1. マウス神経組織における内在タンパク質の動態観察を実現したCRISPR/Cas9遺伝子編集技術の最適化
[出典] "Optimized CRISPR/Cas9-mediated in vivo genome engineering applicable to monitoring dynamics of endogenous proteins in the mouse neural tissues" Matsuda T, Oinuma I. (松田孝彦, 生沼 泉) Sci Rep. 2019-08-05.
- 兵庫県立大学の研究チームは今回、関心のある遺伝子のC末端を標的とするCas9-sgRNAとEGFP/mCHerry/mCloverを帯びたターゲッティングベクターを、P0 ICRマウスの網膜下腔にガラス針を介したエレクトロポレーションすることで、発生過程の網膜と脳の神経細胞とグリア細胞において、ロドプシン、グルタミンシンテターゼ、アレスチン、シナプトフィジン(p38)およびシナプス後部足場タンパク質PSD-95の蛍光標識、ひいては、各タンパク質の局在と発現レベルのin situ観察を実現した。
- また、自己開裂型2Aペプチドを利用した内在遺伝子座からの外因性遺伝子 (蛍光タンパク質遺伝子)の発現も実現した (原論文Figure 2引用下図左右参照)。
2. m6Aエディター: dCas9にRNAメチル化/脱メチル化酵素を融合することで、RNA修飾m6Aの'writer'/'eraser'を構築
[出典] "Programmable RNA N6-methyladenosine editing by CRISPR-Cas9 conjugates" Liu XM, Zhou J, Mao Y, Ji Q, Qian SB. Nat Chem Biol. 2019-08-05. (PubMed Central)
N6-メチルアデノシン (m6A)は転写後調節の過程のほとんどに関与している。これまでに、m6Aのトランスクリプトーム・ワイドのマッピングからm6A修飾の分布が非対称であることが報告され、m6A修飾の意味がmRNA上位置に依存することが示唆されていた。
Shu-Bing Qian (Cornell U)が率いる研究グループは今回、dCas9に単鎖m6Aメチルトランスフェラーゼ (METTL14とMETTL3)、または、RNA脱メチル化酵素 (ALKBH5またはFTOの全長)を融合し、gRNAに加えて5'-NGG-3'を帯びたPAMmerを供給することで [* 1-2]、部位特異的に作用する m6A 'writers' と m6A 'eraser' を実現し、mRNA上の位置に依存するm6A修飾の機能の切り分けを実現した。
N6-メチルアデノシン (m6A)は転写後調節の過程のほとんどに関与している。これまでに、m6Aのトランスクリプトーム・ワイドのマッピングからm6A修飾の分布が非対称であることが報告され、m6A修飾の意味がmRNA上位置に依存することが示唆されていた。
Shu-Bing Qian (Cornell U)が率いる研究グループは今回、dCas9に単鎖m6Aメチルトランスフェラーゼ (METTL14とMETTL3)、または、RNA脱メチル化酵素 (ALKBH5またはFTOの全長)を融合し、gRNAに加えて5'-NGG-3'を帯びたPAMmerを供給することで [* 1-2]、部位特異的に作用する m6A 'writers' と m6A 'eraser' を実現し、mRNA上の位置に依存するm6A修飾の機能の切り分けを実現した。
- m6A “writers”によって、5'UTRメチル化と3'UTRメチル化について、それぞれ、非標準的mRNA翻訳の進行とmRNAターンオーバへの影響と、異なる生物学的意味を帯びていることを明らかにした。
- m6A "eraset"によるlncRNA Malat1のA2577を脱メチル化が、Malat1の構造スイッチとして機能することを示した。
“m6Aエディター”は、、エピトランスクリプトームのツールとして有用である。
[*] 参考crisp_bio記事
[*] 参考crisp_bio記事
- 2017-04-22 RCas9: dCas9のRNA認識を可能にし、生細胞内でRNAを追跡
- 2017-04-22 CRISPR-Cas9に、DNAに留まらず、RNAも切断させる
3. [ビデオプロトコル] CRISPR/Cas9によって、CAR-T細胞において顆粒球単球コロニー刺激因子 (Gm-CSF)をノックアウト
[出典] "Using CRISPR/Cas9 to Knock Out GM-CSF in CAR-T Cells" Sterner RM, Cox MJ, Sakemura R, Kenderian SS. J Vis Exp. 2019-07-22.
- Mayo Clinicの研究チームが、Gm-CSFを標的とするCas9-sgRNAにより、野生型CAR-T細胞に対して、T細胞の機能を維持しつつGM-CSF産生の抑制とin vivo抗腫瘍活性の亢進を実現した。
4. MultiGuideScan: CRISPR gRNAライブラリー設計ツールをマルチプロセス化により高速化
[出典] "MultiGuideScan: a multi-processing tool for designing CRISPR guide RNA libraries" Li T, Wang S, Luo F, Wu FX, Wang J. Bioinformatics. 2019-08-06.
- 中南大学、 Clemson UならびにU Saskatchewanの中国、米国ならびにカナダの研究チームが、先行研究のgRNA設計ツールGuideScanをマルチプロセス化し、9-12倍高速化
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