[出典] "Programmable CRISPR-responsive smart materials" English MA, Soenksen LR, Gayet RV, de Puig H, Angenent-Mari NM, Mao AS, Nguyen PQ, Collins JJ. Science. 2019-08-23;PERSPECTIVE "CRISPR propels a smart hydrogel" Han D, Li J, Tan W. Science. 2019-08-23; RESEARCH HIGHLIGHT Coupling CRISPR to smart hydrogels. Tang L. Nat Methods. 2019-09-27.
Cas12aは、gRNAに相補的な配列を帯びたdsDNAの切断 (標的切断)に続いて近傍に存在するssDNAを無差別に切断する (コラテラル切断) 特徴を帯びている。コラテラル切断の効率は極めて高く (~1,250ターンオーバー/秒)、標的dsDNA切断の信号を大きく増幅することから、Cas12aは核酸、低分子さらには抗体の超高感度な検出デバイスをもたらした [1-3]。MITとHarvard Uの研究グループは今回、このCas12aの特徴を活かして、プログラム可能で多用途なDNAハイドロゲルを実現した。
予備実験:Cas12aによるssDNAコラテラル切断を介した薬剤耐性遺伝子dsDNAの検出
レポータssDNAの切断により消光されていた蛍光体の発光により、溶液中~16 pMのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)の薬剤耐性遺伝子mecAを検出
PEG-DNAゲル
- マルチアームのPEGに、チオール-ビニルスルホンを介して、低分子やタンパク質を連結したssDNAをクロス架橋したハイドロゲル
- Cas12a-gRNAと標的dsDNAの存在下で、ssDNAが切断されると、消光されていたssDNA上の蛍光体の発光の可視化、そしてまたは、低分子やタンパク質のハイドロゲルからの放出が発生する
- 溶液中での予備実験と同様に、mecAをはじめとするMRSAの各種薬剤耐性遺伝子や毒性因子遺伝子のdsDNAを高感度で検出し、また、PEG-DNAゲルから放出されたホースラディッシュ・ペルオキシダーゼが活性を示すことを確認
- PEGの架橋密度やレポータssDNAの部分的dsDNA化により放出を制御可能
ポリアクリルアミド (PA)-DNAゲル
- 非相補的な2種類のオリゴヌクレオチド (15 bp)を連結した2種類のPA-DNA前駆体 (Ps-X鎖とPs-Y鎖)をssDNAでクロス架橋したハイドロゲルを紙ベースのチャネルに形成
- Cas12a-gRNAとトリガーとなる標的dsRNAによるコラテラルssDNA切断を介して、ハイドロゲルに取り込まれていた分子が放出される
- 金ナノ粒子と初代末梢血単核細胞 (PBMC)の放出で実証
カーボンブラック(CB)-DNAゲル
- 熱融解したdsDNA溶液をCBのナノ粒子 (CB-NP)存在下で冷却することで、CB-NPが水素結合とπ-π相互作用を介してssDNAによってクロス架橋され3次元ネットワークを構成したハイドロゲル
- Cas12a-gRNAとトリガーとなるdsDNAを介したssDNAのコラテラル切断により、電気伝導性のCB-NP3次元ネットワークが壊される。これによって、CB-DNAゲルを媒体とする電極間の電気伝導が失われ、CB-DNAゲルは電気ヒューズとして機能することになる。
- 電極間の電気伝導はトリガーdsDNAの量に応じて失われていき、1 μMのトリガーdsDNAで10時間以内に100%失われることを確認
紙ベースのマイクロ流体分析デバイス (microfluidic paper-based analytical devices: μPADs)
- PA-DNAゲルがバッファーの流れを物理的に阻害することから、PA-DNAが形成されるか否かで、標的dsDNAに非存在と存在を検知するμPADを作出
- Cas12a-gRNAと標的dsDNAが存在する場合に限り、ssDNAコラテラル切断によりssDNAによるクロス架橋が形成されずPA-DNAゲルが形成されない現象を利用し、バッファーの流れを、蛍光ssDNAにより可視化することで、コラテラルssDNA切断のトリガーとなったdsDNA検出
- 可視化にかわり、バッファー内の電解質による電気伝導の変化による測定も実現
- このμPADで、MRSA dsDNA 400 pMを検出し、また、逆転写-等温増幅 (リコンビナーゼポリメラーゼ増幅)を組み込んで、エボラウイルスRNA 11 aMを検出
応用
本手法は、バイオセンシング、バイオエレクトロニクスさらに組織工学に展開可能
本手法は、バイオセンシング、バイオエレクトロニクスさらに組織工学に展開可能
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