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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Multiplexed genome engineering by Cas12a and CRISPR arrays encoded on single transcripts" Campa CC [..] Platt RJ. Nat Methods. 2019-08-12.

概要
  • ETH ZurichとU. Groningenの研究グループは今回、リボヌクレアーゼ (RNase)とデオキシリボヌクレアーゼ (DNase)の双方の活性を帯び、自らpre-crRNAを成熟crRNAへとプロセッシングするAcidaminococcus sp. Cas12a (AsCas12)をもとに、Cas12a mRNAに加えて多数のcrRNAsを単一のトランスクリプトに組み込み、単一のプロモータからCas12aとcrRNAsの双方を発現させるツールSit-Cas12aを開発した (原論文Figure 1参照)。
  • Sit-Cas12aの特徴は、mRNAを細胞内で3'-5'エキソヌクレアーゼから保護するRNAモチーフ'Triplex (Genes Dev 2012)'を組み込むことで、安定したCas12の発現とCas12aのスペーサ/crRNAプロセッシングの双方を亢進したところにある:[コンストラクト] EF1a | Cas12a mRNA Triplex  スペーサを含むCRISPRアレイ Poly(A)
コンストラクトの構成はフレキシブルである
  • 野生型Cas12aに加えてRNase失活型Cas12a (rdCas12a)またはDNase失活型 (ddCas12a)、さらには蛍光タンパク質などのタンパク質のmRNAを組み込むことが可能;スペーサは25種類まで組み込み可能;標的ノックアウトの他に転写調節因子の活性ドメイン (effector domain: ED)の組み込みによる遺伝子発現調節も可能
  • EF1a直下へのLox-Stop-Loxカセット組み込みによるCreリコンビナーゼ下での発現を可能にする条件付きSiT-Cas12a-[Cond] ;EF1aをテトラサイクリン応答因子 (TRE)とminiCMVに替えることでドキシサイクリンの用量に依存する誘導型SiT-Cas12a-[Ind];Cas12aのC末端に、KRABを融合した転写抑制型SiT-Cas12a-[Repr]と、VPRまたはp65-HF1を融合した転写活性型SiT-Cas12a-[Activ]
HEK293T細胞における実証実験
  • 1遺伝子編集 DNMT1
  • 多重遺伝子編集 ANCF1, EMX1, GRIN2B, VEGFおよびDNMT1の五重遺伝子編集
  • 1遺伝子多重crRNAs CD47、CD166, CD97個別と二重あるいは三重編集
  • ddCas12aのC末端にKRABドメイン3コピーを融合したddCas12a-[Repr]による4遺伝子座、および10遺伝子座を標的とする20 crRNAsを介した同時発現抑制 (40-80%低減)
  • ddCas12a-VPRとddCas12a-p65-HF1 (ddCas12a-[Activ])により、10遺伝子を標的とする20 crRNAsを介して同時発現活性化 (10-1,000倍)
スペーサの長さ (20 bpまたは15 bp)選択によるSiT-Cas12aの直交化
  • DNaseが活性なSiT-Cas12aが20 bpのスペーサとの組み合わせに限り遺伝子改変活性を示し、Sit-Cas12aは15 bpのスペーサと組み合わせた場合に遺伝子発現調節活性を示すことを発見し、15 bpと20 bpが混在した25 種類のスペーサを帯びたCRISPRアレイを介した遺伝子改変と遺伝子発現調節の直交化と多重化を実現
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