(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2017/01/01)
- Corresponding author: Edward N. Baker (U. Auckland); Wladek Minora (U. Virginia); John R. Helliwell (U. Manchester)
- 国際結晶学連合(International Union of Crystallography)のオープンアクセス・査読付きジャーナル IUCrJ 2007年1月号のeditorial, scientific commentariesならびにtopical reviewsでデータ共有について論考がなされている。
- 公的資金による研究の成果を公開することはオープンサイエンス(Open Science)においてなすべきことの一つであるが、本来、科学そのものの進歩が、その成果である概念が広く共有されることにかかっている。オープンアクセスジャーナルはその実現手段の一つであるが、同時に、裏付けとなる実験データが公開・共有されることが重要である。
- 結晶学においては、先人の先見の明と努力により、wwPDBを介して直接・間接に、120,000の高分子結晶構造、11,000のNMR構造および1100クライオ電顕構造をアクセス可能になっている。しかし、科学は立ち止まることはない。新たなタイプのデータへの対応に備える必要が有る。
- 一次データ(raw crystallographic data(*))については、これまでに各研究室や各加速器施設に蓄積されてきたデータからはじまり、現在から将来にわたり生産されるデータの共有を図る試みが始まっており、SBGridには295データセットが、The Integrated Resource for Reproducibility in Macromolecular Crystallography (IRRMC) には6,053データセットが蓄積されている。
(*) raw crystallographic data = the sets of X-ray diffraction images used to derive the structure-factor files and atomic coordinates. - 今や計算機資源はraw crystallographic data蓄積に対応可能なレベルに達しており、raw dataの共有ひいては再利用を促進するためには、メタデータの整備と、生データ囲い込みのメンタリティーを打破していくことが必要である。
- "Topical review"は、2015年にCroatiaで開催されたIUCrワークショップ"Metadata for raw data from X-ray diffraction and other structural techniques"での議論とその後の反響を受けてとりまとめられた報告である。また同レビューは、世界結晶年と定められた2014年からの流れを受けて、広い意味で納税者/一般人(layperson)の間で結晶学が広く理解されることを期待している。例えば、'Big Data'の宿題を与えられた生徒・学生が"結晶学"を題材に取り上げ、あるいは政治家の”結晶学”への関心を高めるなど。
Scientific commentaries→Marek Grabowski & Wladek Minor. “Sharing Big Data.” IUCrJ. 2017 Junuary;4(1):3-4.
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