1. ビブリオ・バルニフィカスのタイプIII-D CRISPR–Casシステムにおける逆転写酵素 (RT)-Cas1融合タンパク質を介したRNAからのスペーサ獲得
[出典] "Spacer acquisition from RNA mediated by a natural reverse transcriptase-Cas1 fusion protein associated with a type III-D CRISPR–Cas system in Vibrio vulnificus" González-Delgado A, Mestre MR, Martínez-Abarca F, Toro N. Nucleic Acids Res. 2019-09-04.
- スペインZaidín Experimental Stationの研究グループは、RT-Cas1融合タンパク質、2種類のCas2タンパク質 (AとB)および2種類のCRISPRアレイのうちの一方のセットからなるV. vulnificus YJ016株のadapation (スペーサ獲得)モジュールが (原論文Figfure 1引用下図参照)、大腸菌で完全に機能することを確認した。
- RTの活性部位に変異を導入すると新規スペーサ獲得が顕著に低減し、RT-Cas1相関adaptationモジュールがRNA分子からCRISPRアレイへとスペーサを取り組むことも同定した。また、2種類のCas2タンパク質がadaptationに必須であることも同定した。
- このadaptationモジュールはゲノムの任意の領域からスペーサを獲得し、コーディング領域の5'末端または3'末端への偏りを示さなかったが、CRISPRアレイに記憶されたスペーサの配列にはadaptionモジュールの認識にかかわると思われる配列の特徴が見られた。
- RT-Cas1を介したRNAからのスペーサ獲得に関するcrisp_bio記事:2018-10-21 CRISPR RNAの生成とRNAスペーサ獲得の双方に関与するCas6を帯びたタイプⅢ CRISPR-Casシステムが存在する
2. ゲノムワイドCRISPR-Cas9スクリーニングにより、癌変異抗原EGFRvIII発現グリオブラストーマ (GBM)にテモゾロミド(TMZ)耐性をもたらす責任遺伝子を同定
[出典] "Genome‐Wide CRISPR‐Cas9 Screening Identifies NF‐κB/E2F6 Responsible for EGFRvIII‐Associated Temozolomide Resistance in Glioblastoma" Huang K [..] Kang K. Adv Sci. 2019-09-04.
- 天津医科大学などの中国研究グループは今回、191種類の表題候補遺伝子を同定し、その中で、E2F6遺伝子がTMZ耐性をドライブし、その発現がEGFRvIII/AKT/NF‐κBパスウエイで制御されることを特定した。また、GBMモデルマウスにおいてE2F6がGBMの治療標的になり得ること、134名のGBM患者のRNA-seqからE2F6の発現レベルがTMZ応答の予測マーカたり得ること、を見出した。
3. CRISPR-Cas9 KOによりADSL欠損とSAICAR蓄積のモデル細胞crADSLを作出
[出典] "The CRISPR-Cas9 crADSL HeLa transcriptome: A first step in establishing a model for ADSL deficiency and SAICAR accumulation" Mazzarino RC [..] Vacano GN.
Mol Genet Metab Rep. 2019-09-04.
- ADSL (アデニロコハク酸リアーゼ)はde novoプリンヌクレオチド生合成経路 (DNPS)の重要な触媒酵素であり、その変異は治療法が存在しない多様な病態の先天性代謝異常をもたらす。また、近年ADSLの代謝基質であるSAICAR (スクシニルアミノイミダゾールカルボキシアミドリボース-5’-リン酸)が多彩な機能を担うことが明らかなり、ADSLの機能解析をより複雑になっている。
- University of DenverとCharles University and General University Hospital in Pragueの研究グループは、DHPSとADSLの研究資源としてHeLa細胞のADSLをCRISPR KOした細胞株を作出し、そのトランスクリプトームを野生型HeLa細胞とを比較する中で、SAICARがcrADSL細胞には蓄積するが野生型HeLa細胞には蓄積しないことを見出した。
4. CRISPR/Cas9でスプライシング制御因子を標的することで、iPSCsとマウスにおいて脊髄性筋萎縮 (spinal muscular atrophy: SMA)をレスキューする
[出典] "Disruption of splicing-regulatory elements using CRISPR/Cas9 rescues spinal muscular atrophy in human iPSCs and mice" Li JJ, Lin X, Tang C, Lu YQ, Hu X [..] Shi L, Yang H, Chen WJ. Natl Sci Rev. 2019-09-03.
- 福建医科大学と上海生物科学研究所の研究グループは、運動神経細胞生存(survival motor neuron: SMN)のエクソンに替えて、イントロンに存在しスプライシングを抑制するモチーフISS (intronic splicing silencer)をCRISPR/Cas9で標的し、SMA iPSCsにおいてエクソン7を含む全長SMNの発現を亢進した。また、ISSの一種であるISS-N1を標的とするsgRNAとSpCas9またはSaCas9をマウス受精卵に導入することで、SMAトランスジェニックマウス、Smn(-/-)とSMN2(tg/-)、をそれぞれ、56%と100%レスキューしたところ、生存期間中央値が400日以上伸びた。
5. Csa9がアヒルに髄膜炎、心膜炎、 肝周囲炎および気嚢炎を引き起こすグラム陰性菌R. anatipestiferの遺伝子発現と病原性を調節する
[出典] "Cas9 regulated gene expression and pathogenicity in Riemerella anatipestifer" Wang Y [..] Li Z. Microbial Pathogenesis. 2019-09-03.
- 華中農業大学の研究グループは、トランス・コンジュゲーション (trans-conjugation)により作出したRA-YMΔCas9 (変異株)と野生型RA-YM株を比較し、変異株では毒性が低下すること、脳への分布に有意な差異は見られないが、肝臓、心臓および血液への分布は有意に減少することを見出した。また、変異株の鼻腔内投与が野生株のチャレンジからアヒルの80%を保護することを見出し、変異株の粘膜ワクチンとしての可能性が示唆された。
6. [ビデオプロトコル] 窒素固定熱帯アサ科の木パラスポニア・アンダーソンニの形質転換、ゲノム編集およびフェノタイピング
[出典] "Transforming, Genome Editing and Phenotyping the Nitrogen-fixing Tropical Cannabaceae Tree Parasponia andersonii" Wardhani TAK, Roswanjaya YP, Dupin S, Li H, Linders S, Hartog M, Geurts R, van Zeijl A. J Vis Exp. 2019-08-18.
- アグロバクテリウムを介した安定した形質転換とCRISPR/Cas9によるゲノム編集を経て、トランスジェニック変異体を樹立し、遅くとも、4ヶ月後には共生に関わるフェノタイピングを可能にするプロトコル
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