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[出典] Off-target toxicity is a common mechanism of action of cancer drugs undergoing clinical trials. Lin A, Giuliano CJ [..] Sheltzer JM. Sci Transl Med. 2019-09-11.

 治験まで進んだ抗癌剤候補のほとんどが奏功性や毒性の評価基準を満たすことなく脱落してきたが、その原因の一端が明らかにされた。CSHLのJason M. Sheltzerが率いる研究グループは今回、抗癌剤の標的として想定されていたタンパク質をノックアウトしても、抗癌剤が適用癌細胞に対する細胞障害性を失わない事例が多々存在することを同定し、癌細胞障害性の作用機序が誤解されていることを例示した。研究グループはさらに、「誤解」されていた抗癌剤の中の一つについて、改めて真の標的タンパク質を特定し「誤解」を解くことが可能なことを示し、標的タンパク質を精密に特定する手法を創薬パイプラインの早期、前臨床試験、に導入すべきとした。

先行研究
抗癌剤標的タンパク質の必須性検証
  • 今回は、癌細胞に必須とされていた遺伝子とその産物であるタンパク質を標的として開発された抗癌剤の組み合わせから、耐性をもたらす遺伝子変異が同定されている抗癌剤を除いたセットを設定し、各遺伝子への癌細胞の依存性 (癌細胞必須性)を再評価した。
  • 抗癌剤開発の標的タンパク質 (以下、想定標的)はこれまで主として、RNAi実験と低分子による阻害実験の結果を参考に選択されてきたが、研究グループは、CRISPR competition [3]、CRISPRiおよびCRISPR KO実験によって癌細胞必須性を評価し、その結果、多くの遺伝子について癌細胞必須性が否定され、「誤解されていた」抗癌剤と標的タンパク質のリストが出来上がる結果となった。
  • 例えば、低分子の抗腫瘍性スクリーニングから見出されたPAC-1は、癌細胞においてカスパーゼ-3を活性化し癌細胞をアポトーシスに導くとして臨床試験が進行中であるが、PAC-1は、カスパーゼ-3をノックアウトした4種類の癌細胞に対しても変わらぬ細胞障害性を示した。同様に、臨床試験が進んでいるHDAC6阻害剤についても、想定標的のHDAC6をノックアウトしてもHDAC6阻害剤の癌細胞障害性が変わることはなかった。
真の標的同定
  • これまで、多くの抗癌剤の作用機序が生化学的解析と生物物理学的解析にもとづいて推定され、抗癌剤と標的の関係に関する遺伝学的解析がほとんど行われていないことから、抗癌剤に対する耐性をもたらす遺伝子変異を特定する手法を試みた。
  • モデルとして、PBK/TOPK (PDZ結合キナーゼ/T-LAK細胞由来プロテインキナーゼ)を阻害する抗癌剤として期待され前臨床試験が進んでいるOTS964を選択した。
  • ヒト結腸腺癌由来HCT116細胞株をOTS964致死濃度下で培養し、細胞死に至らず増殖したクローン12種類を得て、その全エクソームシーケンシング (WES)を行なった結果、これらOTS964耐性クローン全てが、サイクリン依存性タンパク質キナーゼ11 (CDK11)の活性部位に変異を帯びていることを発見した。
  • CRISPR遺伝子編集実験により、同定した変異がOTS964耐性に必要十分であり、CDK11の活性がヒト癌細胞の有糸分裂に必須であることを確認した。なお、OTS964耐性クローンは、パクリタキセルに対しては感受性を示した。
  • CDK11は第三者の先行研究において、すでに抗癌剤の標的タンパク質候補とされていたが [4]、今回、OTS964の真の標的がCDK11であり、OTS964をCDK11の初の阻害剤として同定するに至った。
[参考文献・記事] 
  1. CRISPR/Cas9 mutagenesis invalidates a putative cancer dependency targeted in on-going clinical trials. Lin A, Giuliano CJ, Sayles NM, Sheltzer JM. eLlife. 2017 Mar 24;6. pii: e24179.
  2. MELK expression correlates with tumor mitotic activity but is not required for cancer growth. Giuliano CJ, Lin A, Smith JC, Palladino AC, Sheltzer JM. eLife. 2018 Feb 8;7. pii: e32838.
  3. Discovery of cancer drug targets by CRISPR-Cas9 screening of protein domains. Shi J, Wang E, Milazzo JP, Wang Z, Kinney JB, Vakoc CR. Nat Biotechnol. 2015 Jun;33(6):661-7. Online 2015-05-11
  4. The emerging roles and therapeutic potential of cyclin-dependent kinase 11 (CDK11) in human cancer. Zhou Y, Shen JK, Hornicek FJ, Kan Q, Duan Z. Oncotarget. 2016 Jun 28;7(26):40846-40859.
  5. [IN DEPTH] CRISPR reveals some cancer drugs hit unexpected targets. Kaiser J. Science. 2019-09-13. 
  6. 2019-06-23 [ハイライト] CRISPR流 がん治療標的同定
[2019-09-14追記] 責任著者のJ. M. Sheltzerがツイッター上で、論文紹介に続いて、論文に対するコメントや質問に積極的に応答している
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