[出典] In vivo CRISPR screening in CD8 T cells with AAV–Sleeping Beauty hybrid vectors identifies membrane targets for improving immunotherapy for glioblastoma. Ye L, Park JJ, Dong MB [..] Chen S. Nat Biotechnol. 2019-09-23

 免疫チェックポイントを阻害する癌免疫療法は特定の癌や患者に対して著効を示すが、グリオブラストーマ (GBM)療法としては、抗PD-1抗体、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体、EGFR-vIII CRA-T、いずれも効果がない、重篤な副作用を伴う、あるいは延命効果がほとんど見られない、という治験結果に終わっている。Integrated Science & Technology Center/Yale University School of Medicineの研究グループは今回、CRISPRスクリーンによるGBM免疫療法の新たな標的分子の同定を目指した。

AAV-Sleeping beauty(SB)のハイブリッド・ベクター開発
  • 研究グループは、SBとランスポゾンとsgRNAのカセットをAAVに入れ子にしたハイブリッド・ベクターにより、Cas9βマウス[*]由来のCD8陽性初代T細胞ゲノムにsgRNAを効率的に導入し、ひいては、sgRNAによる変異型CD8陽性T細胞のプールをグリオブラストーマ (GBM)モデルマウスに移植する効率的なスクリー二ング系を確立した (原論文Fig.1-a参照)。
  • [*] "Cas9-expressing mouse line by crossing the Cre-dependent Cas9 mouse to a β-actin Cre driver" CRISPR-Cas9 Knockin Mice for Genome Editing and Cancer Modeling. Platt RJ [.] Zhang F. Cell 2014-10-09.
GBMモデルマウスにおける標的分子同定
  • CRISPRスクリーンの結果、Pdia3, Mgat5, Emp1またはLag3の遺伝子をノックアウトしたCD8陽性T細胞に移植によって、シンジェニックGBMマウスとトランスジェニックBMBマウスの寿命が延びることを見出した。
  • その機構として、バルクのmRNA-seq、scRNA-seq、サイトカイン・アッセイおよびTCRシグナル伝達解析により、Pdia3ノックアウトT細胞がエフェクターの機能を亢進することを同定した。
ヒト細胞における標的分子の評価
  • ヒトCD8陽性T細胞においてCas9-sgRNA RNPを介してPDIA3をノックアウトすることで、多くの免疫調節因子とエフェクターの細胞表面発現が改変されることを、CyTOF解析により、同定した。
  • この結果は、PDIA3の高発現とT細胞の機能不全の相関を示す臨床データとも整合した。さらに、PDIA3をノックアウトしたGFRvIII CAT-T細胞がその抗原認識を介して、より強力にGBM細胞を殺傷することも同定した。