# crisp_bio注: 2019-08-03にタイトル中のtoropismsをtropismに修正しました。
[出典] "Standard screening methods underreport AAV-mediated transduction and gene editing" Lang JF [..] Davidson BL. Nat Commun 2019-07-30.
[出典] "Standard screening methods underreport AAV-mediated transduction and gene editing" Lang JF [..] Davidson BL. Nat Commun 2019-07-30.
背景
- アデノ随伴ウイルス (AAV)をヒト疾患治療に利用するには、AAVの生体内分布に加えて、導入遺伝子の発現をドライブする性能も十分に理解した上で、その安全性と効率性を保証する必要がある。これまでは、eGFPまたはlacZといったレポータをコードした組み換えAAVs (rAAVs)を注入し、数週間後に各組織でのレポータの発現分布を解析することで、AAVの各組織への指向性 (tropisms)を判定してきた。
- この古典的手法は、導入遺伝子の継続的な高発現を必要とする応用には有効であり、例えば、AAV8の肝臓指向性に基づいて、AAV8の肝臓を標的とする治療への利用が広がってきた。
- 一方で、最新のゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9技術の場合は、CRISPR-Cas9システムのミニマルな発現でも恒久的なゲノム改変を誘導することから、古典的手法の盲点であった導入遺伝子の低レベルあるいは一時的発現を検出する技術が必要になってきた。
概要
- Children's Hospital of Philadelphia (CHOP)/University of Pennsylvaniaの研究グループは今回、'editing-dependent reporter'マウスを活用して、AAVベクターで送達する導入遺伝子の発現が高レベルでも、低レベルあるいは一時的でも、検出可能とし、この盲点を解消した。
古典的手法と新手法
- 古典的手法に則り、AAV8-Cre-eGFPベクターをC57BL/6Jマウスに送達し、AAVベクタで導入した遺伝子が安定して高発現した細胞では、細胞核にeGFPが局在することを確認した(原論文Fig. 1引用下図 a 参照)。
- 新手法 (原論文Fig. 1引用上図 b 参照)では、loxP-STOP-loxP-tdTomato (Ai14)トランスジェニック・レポータ・マウスにAAV8-Cre-eGFPベクターを送達し、細胞核でのeGFP局在がみられないほど低レベルまたは一時的発現であっても、Ai14マウス内在のtdTomatoの活性化には十分と想定し、実験を進めた。
新手法の実証
- 古典的手法ではAAV8はAAV8が指向性を示すことが知られていた心臓と肝臓の細胞核におけるeGFP発現を確認できたが、それ以外の臓器への形質導入は検出されなかった。一方、新手法によって脳、肺、腎臓、脾臓、骨格筋、精巣への形質導入を検出した (原論文Fig. 5引用下図参照)。
- AAV8が、比較的低用量でほとんど全ての肝細胞において、ゲノム編集には十分な低レベルで一時的な発現をもたらした。
- AAV8は、マウス糸球体の内皮細胞と間質細胞の双方に形質導入し、脾臓内の多様な細胞型に形質導入した。
- Ai14xSpCas9マウスにgRNAsをAAV8ベクタで送達し、蛍光レポーターの発現と同様に、肝臓と心臓以外の臓器でも遺伝子編集が進行することを確認した。
- AAV8に加えてAAV5とAAV9が、肝臓に加えて腎臓と脾臓の細胞にも形質導入することを見出した。
- Ai14マウスでの結果は、Ai6マウスでも再現された。
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