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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典]  "Programmed chromosome fission and fusion enable precise large-scale genome rearrangement and assembly" Wang K, de la Torre D, Robertson WE, Chin JW. Science. 2019-08-30;IN DEPTH "Forget single genes: CRISPR now cuts and splices whole chromosomes (Modified CRISPR cuts and splices whole genomes)" Service RF. Science 2019-08-30.

背景
  • 大腸菌は合成生物学のモデル生物の一種であるが、ゲノムDNAの削除、ゲノムの大きな領域の転座生成、ゲノムの大きな領域の逆位生成、加えて、大きなゲノム断片の融合による合成ゲノム構築を可能とする技術が整っていなかった。
  • これまでも、制限酵素を利用して大腸菌の環状ゲノムから比較的大規模のDNA断片を切り出し小型の環状DNAを生成することが可能であったが、その規模は2~30万塩基であり、合成生物学が必要とする特定のパスウエイあるいは新奇パスウエイを構成する多数の遺伝子を含む数百万塩基の規模の環状DNAへの展開は実現していなかった。この規模の課題に加えて、fission (切断)部位とsplice (接合)部位に、ごく少数であっても望ましくないDNA (scar/スカー)が残らないようにする(スカーレス/scarless)ことも、膨大な加工を重ねていく合成生物学では大きな課題であった。
成果
  • Medical Research Council Laboratory of Molecular Biologyの研究グループは今回、大腸菌ゲノムの大規模な改変に伴う課題を、CRISPR-Cas9技術とλ-redリコンビナーゼ技術を組み合わせることで、解決した。
  • すなわち、Cas9-sgRNAによって大腸菌環状ゲノムを設計したサイトでスカーレスで切断し、λ-redリコンビナーゼによって、生成された2種類のDNA断片からスカーレスな2種類の環状ゲノムを形成する。
  • この手法によって、例えば、2.44 Mbと1.55 Mbのペアから、3.55 Mbと0.44 Mbのペアまで、さまざまな合成染色体ペアを作り出した (原論文Fig. 2参照)。
  • 合成染色体ペアを、λ-redリコンビナーゼを介して組み合わせ直すことで、転座や逆位を発生させた(原論文Fig. 3参照)。
  • さらに、異なる合成染色体ペアからペアを組み替えた形になるキメラ環状DNA (1染色体)を帯びた細胞を作り出した (chromosome transplant;原論文Fig.4参照)。
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