[出典] ”CRISPR DNA base editors with reduced RNA off-target and self-editing activities” Grünewald  J, Zhou R, Iyer S, Lareau  CA, Garcia  SP, Aryee  MJ, Joung JK. Nat Biotechnol. 2019-09-02.

 J. K. Joungが率いる研究グループは、2019年4月にNature誌にCBEのRNA編集を抑制するSECURE-CEBを発表し[1]、5月にはbioRixvにABEのRNA編集を抑制するSECURE-ABEを投稿していたところ[2]、今回、bioRxiv投稿にCBEsとABEsの"self-edit"の内容を加えた論文をNature Biotechnology誌から発表した。
[crisp_bio注 ]本ブログ記事は、SECURE-CBEとSECURE-ABEに向けた技術開発については先のcrisp_bio記事[1-2]に譲り、主として"self-edit"に触れた。

Nature Biotechology論文のアブストラクトから...
  • CBEsとABEsはぞれぞれDNAにC-to-TとA-to-Gの変換をもたらすことを目的として設計・開発されたが、著者らは、CBEsもABEsもgRNAには依存せずトランスクリプトーム・ワイドでRNAにも塩基変換をもたらすことを発見していた。
  • そこで、著者らは先に、BE3のRNA編集を抑制するSECURE-BE3を開発していたが今回、構造情報に基づいた改変を介して、ABEのオンターゲットDNA編集活性を損なうことなくRNA編集抑制を実現するSECURE-ABEを開発した。SECURE-ABE [miniABEmax(K20A/R21A)とminiABEmax(V82G)]は、SpCas9に基づくbase editorとして最小となった。
  • また、CBEのRNA編集のシチジンアミナーゼ依存性を評価し、rAPOBEC1とヒトAPOBEC3A に対して、Joungらが開発したヒトAPOBEC3A改変eA3AまたはhAIDを組み込んだCBEとTarget-AID*では、RNA C-to-U変換が顕著に抑制されることを見出した(* bioRxivバージョンでは言及していなかった)。
  • さらに、CBEsとABEsのRNA編集活性が、CBEsとABEsで編集したDNAに由来する転写物にも及ぶ現象 "self-edit"を見出し、CBEsとABEsは、望ましくない変異を帯びたタンパク質や短縮型のタンパク質が誘導されるリスクを伴うとした。
"self-edit"
  • CBEsとABEsがHEK293細胞内のRNAを非選択的に編集することを見出した著者らは、CBEsと"self-edit"活性の存在を検証し、野生型DNA由来するRNA編集の結果と同様の結果を得た。
  • HEK293細胞とHepG2細胞のいずれについてもrAPOBEC1-BE3では"self-edit"が発生し、その中にはミスセンス変異を誘導する変換が含まれていたが、SUPER-BE3では"self-edit"が見られなかった。また、eA3A-BE3、hAID-BE3およびTarget-AIDがHEK293細胞において"self-edit"を発生しないことも確認した。
  • ABEについても、ABEmaxとminiABEmaxは"self-edit" (A-to-I変換)を発生しそのほとんどがミスセンス変異に至ったが、miniABEmax(K20A/R21A)の"self-edt"は稀であり、miniABEmax(V82G)には"self-edit"が見られなかった。
  • "self-edit"の検証に続いて、CBEsとABEsによるgRNAの編集も検証した:BE3をはじめとする全てのCBEsにはgRNA編集は見られなかった。一方で、ABEsの場合は、tracrRNAのステムループ内の"A"の変換が発生したが、発生位置と頻度の低さから、gRNA-ABE複合体の活性または特異性への影響は小さいと判定した。
 
引用crisp_bio記事
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