(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/23)
- [論文] LIG4 遺伝子を標的とするshRNAをCRISPR/Cas9システムに組込む
- Corresponding author: Zhiying Zhang (Northwest A&F U.(西北農林科技大學))
- 本手法は、U6プロモーターの下流に、RNase III系酵素のDroshaの切断サイトを挟み込んだsgRNAとshRNAのアレーを配置したコンストラクト(参考図参照)

を用意し、内在Droshaを介して、細胞内で活性なsgRNAsとshRNAsを生成し、sgRNAsによってCas9を複数のゲノム編集標的サイトにガイドし、shRNAsによって関連する機能遺伝子のサイレンシングを可能にする。 - 293T細胞を対象として多重編集については、3箇所の遺伝子座の同時編集を効率9%で実現した。また、DNAリガーゼIV遺伝子(LIG4 )を標的とするshRNAを組み込むことで相同組換え修復(HDR)機構による精密なゲノム編集の効率を2倍まで向上させた。
- [論文] I-TevIとCas9の2重ヌクレアーゼによって、ゲノムから一定の長さを削除
- Corresponding author: David R. Edgell (Western University)
- I-TeVIのヌクレアーゼドメイン(1−92残基)とリンカードメイン(92-169残基)をSpCas9のN末端に結合した2つのヌクレアーゼを備えた“TevCas9”によって、標的サイトからの削除を一定の長さ(33-bpまたは36-bp)に収斂することを可能にした。
- SpCas9単独の場合、dsDNA開裂の非相同末端結合(NHEJ)過程による修復と再開裂のサイクルが繰り返され、gRNAの標的サイトを含む長短さまざまな欠損を帯びた細胞が集団が生成される。TevCas9の場合、2種類のヌクレアーゼによる2カ所のdsDNA開裂の結果発生するDNA末端が相互に適合しないことから、修復・再開裂のサイクルを回避することができる。
- [論文] 精密なゲノム編集技術によって、パスウエイのスワップも可能になる
- Corresponding author: Pascale Daran-Lapujade (Delft University of Technology)
- 合成生物学によって代謝パスウエイ全体を産業微生物に1段階で組み込むことが可能になったが、中央代謝系の改変は、微生物ゲノム上に分散してコードされていることから実現されていなかった。今回、CRISPR/Cas9を含むゲノム編集技術を利用して、中央代謝系の改変を可能にする“pathway swapping”が可能なことを、Saccharomyces cerevisiae の解糖系をモデルとして実証した。
- [Communication] 合成ナノ粒子によるCas9 mRNAとsgRNAの同時送達
- Corresponding author: Daniel J. Siegwart (U. Texas Southwestern Medical Center)
- 両性界面活性剤の一種であるzwitterionic(双性イオン性)スルホベタインのヘッドグループ、アミン・リッチなリンカー領域および疎水性テールで構成される合成“zwitterionic amino lipids(ZALs)”によって、Cas9 mRNAとsgRNAsの双方を含む長いRNAsの送達を実現。
- 低用量(15nM)のsgRNAをZALナノ粒子(ZNP)で送達することで、90%以上の細胞においてタンパク質発現を低減。また、一過性のRNAi処理と対照的に、タンパク質発現の95%低減を永続的に維持。一方で、ZNPによって低用量(in vitro 600 pM未満;マウスin vivo 1 mg/kg)のmRNAを送達することで、タンパク質の高発現を実現。さらに、Lox-Stop-Lox tdTomatoカセットを全細胞に組込んだマウスに、ZNPによってCas9 mRNAとsgLoxPを同時送達することで、flox化蛍光タンパク質tdTomatoが発現することを、肝臓、腎臓および肺で確認。
- [プレビュー] CRISPR/Cas免疫はクオラムを感知して応答する
- Corresponding author: Konstantin Severinov (Waksman Inst. Microbiology/Skolkovo Inst. Science and Technology)
- 微生物は、コストの高いCRISPR/Casシステムを維持し、また、CRISPR/Casが常時活性化することのリスクを回避し、必要に応じてその獲得免疫応答機構を活性化すると考えられる。CRISPR/Casシステムの活性化とクオラムセンシングの相関に関するPattersonらのMolecular Cell 掲載論文と、Høyland-KroghsboらのPNAS 論文をハイライトし、LiらのCell Research 論文にも言及。
- [関連記事]
- Patterson論文:CRISPR関連文献メモ_2016/11/22 1.[論文] クオラムセンシング(quorum sensing; QS)が多重なCRISPR/Casシステムの調節を介して獲得免疫反応を制御する
- Høyland-Kroghsbo論文:CRISPR関連文献メモ_2016/11/21 2.[論文] クオラムセンシングに依存するCRISPR/Casシステム活性化機構から新たな感染症対策
- Li論文:CRISPR関連文献メモ_2016/11/24 3.[論文] Pseudomonas aeruginosa のI型CRISPR/Casは、宿主に対する毒性を調節する
- [論文] CRISPR/Cas9を介した標的エクソン中の1塩基変異に起因する複数エクソンのランダムなスプライシングが遺伝子ノックアウトをもたらす
- Corresponding author: Ritva Tikkanen (U. Giessen)
- CRISPR/Cas9による遺伝子ノックアウトは、dsDNA開裂とその非相同末端結合(NHEJ)修復の際に生じるindelsがもたらすフレームシフト変異に由来するとされている。研究チームは今回、CRISPR/Cas9が標的エクソンに導入する変異が、mRNA前駆体(pre-mRNA)にオルターナティブ・スプライシングを誘導し、異常なタンパク質の発現にもつながることを、FLOT1 遺伝子をモデルとして、見出した。
- [論文] タイプIII-BのCRISPR/Casエフェクター複合体は、標的DNAの大量破壊を誘導する
- Corresponding author: Qunxin She (U. Copenhagen/Huazhong Agricultural U.)
- 6種類のタイプに分類されているCRISRP/Casシステムの中で、タイプIII CRISPR/CasシステムにはDNAとRNAの双方を標的とするエフェクターが多数属している。
- タイプ: 由来するバクテリアまたはアーケア III-A: Staphylococcus epidermidis ; Streptococcus thermophilus ; Thermus thermophilus
- III-B: Sulfolobus islandicus ; Thermus thermophilus ; Pyrococcus furiosus
- III-D: Sulfolobus solfataricus
- 研究チームは先行研究で、S. islandicus タイプIII-BのCasエフェクターCmr-αが、プロトスペーサーからのアンチセンス鎖の転写に依存してDNA切断することを見出していた。今回、その野生型と変異体のin vitroでのDNA切断活性とRNA切断活性を測定し、Cmr-αの侵入核酸分解の分子機構を分析した。
- Cmr-αはcrRNAと相補的な侵入RNAsを標的と切断し、標的RNAによってそのssDNA切断活性が活性化された。このssDNA切断には、crRNAの5’末端タグと標的RNAの3’隣接領域との間にミスマッチが起きていることが必要であった。
- Cmr-2αタンパク質のHDドメインまたはGGDDモチーフに変異が起こるとin vivo でのDNA切断活性が減衰した。一方で、in vitro では、HDドメインにおける二重変異のみがDNase活性を消滅させた。さらに、in vitro において、活性化したCmr-αは極めて活性なDNaseとして機能し、過剰なDNA基質を大量に分解することが可能であった。この機能によって複製されるウイルスDNAが急速に分解されることが示唆される。
- [情報拠点注] タイプIIICRISPR/Casシステム関連ニュースウオッチ記事
- CRISPR関連文献メモ_2016/02/10 1.[論文] タイプⅢ-B CmrシステムにおけるDNA切断機構(1);2.[論文] タイプⅢ-B CmrシステムにおけるDNA切断機構(2)
- CRISPR関連文献メモ_2016/02/06 1.[論文] Ⅲ型CRISPR/Casによる免疫の分子機構:Luciano A. Marraffini (Rockefeller U.)
- CRISPR関連文献メモ_2016/01/06 3.[レビュー] 標的類似体と結合したCRISPR-Cas系Cmr複合体の結晶構造
- [論文] CRISPR/Cas9 RNPの送達により外来DNAが混入・残存しないブドウとリンゴのゲノム編集を実現
- Corresponding authors: Mickael Malnoy; Chidananda Nagamangala Kanchiswamy (Genomics and Biology of Fruit Crop Department, Fondazione Edmund Mach)
- CRISPR/Cas9システムの植物細胞への送達は効率的であるが、プラスミドの配列がランダムに宿主ゲノムに組込まれるリスクを伴う。また、現在のGMO規制に抵触するリスクもある。研究チームは今回、CRISPR/Cas9リボ核タンパク質(RNPs)をブドウ栽培種Chardonnay とリンゴ栽培種Golden delicious のプロトプラストへ直接送達することで、外来DNAの混入を回避しつつ効率的な標的変異導入を実現した。
- [成書] 遺伝的摂動法:酵母遺伝学の’フォース’からCRISPR革命へ
- Corresponding authors: Gregory R. Hoffmann; Dominic Hoepfner (Novartis Inst. BioMecial Research)
- 酵母をモデルとして順遺伝学の手法による疾患治療の標的となる遺伝子の同定または治療に有用な化合物の作用機序の分析を解説
- [情報拠点注] 記事タイトル中の’フォース’はオリジナルの章のタイトル中の’Awesome Power’の意訳(’フォース’についてはスターウオーズ参照のこと)。
- [特許] Engineered CRISPR-Cas9 nucleases
- 発明者:Joung, Keith J. (Winchester, MA, US); Kleinstiver, Benjamin (Medford, MA, US); Pattanayak, Vikram (Wellesley, MA, US)
- 譲受人:The General Hospital Corporation (Boston, MA, US)
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