(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ2016/12/30

  • Corresponding authors: Cyrus M. Ghajar (Fred Hutchinson Cancer Research Center); Mina J. Bissell (Lawrence Berkeley National Laboratory)
  • 癌進行と転移のモデルは、原発部位で徐々に遺伝的変異を蓄積しつつ癌細胞が増殖していくなかで、転移能を獲得した播種性癌細胞(disseminated cancer cells: DCCs)が、他の部位・組織へ移行し定着・増殖する、という直線状のモデルであった。一方で、ヒト乳癌で、DCCsにおける遺伝的変異が原発癌細胞における遺伝的変異よりも少ないというデータや、’非侵襲性’乳癌患者の20〜30%の骨髄にDCCsが存在するというデータが、示されてきた。さらに、Her2 の過剰発現による乳癌モデルマウスにおいて、Her2 の発現が始まった直後で乳腺における癌性変異が電子顕微鏡を利用することではじめて検出可能になるステージである4週齢で骨髄にDCCsが検出され、また、乳癌が触診可能になるには14週を要することが報告されていた。
  • 今回、Aguirre-GhisoとKleinらの共同研究チームは乳癌モデルマウスにおいて乳癌の極めて早期に癌細胞の播種が起こるとする論文2報をNature 12月22日号(12月14日オンライン刊行)に発表した。
    • [Hosseini論文] 9週齢に達する前で乳癌が触診にかからないマウス乳腺由来の上皮細胞の遺伝子発現を解析;プロゲステロン(progesterone)がプロゲステロン受容体(PGR)を発現する細胞(PGR+)にWNT4とRANKLタンパク質の分泌を促し、ひいては、PGR+近傍のPGR-細胞に転移を促し、骨髄細胞に早期 (early)DCCsとして浸潤することを見出した。
    • [Harper論文] WNTシグナル伝達の亢進によってp38タンパク質が阻害されることで、早期癌の細胞がDCCsとして骨髄細胞へ浸潤することを見出した。
    • いずれの報告においても、原発癌早期由来のDCCsは、後期由来DCCsよりも、骨髄細胞において効率良く転移癌を形成した。
  • Nature 掲載論文