crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] "A pooled single-cell genetic screen identifies regulatory checkpoints in the continuum of the epithelial-to-mesenchymal transition" McFaline-Figueroa JL, Hill AJ, Qiu X, Jackson D, Shendure J, Trapnell C. Nat Genet. 2019-09-02.

 シングルセル系譜追跡とプール型シングルセルCRISPR遺伝子スクリーニングを組み合わせることで、発生や疾患が進行する過程における細胞系譜の追跡とともに、過程を制御する遺伝子回路についても手がかりを得られる。Cole Trapnell (U. Washington)が率いる研究グループは今回、正常ヒト乳腺上皮細胞MCF10Aのコロニーをプレート中央にセットするという創傷治癒アッセイ (wound healing assay)を模した実験系を構築し、コロニーから自然発生する、または、EMT誘導因子として知られているTGF-βに誘導される上皮間葉転換 (EMT)を分析した。
  • Cole Trapnellらが開発した機械学習アルゴリズムMonocle2[1-2]によりscRNA-seqのデータを解析し、上皮細胞から間葉細胞への変換過程を遡及解析した結果から、上皮間葉転換が段階を踏んで進行する不連続な過程ではなく連続的に進行する過程であり、KRASが上皮細胞が間葉細胞への転換の鍵であることも判明した。
  • プール型CRISPR-Cas9スクリーンの一種であるCROP-seq[3]により、EMTに相関する一連の細胞表面受容体と転写因子も同定した。その中には、その欠損がEMTの進行を阻害することになるKRASの調節因子も含まれていた。
  • KRASエフェクターのMEKとその上流の活性化因子KRASおよびMETの機能喪失がもたらした結果から、EMTの過程には'チェックポイント'が組み込まれていることが判明した。
  • これらの結果から、研究グループは「細胞集団の中に現れるチェックポイントでEMTの進行が停止した亜集団が、EMTの段階的に進行する不連続な過程における安定した中間状態と解釈されてきた」とした。
[参考論文とcrisp_bio記事]
  1. "Reversed graph embedding resolves complex single-cell trajectories" Qiu X [..]  Trapnell C. Nat Methods. 2017 Oct;14(10):979-982. Online 2017-08-21
  2. Monocleなど解析法の参考資料:"Single-cell pseudo-temporal ordering 近年の技術動向" 鈴木良一. SlideShare 2017-09-22.
  3. CRISPRメモ_2018/02/05 [第1項] CRISPR/Cas9遺伝子編集結果を単一細胞RNA-seq(scRNA-seq)で読み出す手法一覧
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