(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/28)
- [論文] CRISPR/Cas9によるオンターゲットのフレームシフト変異がタンパク質をノックアウトするとは限らない
- Corresponding author: 権藤洋一(理化学研究所)
- 研究チームは今回、ヘッジホッグ(HedgeHog: Hh)シグナル伝達研究の一環として、CRISPR/Cas9によって、マウスNIH3T3細胞において、Hhシグナル伝達経路の最下流に位置する転写因子GLI3をコードする遺伝子のノックアウトを試みた。
- 標的としたGli3 遺伝子の両アレルにフレームシフト変異が導入された細胞株の樹立に成功したが、いずれの細胞株においても、 野生型および変異型遺伝子のN末端とC末端それぞれにFlagタグとC末端にHAタグを結合させた発現ベクターを利用することで、野生型に比べてN末端を欠いたほぼ船長のGLI3タンパク質が生成されることを確認した。
- この予期せざるGli3 発現は、野生型の翻訳開始コドンの下流に位置する開始コドンから野生型終止コドンまでが翻訳されるという定型外の翻訳(illegitimate translation: ITL)が起こったことを意味する。
- 野生型の遺伝子においてもupstream open reading frames (uORFs)の制御によってITLが発生することが知られており、CRISPR/Cas9によって人工的なuORFsが生じたと見ることができる。
- 理研プレスリリース “ゲノム編集の落とし穴-“セントラルドグマ”が書き直される可能性も-” 2016年12月26日
- 関連後発論文紹介crisp bio記事:2019-07-28 CRISPR-Cas9ノックアウト実験は必ずしもタンパク質のノックアウトまでは意味しない
- [論文] 筋強直性ジストロフィー1型の療法としてのCRISPR/Cas9
- Corresponding author: Bé Wieringa; Derick G. Wansink (Radboud Inst. Molecular Life Sciences)
- 筋強直性ジストロフィー1型(Myotonic Dystrophy Type 1: DM1)は、DMPK 遺伝子内の(CTG・CAG)nリピート伸長(37から数千トリプレット)から、RNAの機能獲得を介して、発症すると考えられている。これまでは、変異DMPK (CUG)n RNAを標的とする療法が研究されてきた。研究チームは今回、CRISPR/Cas9によるトリプレット・リピート伸長から大規模な領域を削除する療法の可能性を探った。
- リピートの両側の隣接領域を標的とする二重CRISPR/Cas9によって、健常人/DM1患者/DM1モデルマウスの正常および異常な筋芽細胞におけるDMPK 内のリピートを正確かつ高効率で削除することが可能である。
- リピートの削除はDM1遺伝子座の遺伝子発現に悪影響を与えず、DM1の症状を改善する。
- [論文] CRISPR/Cas9によるハンチントン病変異アレルのin vitro /in vivo 編集
- Corresponding authors: Alex Mas Monteys; Beverly L. Davidson (The Children’s Hospital of Philadelphia)
- ハンチントン病(HD)は、ハンチントン遺伝子HTT の第1エクソンにおける36回を超えるCAGsリピート伸長によって生じる。HTT 遺伝子が細胞機能を担っていることから、遺伝子治療には変異HTT研究チームは今回、変異HTT 遺伝子座に存在するSPNsを利用して、変異HTT を特異的に編集可能なことを示した。
- [論文] miR-21を標的とするCRISPR/Cas9遺伝子編集によって、卵巣癌における上皮間葉転換を阻害する
- Corresponding authors: Junming Yue (U. Tennessee Health Science Center); Peixin Dong (北海道大学)
- 研究チームは、CRISPR/Cas9レンチウイルス・ベクターによって、miRNA遺伝子からの初期転写産物であるprimary miRNA (pro-miRNA)ヘアピン配列(ステムとヘアピンループを含む)に変異を導入することで、miRNAの発現を阻害することが可能なことを示した。
- miR-21を標的とするCRISPR/Cas9編集によって、細胞増殖、細胞移動および細胞浸潤が阻害され、卵巣癌細胞に抗癌剤への感受性をもたらし、さらに、上皮間葉転換が阻害されることを見出した。
- [論文] レーバー先天性黒内障の療法としてのCRISPR/Cas9
- Corresponding author: Guo-Xiang Ruan (Sanofi Genzyme)
- レーバー先天性黒内障(Leber congenital amaurosis: LCA)のサブタイプの中で最も多いLCA10の病因は、CEP290 遺伝子の変異である。研究チームは今回、CEP290 のスプライシング異常を帯びたLCA10患者の療法としてCRISPR/Cas9システムが有望であるとした。
- 293FT細胞にCEP290 スプライシング変異を導入して作出したLCA10細胞モデルにおいて、gRNAのペアを利用して高効率でイントロン性スプライシング変異を除去し野生型CEP290 の発現を回復することが可能なことを示した。
- また、二重アデノ随伴ウイルスを利用することで、マウス網膜においてCep290 のイントロン性フラグメントを高効率で除去することに成功した。この際、Cas9の活性を一過性に止めて過剰な免疫応答を回避するために、sgRNAの標的となるサイトをSpCas9のプラスミドに組み込んだ“self-limiting” CRISPR/Cas9システムを開発・利用した。
- [レビュー] 創薬と療法におけるCRISPR/Cas
- Corresponding author: Jacob E. Corn (UC Berkeley)
- CRISPR/Casの医療への応用はこれまでのところもっぱらメンデル遺伝病の治療に集中しているが、CRISPR/Casは複雑な遺伝病や体細胞変異による疾患にも応用可能である。今回、CRISPR/Casが標的の同定とバリデーションを加速した上での次世代創薬、高信頼性のバイオマーカーの発掘、および、精密医療に与える影響をレビュー
- [レビュー] CRISPRから神経系の発生、機能および可塑性におけるクロマチン制御を見る
- Corresponding author: Anne E. West (Duke U.)
- 神経生物学へのCRISPR/Cas技術の応用と、その神経系の発生と可塑性の理解への貢献をレビュー
- CRISPR/Cas9によるコーディング領域と非コーディング領域の編集
- CRISPR/Cas9による生細胞における遺伝子発現の観察
- シスエレメントの活性化と抑制
- CRISPR/dCas9によるエピゲノム編集
- [レビュー] CRISPRによるエピゲノム編集
- Corresponding author: Paul Enríquez (North Carolina State U.)
- ヒストン翻訳後修飾の編集;転写活性化;転写抑制;現行技術の限界とその克服
- DNAエピジェネティック修飾機構の研究への応用:DNAメチル化;DNA脱メチル化;新たなエピジェネティック修飾;m5dC誘導体の酸化;N6メチルデオキシアデノシンの発見;新奇DNAエオイジェネティック修飾;ノンコーディングRNAsの機能を探る;化合物および光が誘導するエピゲノム編集;エピゲノム編集と病理および治療び機会;CRISPR/Cas9システム以外の可能性
- [論文] Cpf1は各種シアノバクテリアのゲノム編集に有用である
- Corresponding author: Himadri B. Pakrasi (Washington U., St. Louis)
- 二酸化炭素を太陽光エネルギーを利用して直接最終産物へ変換することが可能なシアノバクテリは、バクオファクトリーとして有用であるが、これまで複数の遺伝子編集など、そのゲノム編集が必ずしも簡単ではなかった。研究チームは今回、Cpf1によって、Synechococcus、 Synechocystis およびAnabaena において、ノックイン、ノックアウトおよび点変異導入をマーカレスかつ高効率で実現可能なことを示した。
- [情報拠点注] Cpf1関連記事:CRISPR関連文献メモ_2016/07/03
- [特許] Adeno-associated Virus-Mediated CRISPR-Cas9 Treatment of Ocular Disease
- 発明人:Buchlis, George (Philadelphia, PA, US);Anguela, Xavier (Philadelphia, PA, US);High, Katherine A. (Merion Station, PA, US)
- 譲受人:Spark Therapeutics, Inc. (Philadelphia, PA, US)
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