-ARTに続くCRISPR-Cas9のAAV9送達を組み合わせたヒト化マウス実験のスケジュールとその作用を原論文Fig 2から引用し、下図右に実験の概要の図示を原論文Fig. 9から引用:
LASER ART + CRISPR-Cas9. A working model for HIV-1 elimination
  • また、LASER ARTとCRISPR療法を加えた結果ウイルスフリーになったモデルマウスからHIV-1に感染していないモデルマウスに移植したヒト免疫細胞がウイルスを生産することはなかった。対照的に、LASER ARTまたはCRISPR-Cas9の単独療法を加えたモデルマウスに由来するヒト免疫細胞からはHIV-1が検出された。
 今回、LASER ARTとCRISPR-Cas9の併用療法によって、LASER ARTでは除去できないプロウイルスが除去された事例が報告されたが、この効用は一部のマウスに見られた現象であり、今後、併用療法が効用を示す分子機序の解明が待たれる。
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