crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

1. CRISPR-Casの組織特異的in vivoゲノム編集を、anti-CRISPRタンパク質 (Acr)ならびにAcrの活性を阻害する組織特異的miRNAで実現する
[出典] "Tissue-restricted Genome Editing in vivo Specified by MicroRNA-repressible Anti-CRISPR Proteins" Lee J, Mou H, Ibraheim R, Liang SQ, Liu P, Xue W, Sontheimer EJ. RNA. 2019-08-22.
  • CRISPR-Casの臨床応用には、その活性を標的とする種類の細胞や組織に限定することが必須である。この目的に組織特異的プロモータはAAVと指向性を利用可能であるが、細胞型によっては実用になるコンパクトなプロモータが存在せず、AAVの指向性は完全ではない[1]。UMMSとCSHLの研究グループは今回、Acr遺伝子の3'末端に肝臓特異的miRNA-122結合サイトmiRNA-122BSを融合しておくことで、SpyCas9, Nme1Cas9およびNme2Cas9によるゲノム編集が高分化型ヒト肝癌由来細胞株Huh-7細胞では進行し、ヒト胎児腎細胞由来HEK293細胞では抑制されることを示した。
  • 続いて、2月齢のC57BL/6マウスに、Nme2Cas9/sgRNAとAcrIIC3 + 3 x miRNA-122BSのプラスミドを尾静脈注射し、Nme2Cas9/sgRNAによる肝臓特異的遺伝子編集を実証した。
 引用・参考crisp_bio記事
  1. 2019-08-02 これまでのスクリーニング法ではAAVの指向性 (tropisms)の一部しか見ていなかった
  2. CRISPRメモ_2019/04/17 - 2 [第3項] マイクロRNAによりanti-CRISPR遺伝子の発現を細胞特異的に調節することで、細胞特異的なCas9ゲノム編集を実現
2. drugZ: CRISPRスクリーンから薬剤と遺伝子の相互作用を同定するアルゴリズム
[出典] "Identifying chemogenetic interactions from CRISPR screens with drugZ" Colic M [..] Hart T. Genome Med. 2019-08-22.
  • MD Anderson Cancer Center、University of Torontoなどの研究グループは、プール型CRISPRによる薬剤-遺伝子間相互作用スクリーンから遺伝子レベルでのZスコアを計算するアルゴリズムdrugZを開発し、Pythonで実装し、githubから公開した (github.com/hart-lab/drugz)。DrugZによって、薬剤の活性を抑制する遺伝子と共に亢進する遺伝子を同定可能である。
  • PARP阻害剤オラパリブと相互作用するDNA損傷応答遺伝子:BRCA1変異ヒト乳腺癌細胞SUM149PT において、オラパリブ抑制遺伝子として既知のTP53BP1に加えて新奇のSHLD1(旧名 C20orf196)を同定
  • KRAS変異膵臓癌細胞株において、ERK1/2 阻害剤SCH772984と合成致死の関係にあるMAPK1/3と、ERK阻害剤を抑制するKEAP1を同定
  • 膠芽腫細胞株においてテモゾロミド (TMZ)と合成致死の関係にあるファンコニ貧血複合体とテモゾロミドを抑制するDNAミスマッチ修復パスウエイを同定
  • hTERT不死化RPE1上皮細胞株において、抗癌剤ビンクリスチンの耐性マーカとして知られているABCC1が合成致死性遺伝子のトップにランクされた
  • CRISPRi/CRISPRaスクリーンのdrugZ解析により、抗癌剤リゴサチブの微小管を不安定化する機能の再確認した
  • また、数種類のデータセットにおいて腫瘍抑制遺伝子が薬剤耐性遺伝子と同定される傾向を見出した。
3. [展望] Base Editorsのオフターゲット編集
[出典] PERSPECTIVE "Off-Target Editing by CRISPR-Guided DNA Base Editors" Park S, Beal PA (UC Davids). Biochemistry. 2019-08-21.
  • BEsの開発とgRNAに依存しないオフターゲット編集活性に関する最近の研究成果と、BEsの精度向上を展望
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