(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/02/06)
- [論文] Ⅲ型CRISPR/Casによる免疫の分子機構:Luciano A. Marraffini (Rockefeller U.)
Marrafiini研究室からの一連のⅢ型CRISPR/Casによる免疫機構研究の一環.- 研究対象としたⅢ型CRISPR/Casシステムを有するStaphylococcus epidermidis には9種類のcas 遺伝子が存在する:cas1、cas2、cas6、cas10、csm2、csm3、csm4、csm5 ならびに csm6.
- Ⅲ-A型CRISPR/Casシステムでは、crRNAにガイドされるヌクレアーゼが転写と共役してターゲットのウイルスDNAとトランスクリプトを切断することで、ウイルス感染から原核微生物を保護している.DNA切断がこの獲得免疫機能に必須の機構であることは明らかにされてきたが、RNA切断の機構は不明であった.
- 今回、転写に共役したDNA切断の機構では、gp43遺伝子のように感染後比較的時間が経過してから転写される遺伝子を標的とした場合、宿主細胞内にウイルDNAが蓄積し、ひいてはDNA切断による免疫応答が阻害されることを見出した.
- RNA分解酵素Csm3とCsm6の活性部位に変異を導入すると、侵入ファージのmRNAが蓄積されて免疫応答が阻害された.転写・発現が遅い標的に対しては、Csm3とCsm6によるmRNA分解が免疫応答を実現する.
- Csm6はさらに、ファージが変異することでcrRNAとのミスマッチを介してDNA切断の効率が下がる場合の免疫応答を担っていた.
- Ⅲ型CRISPR/Casシステムの免疫応答は複数の分子機構に担われている.
- [CORRESPONDENCE] 遺伝子ドライブを制御する:Liqun Luo (Stanford U.)
- 遺伝子ドライブに対するブレーキCATCHA(Cas9-triggered chain ablation)を開発:CATCHは、cas9 遺伝子のDNA配列を標的とするgRNAと、cas9 のgRNAが切断するサイトの両側の配列とそれぞれ相同な配列(HA1とHA2と呼ぶ)のコンストラクトであり、これによって、cas9 遺伝子座が次々にCATCHAへと置換されていく連鎖反応が起こる.
- [実証実験] cas9を組込んだショウジョウバエの受精卵にCATCHAプラスミドを注入したところ、F1世代cas9 遺伝子の57%がCATCHAに置換された.ゲノムにエンコードしたCATCHAも、F2世代のcas9 85%のアレルをCATCHAに置換した.また、いずれの場合も、CATCHAに置換されなかったcas9 には、NHEJパスウエイによるindelsが発生していた.
- [NEWS & VIEWS] 遺伝子ドライブでマラリアを抑制できるか?:Luke Alphey (U. Oxford)
- 技術および規制のハードルはまだ残っているが、蚊の遺伝子ドライブによるマラリア拡大抑制の実現が近づいてきた.
- V. M. Gantzのmutagenic chain reaction (MCR) 論文を始めとする遺伝子ドライブによる感染症抑制の研究の進展を紹介し、遺伝的不安定性などの技術的課題と、倫理的および社会的受容性の観点からの課題を指摘.
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