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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

1. CRISPR/Cas9ゲノムワイドスクリーンにより BETタンパク質阻害剤 (BETi)に対する非小細胞肺癌の耐性を調節するパスウエイを同定
[出典] "The Hippo pathway modulates resistance to BET proteins inhibitors in lung cancer cells" Gobbi G, Donati B, Do Valle [..] Sancisi V. Oncogene 2019-08-12.
  • BETiは抗癌剤として前臨床試験で効用を示し非小細胞肺癌を含む種々の癌における治験が進んでいるが、個別化治療のためのバイオマーカーが同定されていない。イタリアと米国の研究グループは、BETiに対する非小細胞肺癌細胞の感受性を決定する因子として、Hippoパスウェイ遺伝子、LATS2TAOK1、およびNF2 を同定した。
  • これらの遺伝子のノックアウトは、Hippoパスウェイの標的であるTAZの核局在とTAZの転写活性の亢進を介して、BETiに対する耐性を誘導し、また、TAZの発現がBETiに対する耐性を亢進した。さらに、TAZ, YAPおよびそれらのパートナーであるTEADはBRD4の標的であり、BETiがこれらの発現を抑制することも見出した。
  • 非小細胞肺癌患者の多くでこれらの遺伝子が変異し、TAZの増幅と過剰発現が転帰の悪化をもたらすことと相関することからも、HippoパスウェイがBETi耐性をもたらし、BETiが YAP/TAZの発癌性を抑止すると見られる。
2. CRISPR技術により、KSHV潜伏感染B細胞内のKSHVゲノム全コピーにおけるORF57遺伝子のノックアウトおよびin situ逆位を実現
[出典] "CRISPR/Cas9-mediated Knockout and In Situ Inversion of ORF57 Gene from All Copies of The KSHV Genome in BCBL-1 Cells" BeltCappellino A, Majerciak V, Lobanov A, Lack J, Cam M, Zheng ZM. J Virol. 2019-08-14.
  • 原発性体腔液性リンパ腫細胞株BCBL-1において、Cas9と2 gRNAsを帯びた単一の発現ベクターによるゲノム編集と、細胞選択とシングルセルクローニングを繰り返すことで、~100コピー全てについてORF57の削除または逆位を誘導した。この手法は、KSHVゲノムのコピー数が少ない細胞株においても有効であった。
3. CRISPR/Cas9で誘導したヒトMLL白血病モデルにおいて、DOT1LとPRMT5の阻害が相乗的抗腫瘍活性を発揮することを同定
[出典] "Inhibition of DOT1L and PRMT5 promote synergistic anti-tumor activity in a human MLL leukemia model induced by CRISPR/Cas9" Secker KA [..] Schneidawind C. Oncogene 2019-08-15.
  • 白血病には染色体転座に由来する融合遺伝子が多数見られる。11番染色体上のMML遺伝子は多くの融合遺伝子を形成するが、University Hospital Tuebingenの研究グループは、CRISPR/Cas9により、臍帯血からMLL-AF4 (4番染色体上AFF1)融合遺伝子またはMLL-AF9 (9番染色体上MLLT3)誘導遺伝子を帯びたモデル細胞を作出し、併用療法の可能性を見出した。
4. [レビュー] Cas9によるin vivo遺伝子治療の課題と、活性をオンオフ可能なCas9バリアントの可能性
[出典] REVIEW "Applying switchable Cas9 variants to in vivo gene editing for therapeutic applications" Mills EM,  Barlow VL, Luk LYP, Tsai YH (Cardiff U). Cell Biol Toxicol. 2019-08-15.
  • Cas9遺伝子治療;細胞内在DSB修復機構;in vivo遺伝子編集療法が有効な疾患; Cas9とgRNAの送達法、温度、光および低分子によるCas9活性の制御
5. [レビュー] 遺伝子治療に向けたポリアニオン系オリゴヌクレオチドの組織特異的デリバリー
[出典] REVIEW "Tissue-Specific Delivery of Oligonucleotides" Xia X, Pollock N, Zhou J, Rossi J (BiologyBeckman Research InstituteCity of Hope). Oligonucleotide-Based Therapies, MIMB, 2019;2036:17-50.
  • siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドによる標的遺伝子のノックダウンから、近年のCRISPR-Cas9ツールボックスまで、臨床への展開には常に、そのポリアニオン系コンストラクトの細胞内へのデリバリーが課題となるという観点から、ウイルスベクターと非ウイルス系担体による組織特異的デリバリー法をレビュー
6. 食品媒介病原Cronobacterのタイピングには、複数遺伝子座に基づくMLSTよりもCRISPR遺伝子座によるタイピングが有用である
[出典] "Cronobacter sakazakii, Cronobacter malonaticus, and Cronobacter dublinensis genotyping based on CRISPR locus diversity" Zeng H [..] Wu Q. Front Microbiol. Accepted 2019-08-13.
  • 広東省微生物研究所の研究グループがCRISPR遺伝子座によるタイピング法を開発し、 MLSTよるタインピングと比較して、全ゲノム配列に基づいたタイピング (WGST)とよく一致することを示した。
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