1. CRISPR-Cas9が誘導するリーシュマニアゲノムのDSBの修復に、一本鎖アニーリング (SSA)が主要な役割を担う
[出典] "Single-Strand Annealing Plays a Major Role in Double-Strand DNA Break Repair following CRISPR-Cas9 Cleavage in Leishmania" Zhang WW, Matlashewski G. mSphere. 2019-08-21
  • リーシュマニアはDSB修復パスウエイとして、主としてMMEJに依存し、HDRの頻度は低く、NHEJは存在しない。
  • McGill Universityの研究チームは今回、リーシュマニアの抗原虫薬ミルテホシン輸送遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9が誘導するDSBの修復が、主としてSSAに依存し (>90%)、MMEJは10%未満であり、9-, 18-, 20-および29-kbの欠損と遺伝子の共欠損をもたらすことを見出した。また、頻度は低いが77-kb離れた反復配列を介したSSAにより、15遺伝子の欠損が発生した。
  • リーシュマニア・ゲノムには反復配列が多数存在することから、CRISPRが誘導するDSBsの多くがSSAを介して修復されると想定される。また、MMEJとSSAの双方にDNAポリメラーゼθが関与することも明らかになった。
  • リーシュマニアの高精度で高効率の遺伝子編集を実現するには、ドナーDNAが必要である。
  • [関連crisp_bio記事] 2018-08-07 FANCAが一本鎖アニーリングと相同鎖交換を触媒することで、DSBの相同組換え修復を亢進する
2. バクテリアは、1細胞が帯びるスペーサの多重度を、環境によって使い分ける
[出典] "Expansion of CRISPR loci with multiple memories of infection enables the survival of structured bacterial communities" Pension NC, Marraffini LA. bioRxiv. 2019-08-26.
  • Rockefeller Universityの研究チームは、Streptococcus pyogenesのタイプII-A CRISPR-Cas遺伝子座を帯びたStaphylococcus aureusのファージ感染実験において、液体培養では、各細胞 (CRISPRアレイ)は単一のスペーサを帯び、2~3種類のスペーサを帯びた細胞は稀であったが、固形培地上では、コロニーを形成する細胞の多くがスペーサを多重に帯びていることを見出した。
  • 研究チームは、液体培養では耐えず攪拌されることで、多様な単一スペーサを獲得した細胞集団が協働してファージを中和することで、集団としてのファージ耐性を維持し、固形培地上では、単一スペーサを帯びたにとどまる細胞は排除され、多重なスペーサを帯びた細胞が残っていくとした。
3. CRISPR-Cas9技術によりバンコマイシン耐性腸球菌の薬剤耐性遺伝子の効率的編集を実現
[出典] "CRISPR-Cas9 mediated genome editing in vancomycin resistant Enterococcus faecium" de Maat V [..] van Schaik W. bioRxiv. 2019-08-24.
  • University Medical Centre Utrechtを主とする研究グループは今回、E. faeciumのβ-ガラクトシダーゼのサブユニットをコードするlacL遺伝子をノックアウトし、X-GAL (5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド)に基づくブルーホワイトスクリーニングによって野生型と変異型を識別した。また、マクロライド耐性遺伝子msrCにGFP2コピーを挿入し安定した蛍光を確認した。
4. Pichia pastorisへのCRISPR-Cas9による遺伝子多重ノックイン
[出典] "CRISPR–Cas9-mediated genomic multiloci integration in Pichia pastoris" Liu Q, Shi X [..] Cai M. Microb Cell Fact. 2019-08-21
  • 華東理工大学の研究グループが、NHEJ欠損 (Δku70)株により、タンパク質発現に定評ある酵母P. pastorisを高価値の薬品や化合物の合成宿主細胞へと展開するにあたり求められたいた効率的なCRISPR-Cas9による多重遺伝子ノックインを実現し、P. pastorisにテレン酸生合成回路を組み込んだ。
5. CRISPR/Cas9によるLactobacillus plantarumのシームレスなゲノム編集とN-アセチルグルコサミン生産への応用
[出典] "CRISPR/Cas9-assisted seamless genome editing in Lactobacillus plantarum and its application in N-acetylglucosamine production" Zhou D, Jiang Z, Pang Q, Zhu Y, Wang Q, Qi Q. Appl Environ Microbiol. 2019-08-23
  • 山東大学の研究グループが、CRISPR/Cas9を介したdsDNAとssDNAの効率的なリコンビアニングを実現し、GlcNAc収量増を実現
6. 宿主域が広いpBBR1MCS-2cas9遺伝子をクローニングしたpBBR1-Cas9プラスミドによりShewanella oneidensis MR-1のゲノム編集法を確立
[出典] "CRISPR/Cas9-mediated genome editing of Shewanella oneidensis MR-1 using a broad host-range pBBR1-based plasmid" Suzuki Y, Kouzuma A, Watanabe K. J Gen App Microbiol. 2019-08-23.
  • プロテオバクテリアのゲノム編集に広く利用可能なプラスミドpBBR1-Cas9を構築し、crp遺伝子を標的とするsgRNAにより細胞死を誘導し、また、フレームシフト変異を帯びたcrp配列をドナーとするCRISPR-Cas9によりノックインを実現し、細胞死を制御。
7. [レビュー] CRISPR技術によるモデル植物と作物に対するウイルス感染機構の研究と制御
[出典] REVIEW "CRISPR applications in plant virology: virus resistance and beyond" Kalinina NO, Khromov A, Love AJ, Taliansky M. Phytopathology. 2019-08-21.
  • 植物ウイルスのDNA/RNAに加えて宿主因子を標的とするウイルス耐性付与、感染診断と可視化、RNAi技術との比較、市場に出せるウイルス耐性作物生産における課題