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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[NEWS RELEASE] "Designed switch allows unprecedented control over cells" UW Medicine Newsroom 2019-07-24.  [YouTube: 2m51s] Controlling cell functions with a designed switch 
  • David Baker (UW Medicine Institute for Protein Design、以下UW)とHana El-Samad (UCSF)が率いるバイオエンジニアリング・グループは、生細胞内の複雑な遺伝子回路を調節あるいは乗っ取る (commandeer)ことも可能とする長さ8 nmの自己組織化するタンパク質スイッチ'Latching, Orthogonal Cage/Key pRotein (LOCKR)'を開発し、その設計と応用をNatureにて姉妹論文として発表した。LOCKRは完全な人工物であることから、光遺伝学やCRISPRといった最新技術を含むこれまでのバイオテクノロジーと一線を画している。
  • 研究グループはLOCKRによる、遺伝子発現調節、細胞内輸送の方向変更、特定タンパク質分解、および、タンパク質間相互作用の制御を、酵母およびヒト細胞において、実証した。さらに、LOCKRにより、自律センサとして機能する一連の新規な生物学的回路を合成した。これらの回路は、細胞内または細胞の外部環境からのキューを検知し、しかるべき細胞応答を起動し、しかるべく終了させる。
  • LOCKRはInstiture for Protein Designのツイートから引用した下図にあるように、活性部位から遠い部位への分子結合に伴うコンフォメーションの変化 (アロステリック作用)や、結合時に活性部位のコンフォメーションを変化させる誘導適合 (indced fitting) と同等の効果を、全く異なる機構で実現している。
  • LOCKRは、5重のヘリックスからなる安定なCAGEの同一面への、分子内相互作用によるLATCHペプチドの結合と、分子間相互作用によるKEYペプチドの結合の間の競合に基づいて作動する。OFFの状態では、生理活性ペプチドを帯びているLATCHがCAGEに留められており、ONの状態では、KEYによってLATCHがCAGEから外れることでLATCH上の生理活性ペプチドがCAGEの外部に露出し、生理活性を発揮する。生理活性ペプチドには、標的分子への結合、標的タンパク質分解、核移行シグナルなどの機能を持たせることができる。
  • アロステリック作用の機構をデノボで再現するには、ペプチド鎖が構造をとっていない状態に対して自由エネルギーが十分に低い構造をとり、かつ、不活性状態と活性状態さらにはその中間状態の間での自由エネルギーの差を互いに遷移可能な程度に十分小さくするという、極めて困難なタンパク質設計に取り組む必要があったところ、LOCKRによって、アロステリック機構と同等の機能を実現した。
Nature姉妹論文
  1. 設計論文 "De novo design of bioactive protein switches" Langan RA, Boyken SE, Ng AH [..]  Baker D. Nature. 2019 Jul 24.
  2. 応用論文 "Modular and tunable biological feedback control using a de novo protein switch"  Ng AH [..] El-Samad H. Nature. 2019 Jul 24.
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