crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/27)
  1. [論文] 未だ分離培養されていない環境微生物からCas9に加えて新規Cas、CRISPR-CasXとCRISPR-CasY、を発見
    • [出典] David Burstein, Lucas B. Harrington, Steven C. Strutt, Alexander J. Probst, Karthik Anantharaman, Brian C. Thomas, Jennifer A. Doudna & Jillian F. Banfield. “New CRISPR–Cas systems from uncultivated microbes.” Nature. 2017 Feb 9;542(7640):237-241 (Accelerated Article Preview Published online 22 December 2016).
    • 研究チームは今回、地下水、湖沼の堆積物、酸性鉱山排水バイオフィルム、土壌、幼児腸内、その他の環境由来の微生物群を対象とするメタゲノムデータセット(terabase(1012塩基)の規模)から、CRISPRアレイと、ユニバーサルなCRISPRインテグラーゼの近傍に位置する遺伝子を対象として、CRISPR cas を探索した。
    • 155x106の遺伝子を解析した結果、アーケア・ドメインでバクテリア・ドメインに特異的とされていたCas9タンパク質を同定し、バクテリア・ドメインで新規CRISPR/Casシステム2種類を、同定した。後者2種類はCRISPR/Casシステムの中で最もコンパクトであった。
    • 関連記事を2018/10/19に追記:2018-10-19 メタゲノムからssDNAをトランス切断するCas14ファミリーを発見しDETECTRへ展開;2018-02-23 CRISPR技術による次世代診断ツール開発:「展望」とMammoth Biosciencesの登場
    • メタゲノム・データセットから同定したCasタンパク質一覧
      • 分類群:Casエフェクター
      • アーケア
        • Candidatus Micrarchaeota acidiphilum (ARMAN-1):Cas9
        • Candidatus Parvarchaeota acidiphilum (ARMAN-4):Cas9
      • バクテリア
        • Deltaproteobacteria: CasX
        • Planctomycetes: CasX
        • Candidatus Katanobacteria: CasY.1
        • Candidatus Vogelbacteria: CasY.2
        • Candidatus Vogelbacteria: CasY.3
        • Candidatus Parcubacteria: CasY.4
        • Candidatus Komeilibacteria: CasY.5
        • Candidatus Kerfeldbacteria: CasY.6 
          微生物分類はBanfieldらの論文に準拠(Hug LA et alNat. Microbiol. 2016
  2. [短報] Cas9にI473F変異を導入するとウイルスからのスペーサー獲得率が100倍以上になる
    • [出典] Robert Heler, Addison V. Wright, Marija Vucelja, David Bikard, Jennifer A. Doudna & Luciano A. Marraffini. “Mutations in Cas9 Enhance the Rate of Acquisition of Viral Spacer Sequences during the CRISPR-Cas Immune Response.” Molecular Cell. 2017 January 5;65. Available online 2016 December 22.
    • CRISPR/Cas9は標的DNA開裂に必要とするprotospacer adjacent motif (PAM)は、専ら5′-NGG-3′とされている。Marraffiniらは先行研究において、Cas9がNAGに隣接 (adjacent)する配列も、確率は低いが、標的とすることを見出していた。非NGG PAMであるNAG PAMによるCas9の活性機構を詳らかにすることを目指して、Cas9の活性を亢進するCas9の変異を探索した。
      • 変異を導入する領域をPAMと相互作用するドメインに限定せず、error-prone PCRを利用して全長Cas9を対象としてランダムに変異を導入し、NAGに隣接した標的DNAへの開裂活性を高めるCas9変異体を細胞スクリーンした。その結果、I473Fの置換が起きているCas9が、標的DNAの開裂活性自体には影響を与えないが、ウイルスからのスペーサー獲得率を2桁あげることで、野生型よりも強い獲得免疫応答を呈することを見出した。 
        [情報拠点注] 原論文中では、Cas9I437F変異体を“hyper-Cas9”またhCas9と呼んでいる。
      • hCas9がスペーサー獲得を亢進する分子機構は明らかではないが、hCas9は、その他のCRISPR関連タンパク質(Cas1、Cas2およびCsn2)と協働してスペーサー獲得する機構の解明に有用なツールである。
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット