(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/12/30)
- Corresponding author: Roderick MacKinnon (Rockefeller U.)
- 2003年ノーベル化学賞共同受賞者の一人であるMacKinnonらは今回、クライオ電顕単粒子再構成法によって、ウシのCLCチャネル(CLC-K)の構造を明らかにした。
- [背景]
- CLCタンパク質は塩素イオンなどのアニオンを膜輸送し、真核生物において筋肉の膜電位、腎臓における電解質の経上皮輸送、および細胞内小器官のpHとイオン組成を制御し、CLCをコードする遺伝子の変異は重篤な遺伝病をもたらす。
- CLCタンパク質は、機能から見ると、Cl-チャネルと、Cl-/H+トランスポーター(2Cl-と1H+を交換する二次性能動輸送体)の2つのサブグループに分かれ、Cl-輸送速度も、チャネルの方がトランスポーターよりも早いという違いが存在する。しかし、アミノ酸配列からみると、チャネルとトランスポーターの相同性が極めて高く構造の同一性が示唆されていた。
- CLCタンパク質はホモ二量体を形成しそれぞれに輸送経路が存在し(参考図1参照)、バクテリアと真核藻類由来のCLC トランスポーターでは、輸送経路に3箇所のCl-結合サイト(参考図2のSext、Scen、およびSint)が同定されている。
- SextとScenのサイトを囲むアミノ酸は、それぞれ、ゲートとなるグルタミン酸(Glugate)と、チロシンとセリン(TyrcenとSercen)であるが、これらは、トランスポーターとチャネルの間で保存されている。ここでも、トランスポーターとチャネルの機能の違いをもたらす構造基盤の手がかりが得られていない。
- ウシCLC-Kチャネルのクライオ電顕単粒子再構成は、トランスポーター似た構造(Class 1)と、異なる構造(Class 2)が存在し、両者の違いは、二量体を構成する2つのサブユニットの膜貫通ドメインの傾きの変化に対応していることが明らかになった。CLC-KチャネルClass-1とCLCトランスポーターの全体構造は類似しており、両者の構造のRMSDは1.5〜1.8 Åであった。
- CLCチャネルとCLCトランスポーターの構造の違いは、膜貫通ヘリックスのαCとαDをつなぎSercenを含むサイトゾル・ループ(αC-D)にあった。CLC-KにおいてはαC-Dのループが塩素イオンの輸送経路のサイトゾルでの狭窄を広げるような形状をとることで、Cl-/H+トランスポーターに仮定されているCl-の輸送障害が減じ、CLCチャネルによるCl-の高速輸送が実現しているモデルを提案。
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