[出典] "Augmenting Immunotherapy Impact by Lowering Tumor TNF Cytotoxicity Threshold"
Vredevoogd DW, Kuilman T [..] Peeper DS. Cell 2019-07-11.
背景
- 免疫チェックポイント阻害 (immune checkpoint blockade: ICB)は劇的な効用を示す一方で効用が示される癌患者が限られている。そこでICB療法において、ICBとは独立に細胞障害性T細胞 (以下、T細胞)の活性を高める新たな手法が求められている。
- T細胞の抗腫瘍活性には、IFNγ、TNF、Fas、TRAILといったサイトカインが寄与することが知られている。また、腫瘍細胞におけるIFNγパスウエイの不全が腫瘍細胞にICB耐性をもたらすことも知られている。
成果
Netherlands Cancer InstituteとUtrecht Universityの研究グループは今回、IFNγパスウエイが不全な欠失メラノーマ細胞にT細胞に対する耐性をもたらす遺伝子 (その欠損がT細胞に対する感受性を高める遺伝子)の同定を試みた。
Netherlands Cancer InstituteとUtrecht Universityの研究グループは今回、IFNγパスウエイが不全な欠失メラノーマ細胞にT細胞に対する耐性をもたらす遺伝子 (その欠損がT細胞に対する感受性を高める遺伝子)の同定を試みた。
- メラノーマ特有のMART-1抗原を遺伝子導入した健常者由来のT細胞 (以下、MART-1 T細胞)のチャレンジに対するIFNγ受容体 (IFNGR1)欠失メラノーマ (以下、メラノーマ)の耐性を見るゲノムワイドCRISPR/Cas9ノックアウトスクリーニングから、その欠損がメラノーマのT細胞に対する感受性を高める遺伝子として、TNF受容体関連因子2と細胞性アポトーシス阻害因子1をそれぞれコードするTRAF2とBIRC2遺伝子、を同定した。
- ベースラインおよびICBに応答しなかった患者の細胞では、TNFのレベルが抗腫瘍性を発揮するには不十分であったが、TRAF2が不活性化によって、ピコグラムのTNFに対して感受性を示すに至った。
- TRAF2が不活性化された腫瘍細胞では、T細胞に由来するTNFによって、腫瘍細胞がRIPK1依存の細胞死に至る。
- Fn14 (fibroblast growth factor-inducible 14)受容体をリガンドTWEAK (tumor necrosis factor-related weak inducer of apoptosis)で活性化し*、TRAF2のリソソーム分解を誘導することで、腫瘍細胞がT細胞への感受性を示すに至ることを示した。また、抗Fn14抗体 (enavatuzumab)も同様の効果を示した (* REVIEW "The TWEAK-Fn14 system as a potential drug target" Wajant H. Br J Pharmacol. 2013 Oct;170(4):748-64)。
- Cas9遺伝子編集によるTRAF2の不活性化にcIAPの薬理学的阻害を加えることで、メラノーマと肺癌細胞株において、T細胞に対する感受性が亢進した。
コメント