[出典] Targeted isolation and cultivation of uncultivated bacteria by reverse genomics. Cross KL, Campbell JH [..] Podar M. Nat Biotechnol. 2019-09-30.

背景
  • 長年にわたりヒトをはじめとする生物から土壌をはじめとする環境までに、膨大な種類の微生物が生息するとされていたが、その多様性が近年、シングルセル・ゲノミクスとメタゲノミクスによってデータ化されてきた。
  • 一方で、殆どの微生物種が分離培養困難なために、個々の微生物種の機能解析および全ゲノムシーケンシングは遅々として進んでいない。
  • Oak Ridge National Laboratoryを主とする研究グループは今回、逆遺伝学に則って、狙った微生物種を分離培養可能とする手法を開発した。
逆遺伝学に基づく分離培養法 (原論文Fig. 1参照)
  1. SAGs (single-cell amplified genomes)と MAGs (metagenome-assembled genomes)から膜タンパク質をコードする遺伝子を同定し、エピトープを選択し、ウサギからそのIgG抗体を得て、蛍光標識する。
  2. この蛍光IgG抗体を利用して、サンプルからFACSにより、標的微生物細胞を分離する。
  3. 標的微生物細胞の培養を、多様な液体培地および固形培地を試行し、最適な培地を選択あるいは作出する。
実証
  • 今回の標的は、環境由来の16S rRNA配列に基づいて'candidate phylum'の一種として定義されたCandidate division TM7 (Saccharibacteria)に属するヒト口腔細菌であり、口腔細菌の1%未満とされこれまで未培養であった。
  • 健常人と歯周炎患者からの唾液と歯肉下液から、3種類の菌株の分離と、嫌気性・低酸素条件の培の試行を経て純粋培養を実現し、シングルセル・シーケンシング解析などを経て、多様なアクチノバクテリアのエピビオント (epibionts)であることを同定した。
  • また、未培養分類群であったCandidate division SR1についてもヒト口腔細菌の分離純粋培養に成功した。
  • こうして、任意の環境から任意の微生物株を分離・純粋培養する道が拓けた。