# crisp_bio注:2019-10-09に体細胞角移植の誤字を体細胞核移植に修正。
[出典] Genomic and phenotypic analyses of six offspring of a genome-edited hornless bull. Young AE [..] Van Eenennaam AL. Nat Biotechnol. 2019-10-07.
[出典] Genomic and phenotypic analyses of six offspring of a genome-edited hornless bull. Young AE [..] Van Eenennaam AL. Nat Biotechnol. 2019-10-07.
背景
- 乳牛と肉牛の飼育にあたって、牛同士の保護と飼育者の安全のために、除角が行われるが、動物愛護の観点から除角に変えて、無角の牛を育種によって増やす努力がされている。米国では肉牛のアンガス種で無角化が進んでいるが、乳牛の場合は乳量を維持しながらの選抜と交雑による無角化が進んでいない。
- 米国では2016年まで毎年肉牛の~25%乳牛の~80%が除角されていた。当時、Recombinetics、University of MinnesotaならびにTexas A&M Universityの研究チームは無角化の遺伝子Pc Celtic POLLEDを同定し、TALENによるHDRと体細胞核移植によるクローニングを経て、ホモ型Pc Celtic POLLED遺伝子を帯びた雄牛(bull)、RCI-001、RCI-002 (Spotigy)とRCI-003 (Buri)、およびヘテロ型のRCI-004を作出した [*]。
- [*] Production of hornless dairy cattle from genome-edited cell lines. Carlson DF [..] Fahrenkrug SC. Nat Biotechnol. 2016-05-06.
成果
- UC DavisとU Mansoura (Egypt)の研究チームはSpotigyと有角 (pp)の雌を交雑し、6頭のヘテロ型 (PcP)の仔牛を得たが、いずれも無角であり、それ以外の"異常"は見られなかった。
- 親と仔のゲノムをHiSeq4000により~20xの深さでシーケンシングした。その結果、Spotigyは、Pc Celtic POLLEDアレルとPc Celtic POLLEDにゲノム編集に利用したHDRドナープラスミドが加わったアレルからなる複合ヘテロ接合体であることが判明し、また、仔牛の4頭が複合ヘテロ接合体であることを同定した。
- 複合ヘテロ接合体は、外来遺伝子 (プラスミド/微生物ゲノム断片)を含むことから定義上GMOとなる。そこで、Pc -pのヘテロ接合体の2頭を選別していくことになる。
FDAのガイドラインとの関係
- FDAは2017年のドラフトガイダンス#187で、「意図的な動物ゲノム改変」を「new animal drug」と位置付け、ゲノムの改変について、オフターゲット編集や意図しない挿入・置換・欠失を伴わないことや、目的とした形質が少なくとも2世代にわたり継承されることを求めている。
- 今回の研究は、現実的な規制を検討していく上で参考になるデータを提供する。継代実験で言えば、今回は、2015年4月に産まれたSpotigyに始まり、それから4年後にF1世代のデータを得、雌の仔牛が妊娠し2020年に乳を得られる予定である。家畜を対象とする多世代の検証は莫大な経費を要することから、このままでは、公共セクタや小規模な企業での研究開発が進まないであろう。
関連ツイート引用:
CRISP_SCIENCE@ScienceCrispSemen from a genome-edited(*) polled bull (RCI002) was collected, ....
2019/10/08 13:22:02
(*) TALEN https://t.co/lbZ42HW8oF
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