[出典] The pan-immune system of bacteria: antiviral defence as a community resource. Bernheim A, Sorek R. Nat Rev Microbiol. 2019-11-06.

 Weizmann Institute of Scienceの著者らは表題のpan-immune systemモデルを提唱した。
  • 背景:微生物株はしばしば防衛システムを複数備えているが、全ての防衛システムを備えている菌株は存在しない。微生物株は、近縁の菌株から遺伝子水平伝播を介して新たな防衛システムを獲得して適応度を向上させつつ、一連の防衛システムを維持していく適応コストが耐えられないほど重くなると一部の防衛システムを喪失する。
  • 多様な防衛システム:制限修飾系、CRISPR-Cas獲得免疫、化学防御、不稔感染 (Abi: abortive infection)、細胞内シグナル伝達を介した防衛 (タイプIII CRISPR–Cas system; CBASS (cyclic oligonucleotide-based anti-phage signalling system)の各システム、および、分子機構が不明な防衛システム (全体像の図 Fig. 1 に)
  • 'defense islands':微生物ゲノムに、一連の防衛システムが集中している領域が存在する (Box 1参照)
  • 多重防衛システムの必要性Fig. 2、E. coliP. aeruginosaのそれぞれの菌株に存在する17種類の防衛システムの分布図
  • 防衛システムの獲得と喪失:遺伝子水平伝播、自己免疫応答、適応コストの観点から議論
  • バクテリア集団の共有資源としての汎・免疫システム:CRISPR-Casシステムを主な事例として議論 (Fig. 3 に、汎・免疫システムのモデル図)
  • ウイルスのカウンター:ウイルスゲノムの'冗長'な遺伝子群が、バクテリアの新たな防衛システムに備えているモデル
  • 今後の課題と期待:同一ゲノム内に共存可能な防衛システムの種類に上限が有るのか?(DNA修復過程とCRISPR-Casサブシステムの間で依存性と排他性が知られている [1-2]; 防衛システムの品揃えと、バクテリア・ゲノム、環境条件、感染履歴その他の生活歴との相関解析);多様な防衛システムはエピスタシスな関係にあるのか? (CRISPR-CasとR-Mシステムは協働することが知られているが [3]、その他の防衛システムについては?);汎・免疫システムモデルは、薬剤耐性菌対策として脚光を浴び始めたファージ・カクテル療法の研究開発の基盤
[参考記事と文献]
  1. crisp_bio 2017-12-15 バクテリアではタイプ II-A CRISPR-CasシステムがDSBのNHEJ修復を阻害する
  2. A matter of background: DNA repair pathways as a possible cause for the sparse distribution of CRISPR-Cas systems in bacteria. Bernheim A, Bikard D, Touchon M, Rocha EPC. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2019-05-13
  3. CRISPR–Cas and restriction-modification systems are compatible and increase phage resistance. Dupuis MÈ, Villion M, Magadán AH, Moineau S. Nat Commun. 2013-07-02