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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

2021-04-10 14:22 Yangらの反論に対するGurumurthyらの再反論を以下に引用:
"Response to correspondence on “Reproducibility of CRISPR-Cas9 methods for generation of conditional mouse alleles: a multi-center evaluation" Gurumurthy CB [..] O'Brien AR, Burgio G. Genome Biol. 2021-04-07. https://doi.org/10.1186/s13059-021-02320-3
  • Yangらの"2sgRNA-2ssODN"法による編集効率は一定の条件では成立するが,標的遺伝子座の多くで実現せず,また,反論にある再実験に基づいた効率は,オリジナル論文における16%を達成しない.
  • 反論にある"濃度"は,条件付き編集ではない実験で使用された濃度であり,オリジナル論文における実験条件を問い合わせたが,これまで,回答が無い.このため,マイクロインジェクションとエレクトロポレーションによって,Yangらが反論で示した濃度範囲から上下にさらにひろげて再実験したが,濃度と編集効率に影響しないことを見出した [supplementary data fileにてデータ公開].また,群馬大学のHatadaグループ (Horii et al.)は,高濃度の条件での,Mecp2遺伝子編集において,極めて低効率 (~2%)かまたは極めて高い細胞毒性 (~90%)を経験した.
  • また,Piezo-driven zygote injection法と前核インジェクション法の違いに由来するという説は,サイドバイサイドの実験で検証しない限り,あくまでも仮説である.
  • 我々 (Gurumurthyら)は"one-donor"法によって,複数種類の遺伝子座についてより効率の高い編集を実現した.マウスにおける実験手法については,特に,実験動物保護の観点から,最も効率の良い手法を広げていくべきである.
2021-04-10 09:28 GurumurthyらのGenome Biology 論文で“two-donor method” (2sgRNA-2ssODN) はオリジナル論文[1] のような効率は出ないと評価されたYangらからの反論投稿を以下に引用:
"Response to “Reproducibility of CRISPR-Cas9 methods for generation of conditional mouse alleles: a multi-center evaluation” Yang H, Wang H, Jaenisch R. Genome Biol. 2021-04-07. https://doi.org/10.1186/s13059-021-02312-3
 Mecp2 遺伝子座アレルの条件付き編集効率について,Yangらの報告 (8-10%)の後,独立な5つの研究グループから査読付き論文において,順次2.5% ~ 18%の効率が報告されてきたとし,Gurumurthyらの報告との差異について以下のように論じた:
  • Gurumurthyらが使用したCas9, sgRNAおよびオリゴの濃度がYangらの条件のそれぞれ,10分の1, 5分の1, および10分の1とかなり低い.
  • Gurumurthyらが,Yangらが使用したpiezo-driven zygote injectionと異なるインジェクション法を使用したたことが影響した可能性がある.
  • Gurumurthyらの「一般的に “one-donor method”の方が効率が高い」という主張には同意するが, “one-donor method”も実験条件 (遺伝子座とドナープラスミドの設計)に左右される.
2019-08-27 初稿
[出典] "Reproducibility of CRISPR-Cas9 methods for generation of conditional mouse alleles: a multi-center evaluation" Gurumurthy CB [..] Burgio G. Genome Biology 2019-08-26.
 CRISPR技術によってコンディショナルノックアウトマウスの作出効率が16%に達したとする報告 (Cell 2013 [1])を、日本を含む (理研、東海大、阪大、神戸医療産業都市推進機構、東海大、筑波大、ならびに名古屋市立大)世界各国の20機関120研究室が共同で検証した結果が、Genome Biologyに発表された。
  • 検証した手法は、一対のsgRNAs (2sgRNAs)およびドナーとする一対のloxPオリゴ (2ssODNs)を、Cas9 mRNAと共に、接合子にマイクロインジェクションすることで、コンディショナルノックアウトマウス (cKO/floxedマウス)を作出する"2sgRNA-2ssODN"と呼ばれる手法である (原論文引用Fig. 1引用左下図参照)。
Reproducibility 1 Reproducibility 2
  • 検証実験の概要は右上図 (原論文Fig. 2引用)にまとめられているが、56遺伝子座を標的とする"2sgRNA-2ssODN"マイクロインジェクション (一部エレクトロポレーションを含む)した接合子から移植を経て1,718胎仔を得、その中で15匹にfloxedアレルが存在し、コンディショナルノックアウトマウスの作出効率は0.87%止まるという結果に至った。
  • この大規模実験のデータをもとにした統計解析と機械学習からは、cKOの効率を決定づける因子を絞り込めなかったが、近年開発された1ドナー (ssDNAまたはdsDNA)にてノックインする手法 [2-4]ならびにそれらに倣った“second LoxP insertion in the next-generation method”により、"2sgRNA-2ssODN"では成功しなかった18遺伝子座のcKOを実現し、また、cKO作出効率が平均して"2sgRNA-2ssODN"の10~20倍に向上することを見出した。
[引用論文とcrisp_bio記事]
  1. "One-Step Generation of Mice Carrying Reporter and Conditional Alleles by CRISPR/Cas-Mediated Genome Engineering" Yang H, Wang H, Shivalila CS, Cheng AW, Shi L, Jaenisch R. Cell 2013-09-12. Online 2013-08-29.
  2. CRISPRメモ_2017/12/22 [第1項] [プロトコル]Easi-CRISPR:長鎖一本鎖を利用してノックインマウスとコンディショナルノックアウトマウスを高効率で作出する法
  3. CRISPRメモ_2018/05/05 [第2項] コンディナルノックアウトマウスの1段階作出法’CLICK'
  4. CRISPRメモ_2018/05/27 [第1項] ヒトとマウスの胚への効率的かつ精密な遺伝子ノックインをTild-CRISPR法を開発して実現
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