[出典] "The autoregulator Aca2 mediates anti-CRISPR repression" Birkholz N, Fagerlund RD, Smith LM, Jackson SA, Fineran PC. Nucleic Acids Res. 2019-08-20.
[crisp_bio注] その後、AcaがAcrの転写を抑制するとする論文がCell誌に発表された:"Anti-CRISPR-Associated Proteins Are Crucial Repressors of Anti-CRISPR Transcription" Stanley SY [..] Davidson AR. Cell 2019-08-29;[crisp_bio記事] 2019-08-30 Anti-Anti-CRISPRタンパク質がファージに内在する

背景
  • バクテリアが備えている獲得免疫応答システムCRISPR-Casに対して、ファージはそのオフスイッチにあたるanti-CRISPRタンパク質 (Acrs)を備えている。多様なCRISPR-CasシステムをオフするAcrsをコードする遺伝子acrsの配列は極めて多様であり配列相同性からacrsを発見することは困難であったが、acrs遺伝子が、ヘリックスターンヘリックス (HTH)モチーフを帯び保存性が高い遺伝子に隣接していたことから、この(anti-CRISPR-associated genes (aca)遺伝子を手掛かりにacrs探索が進むことになった (Cell 2016)。
  • 遺伝子acasがコードするタンパク質はこれまでにAca1からAca7まで同定されるに至った。一方でその機能については、モチーフからacrsacaを含むオペロンの調節因子でありAcrのレベルを制御すると想定されていたが、自己調節因子であるか、Acrを標的とする調節因子であるか、特定されていなかった。
概要
  • University of Otagoの研究グループは今回、Pectobacterium carotovorumの溶原ファージZF40にコードされているAca2が、acr(具体的にはacrIF8)-aca2オペロンの発現を抑制すること、および、Acrを抑制する自己調節因子であることを明らかにした。
補足
  • acrIF8–aca2のプロモーター領域には逆向き反復配列が二組存在した(IR1とIR2: 原論文Figure 1引用左下図の A 参照) 。IR1とIR2の間でコア配列 (5'-TTCG-3')は共通であるが、その他の領域は異なり、また、菌種間でのアライメントから、IR1の保存性と対称性がIR2より高いことが明らかになった (左下図 B 参照)。
Acr 1 Acr2
  • 各種のアッセイ実験から、Aca2はホモ二量体を形成し (原論文Figure 4引用右上図参照)、IR1と高親和性で結合することでDNAの屈曲を誘導し、acrIF8–aca2プロモーターを直接阻害することを同定した。Aca2はin vitroではIR2に結合せずin vivoではIR2に結合するが、ファージが溶原化しプロファージに移行した後はAcr抑制には関与せず、ファージが感染後溶原化するまでの間Aca2が高濃度の状況でAcr抑制に寄与するとが示唆された。