[出典] "A Simple Criterion for Inferring CRISPR Array Direction" Milicevic O, Repac J, Bozic B, Djordjevic M, Djordjevic M. Front Microbiol. 2019-09-04.
University of Belgradeの研究グループは今回、cas遺伝子の向きに基づいてCRISPR arrayの転写の向き (dsDNAのうち転写されるDNA鎖)を予測するプログラムを開発し、従来のプログラムより高性能であることを示した。
- バクテリアとアーケアのCRISPR-Cas獲得免疫応答システムは、CRISPRアレイに'記憶'された外因性DNA断片に由来するスペーサから転写されたCRISPR RNA (crRNA)が、侵入ファージや可動遺伝因子のDNAを認識することで、機能する。また、近年、CRISPR-Casシステムが獲得免疫応答以外の機能を帯びていることも明らかになってきた[1-2]
- crRNAsは通常、dsDNAのうちの一方のDNA鎖から転写された一本の長いpre-crRNAs鎖へから生成される。したがって、ゲノムやメタゲノムにおけるCRISPR-Casシステムの探索にあたっては、転写されるDNA鎖/転写される方向 (direction)を見極めることも重要である。
- この転写されるDNA鎖 (pre-crRNA鎖へと転写される方向)予測プログラムとしては、CRISPRCasFinder [3]に組み込まれているCRISPRDirection [3]が実質標準になっているが、CRISPRアレイの~37% (> 2,200遺伝子座に相当)について判定不能 (ND)となり、特に、CRISPR-Casシステムが獲得免疫応答以外の機能 (例 scaRNA (small CRISPR-Cas associated RNA)を介した病原性 [1])を示すタイプII-BシステムではNDが70%を超える。CRISPRCasFinderに組み込まれているもう一つの予測プログラムPotential OrientationはCRISPRDirectionよりもNDの頻度は低いが精度が低い。
- 研究グループは、cas遺伝子の向きをもとにした'素朴な'予測プログラムCas Orientationを開発し、CRISPRDirectならびPotential Orientationの3種類のプログラムについて、バクテリアとアーケアの~14,000ゲノムからCRISPRCasFinderパイプラインで推定したCRISPR/Casシステム (原論文Figure 1引用下図参照)におけるCRISPRアレイの転写方向予測結果を比較し、さらに、実験データと照合した。

- Potential OrientationはCRISPRDirectionで使用されている6種類の予測子の一つに相当し、cas遺伝子の向きはCRISPRDirectionでは使われていないが、興味深いことに、Cas Orientationの結果の方がPotential Orientationの結果よりもCRISPRDirectionの結果と良く一致した。
- 実験データに基づく検証から、Cas OrientationはPotential Orientationよりも精度が高く、CRISPRDiretionと同等の精度を示し、加えて、CRISPRDirectionではNDと判定されたCRISPRアレイの~95%について精度よく方向を同定した (原論文Figure 3引用下図参照)。

- Cas Orientationは、'素朴な'アルゴリズムであるが、結果的に、既存のCRISPRアレイ転写方向予測プログラムよりも高性能であり、また、CRISPR-Cas探索プログラムに容易に組み込み可能である。
[参考文献とcrisp_bio記事]
- 2019-06-29 FnoCas9は、外来DNAを切断する一方で、内在遺伝子群を抑制することで病原性を発揮させる; 2017-08-27 [PDIS]Francisella novicida Cas9の構造決定とPAMの拡張
- CRISPRメモ_2019/03/01[第3項] E. coliのタイプI-E CRISPR/Casシステムは、獲得免疫応答システムとしてよりも内在遺伝子調節システムとして機能している
- "CRISPRCasFinder, an update of CRISRFinder, includes a portable version, enhanced performance and integrates search for Cas proteins" Couvin D [..] Pourcel C. Nucleic Acids Res. 2018-07-02.
- "Accurate computational prediction of the transcribed strand of CRISPR non-coding RNAs" Biswas A, Fineran PC, Brown CM. Bioinformatics. 2014 Jul 1;30(13):1805-13. Online 2014-02-27.
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