(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/06)
  1. [論文] 出生後のCRISPR/Cas9による心筋細胞特異的遺伝子欠失実験を可能とするマウスモデルを作出:Eric N. Olson (UT Southwestern Medical Center)
    • CRISPR/Cas9によるゲノム編集はこれまで主として、受精卵にCRISPR/Cas9の要素を送達することで行われてきた.このため、胚性致死をもたらす変異の研究や、成体全体に発現する遺伝子の組織特異的機能の研究が困難であった.今回、心筋細胞特異的にCas9を発現するトランスジェニックマウスを作出し、出生後に、AAV9-sgRNAを腹腔内注射で送達することにより、心臓特異的に挿入および欠失の変異を導入することに成功した.
    • 具体的には、当該トランスジェニックマウスに、Myh6 遺伝子を標的とするsgRNAを送達してMyh6 遺伝子の編集を実現し、トランスジェニックマウスに心筋症と心不全が発症することを確認した.
  2. [論文] CRISPR/Cas9によって、マウス受精卵に大きなDNAエレメントを挿入する新手法:古田泰秀 (理研);饗場 篤 (東大)
    • CRISPR/Casシステムによって、マウス受精卵における単純な遺伝子ノックアウトと小規模なDNA断片の挿入や塩基置換は容易になったが、標的部位に大規模なDNA断片を挿入することは課題として残っていた.今回、ROSA26 遺伝子座を標的として、長さ3.0〜7.1 kBと大きなDNA断片の挿入を実現した.
    • hCas9/mRNA/sgRNA/ドナーをC57BL/6N受精卵の細胞質に注入し、続いて、アクチン重合化阻害剤サイトカラシン(cytochalasin)で処理することにより、複数の独立なノックイン・ファウンダーマウスを作出し、ノックインの生殖細胞系伝達が実現することを確認した.
  3. [レビュー] 標的類似体と結合したCRISPR-Cas系Cmr複合体の結晶構造:沼田倫征, 大澤拓生 (産総研)
    • 2015年5月7日号Molecular Cell 誌にて研究成果“Crystal structure of the CRISPR-Cas RNA silencing Cmr complex bound to a target analog.”を発表した著者らによる日本語レビュー.
    • CRISPR/Casシステムにおけるエフェクター複合体Ⅰ型、Ⅱ型およびⅢ型の一般的解説に続いて、研究成果(Ⅲ型のCmr複合体の再構成/結晶化と構造決定/全体構造/crRNAのガイド鎖と標的analogからなる2本鎖の構造/Cmr複合体による標的RNAの周期的な切断/Cmr複合体におけるタグ配列の認識/III型エフェクター複合体が標的RNAを切断するしくみ/I型およびIII型エフェクター複合体の分子進化)について解説.
  4. [レビュー] ゲノム編集によるβ-サラセミアの治療:Jim Vadolas (Royal Children’s Hospital)
    • 遺伝子を修復した自家造血幹細胞の移植は、骨髄移植や定期的輸血と鉄キレート剤投与に替わる療法になる可能性がある.ZFNs、TALENsまたはCRISPR/Cas9によるゲノム編集による遺伝子修復の現状をレビュー