[出典] "A mutation-independent approach for muscular dystrophy via upregulation of a modifier gene" Kemaladewi DU, Bassi PS [..]  Ivakine EA, Cohn RD. Nature 2019-07-24.

背景
  • 先天性筋ジストロフィータイプ1A (MDC1A) は、筋線維の安定性や末梢神経のミエリン形成を損なうラミニン-α2サブユニットの機能不全に至るMDC1A遺伝子の変異により発症する。
  • ラミニン-α2サブユニットに構造が類似しているラミニン-α1をコードする外因性Lama1の過剰発現によって、MDC1Aマウスモデルの筋消耗と筋麻痺を改善する。
  • 出生後のLama1の上方制御は、そのサイズが遺伝子治療に実績のあるキャリアの限界を超えることから、実現していない。
成果
  • Hospital for Sick Children Research Institute, University of Toronto, University of Pittsburgh School of MedicineならびにLund Universityの研究グループは今回、MDC1Aのdy2j/dy2jマウスモデルにおいて、Lama1のプロモータを標的とするCRISPRa (Staphylococcus aureus dCas9–2×VP64とsgRNA)をAAV9で送達することで、Lama1の発現を亢進し、それによるMDC1Aの症状改善を実現した。
  • 発症前マウスにCRISPRaを施すことで、骨格筋と末梢神経においてLama1が上方制御され、筋線維症と麻痺が予防された。
  • 筋ジストロフィーでは線維化は不可逆とされていたが、CRISPRaは後肢の麻痺と筋線維症を伴う症状が現れているdy2j/dy2jマウスの症状を改善しさらに症状の進行からの回復をもたらすことを見出した。