1. 冠動脈心疾患のリスク因子LDL-Cのレベルを低減するCRISPR-Cas9システムと送達法
[出典] "Triple Targeting Delivery of CRISRP/Cas9 to Reduce the Risk of Cardiovascular Diseases" Zhang L, Wang L, Xie Y [..]  Zheng W, Jiang X. Angew Chem Int Ed Engl. 2019-07-18.
  • 広州医科大学, 国家納米科学中心などの中国研究グループは、LDL-Cのレベル低下を目指して、Pcsk9をノックアウトするCRISPR-Cas9システムを肝臓特異的に安全に送達するナノ粒子を開発した。
  • はじめに、グルタチオン還元により合成した金ナノ粒子 (GNCs)をカチオン性HIV-1トランス活性化転写因子 (TAT)ペプチドで修飾し、細胞核を標的とするTAT-GNCsを形成する。次に、TAT-GNCsと核移行シグナル (NLS)-Cas9およびsgPcsk9を混合しアニオン性複合体を形成し、次いで、この複合体を脂質層 (lipid)で被覆し、さらにこれを、4-アミノフェニル β-D-ガラクトピラノシド (Gal)で修飾したPEGで被覆し、Gal-PEG-lipid/TAT-GNCs/Cas9 protein/sgPcsk9 (Gal-LGCP)を形成する。
  • Galで実質細胞表面のアシアロ糖タンパク質レセプター (ASGPR)を標的し、TATペプチドとNLSで細胞株を標的する'triple-tageting system'は、in vitroではPcsk9のノックアウト効率~60%を達成し、マウスin vivo実験にて、Gal-LGCPが肝臓においてPcsk9を効率的にノックアウトし、血漿中のLDL-Cのレベルを~30%押し下げ、HDL-C、ALT (GPT)およびAST (GOT)のレベルには影響を及ぼさないことを見出した。また、Pcsk9と相同性が高い10ヶ所にオフターゲット編集は見られなかった。
2. [レビュー] 癌免疫療法に展開可能なCRISPR/Cas9によるナチュラルキラー (NK)細胞の活性化法
[出典] REVIEW "Genetic Reprogramming For NK cell Cancer Immunotherapy with CRISPR/Cas9" Afolabi L [..] Bi J, Wan X. Immunology. 2019-7-17.  
  • 深圳先進技術研究院とFederal University Dutse (ナイジェリア)の研究グループによるレビュー:NK細胞は抗腫瘍エフェクタ細胞であるが腫瘍微小環境では疲弊している;NK細胞へのCRISPR/Cas9システムのNK細胞へのin vivo/ex vivo送達法;NK細胞免疫療法を目指すゲノム編集戦略 (キメラ抗原受容体による腫瘍認識向上;活性化因子や腫瘍由来リガンドの発現亢進;ケモカイン受容体発現亢進とヘパラーゼの強制発現を介した腫瘍細胞浸潤の亢進;免疫チェックポイント阻害その他の免疫抑制パスウエイの阻害);課題と展望 (オフターゲット作用の抑制;in vivo送達の効率向上と細胞型特異的送達の実現;より深いNK細胞を巡る分子機構の理解)
3. [レビュー] CRISPR-Cas技術発展に貢献してきたバイオインフォマティクス
[出典] REVIEW "CRISPR-Cas Bioinformatics" Alkhnbashi O, Meier T, Mitrofanov A, Backofen R, Voß B. Methods 2019-07-18.
  • Univeristy of FreiburgとUniversity of Stuttgartの研究グループによるレビュー:ゲノムとメタゲノムからのCRISPR-Casシステムの発見と分析用ツール (CRISPRFinder & CRISPRCasFinder, PILER-CR, CRISPR Recognition Tool, CRISPRDetect, CRISPRdisco, CRISPRstrand, CRASS, metaCRISPR, CRISPRleader, CRISPRtionary); データベース (CRISPRdb & CRISPRCasdb, CRISPRone, Anti-CRISPRdb); CRISPR-Casシステムの分類 (小史, CRISPmap); PAM予測 (CASPERpam); 標的同定 (CRISPRtarget); gRNA設計 (E-CRISP, CHOPCHOP, CRISPR-ERA, CRISPOR, GuideScan; CASPER);展望 (CRISPR-Casシステムのadaptation/biogenesis crRNA/interferenceの三段階全てを網羅する統合解析を可能とするプラットフォーム、精度向上、古くて新しい課題である大量データを対象とする相同性検索;配列の相同性が極めて低いAcrタンパク質の発見・解析)
4. [概観] CRISPR-Cas9ゲノム編集におけるオフターゲット編集の最小化
[出典] OVERVIEW "Minimizing off-target effects in CRISPR-Cas9 genome editing" Chen SJ (University of Missouri). Cell Biol Toxicol. 2019-07-17.
  • これまで、オンターゲットへの結合を安定化そしてまたはオフターゲットへの結合の不安定化させることで、オフターゲット抑制が試みられてきた。前者には、例えばCas9nまたは二量体のCas9をsgRNAsペアと組み合わせる手法が開発され成果をあげたが、複雑なシステムの送達に難があった。後者には、gRNAの短縮、gRNAへのヘアピン構造導入 (hp-sgRNA http://crisp-bio.blog.jp/archives/17119939.html) 、Cas9の改変 (関連crisp_bio記事 http://crisp-bio.blog.jp/archives/11161665.html)の例がある。
  • 実験手法の改良と並行して、最適なDNA標的の選択とsgRNAの設計を支援するアルゴリズムも開発され、深層学習の手法も試みられているが、実験条件とゲノムコンテクストに依存するCRISPR-Casシステムのモデルには、学習のもとになるデータの由来 (生物種、細胞型、送達法、用量など)が課題となる。
  • データに依存しない手法として、sgRNA-DNAシステムのコンフォメーションのアンサンブルを対象とする自由エネルギー計算に基づいたVfoldCASモデル (Sci Rep 2017)や、Cas9結合をきっかけとするR-ループ形成、PAM配列の影響、crRNAに限らずtracrRNAも含むsgRNA全体の安定性などを網羅した系の自由エネルギー計算に基づいた uCRISPRモデル (PNAS 2019)が成果を出している。
5. [プロトコル] CRISPR/Cas9によるヒメツリガネゴケのフィトクロム (PHY)ノックアウト
[出典] PROTOCOL "CRISPR/Cas9-Mediated Knockout of Physcomitrella patens Phytochromes" Ermert AL, Nogué F, Stahl F, Gans T, Hughes J.  In: Hiltbrunner A. (eds) Phytochromes. MIMB. 2019-07-13.

6. [コメント] 干し草の山から縫い針を探す:CRISPR-Cas9スクリーニング結果から癌療法に最適な標的を探し出す
[出典] Editorial Commentary "CRISPR screens and the best cancer drug targets: picking the needle out of the haystack" Pentimalli F. Biotarget 2019-07-18.
7. 生殖細胞系列のゲノム編集による治療の可否を判定する基準'serious'とは
[出典] "The ‘serious’ factor in germline modification" Kleiderman E, Ravitsky V, Knoppers BM. J Med Ethics. 2019-07-20.
  • いわゆるCRISPRbabies*以来、続いているHGGM (human germline genome modification)を巡る議論の中で、'serious'な遺伝病の治療にはHGGMを認めるという方向になりつつある。McGill Universityと Université de Montréalの研究チームが、'health'と'diseasae'の概念定義から始まり、曖昧な'serious'について考察を加えた
  • (*) 2019-02-27 賀建奎らによるヒト胚でのCCR5遺伝子編集の意味を改めて考える (2)