2024-04-27 CASGEVY™の第3相試験からの報告2報がNEJM 誌から出版された:
  1. "Exagamglogene Autotemcel for Severe Sickle Cell Disease" CLIMB SCD-121 Study Group. N Engl J Med. 2024-04-24;NCT03745287 ; 鎌状赤血球症患者の97%において、12ヵ月以上にわたって血管閉塞が消失した。
  2. "Exagamglogene Autotemcel for Transfusion-Dependent β-Thalassemia" CLIMB THAL-111 Study Group. N Engl J Med. 2024-04-24;NCT03655678;骨髄摘出術に先行してエクサセルを投与したところ、輸血依存性βサラセミア患者の91%で輸血が中止された。
  3. [補足] Vertex Pharmaceuticals, CRISPR Therapeuticsの研究チームがCASGEVY™ (exa-cel)におけるCRISPR-Cas9のオフターゲット編集について詳細に検討した結果を投稿:CORRESPONDENCE "Specificity of CRISPR-Cas9 Editing in Exagamglogene Autotemcel" Yen A, Zappala Z, Fine RS, Majarian TD, Sripakdeevong P, Altshuler D. N Engl J Med. 2024-04-24.  [所属] Vertex Pharmaceuticals, CRISPR Therapeutics
2024-02-17 欧州委員会 (EC) も, CASGEVY™ を鎌状赤血球症および輸血依存性βサラセミア治療薬として承認 (Vertexプレス発表 2023-02-13. https://news.vrtx.com/news-releases/news-release-details/european-commission-approves-first-crisprcas9-gene-edited)

2024-01-19
米国FDAも、CASGEVYをβサラセミア治療薬として承認 (鎌状赤血球症治療薬としては2023年12月に承認): "Vertex Announces US FDA Approval of CASGEVY™ (exagamglogene autotemcel) for the Treatment of Transfusion-Dependent Beta Thalassemia" Business Wire 2024-01-17. https://www.morningstar.com/news/business-wire/20240116502203/vertex-announces-us-fda-approval-of-casgevy-exagamglogene-autotemcel-for-the-treatment-of-transfusion-dependent-beta-thalassemia

2023-12-15 
Vertex PharmaceuticalsはEditas MedicineにCas9の非独占的使用権料を支払うとの発表あり
[crisp_bio記事 "まだまだ続く特許係争 - "CRISPR-Cas9による真核細胞ゲノム編集"参照]

2023-12-09 英国に続き、米国FDA、12歳以上の鎌状赤血球症を対象とするCasgevyを承認
[出典] NEWS RELEASE "FDA Approves First Gene Therapies to Treat Patients with Sickle Cell Disease" FDA 2023-12-08. https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-gene-therapies-treat-patients-sickle-cell-disease

FDAはCASGEVYと同時に、Bluebird Bioが開発した鎌状赤血球症遺伝子治療薬LYFGENIAも承認した。LYFGENIAは、CASGEVYと異なり、HbA<T87Q>を発現する遺伝子をレンチウイルスを介して送達するアプローチをとっている。

[注] ブログ記事タイトルを「鎌状赤血球症とβサラセミアのCRISPR/Cas9療法の治験, 前進」から「世界初のCRSIPR遺伝子治療承認 - CRISPR/Cas9による鎌状赤血球症とβサラセミアの治療」へと改訂

2023-11-25 Nature Biotechnology 誌のニュース記事紹介ブログ記事へのリンクを追記:2023-11-25 世界で初めて認可されたCRISPR療法を享受できるのは誰か?

2023-11-18 世界初のCRISPR遺伝子治療認可
 英国MHRA [*]が、CRISPR TherapeuticsVertex Pharmaceuticalsの提携から生まれたCRISPR/Cas9遺伝子編集療法である CASGEVY (exagamglogene autotemcel) による鎌状赤血球症 (SCD)と輸血依存性β-サラセミアの遺伝子治療 (12歳以上) を認可 した。CASGEVY™はVertex社が製造元でありVertex社の商標である。
[*] MHRA (Medicines and Healthcare products Regulatory Agency / 医薬品・医療製品規制庁)
[出典] Press release "MHRA authorises world-first gene therapy that aims to cure sickle-cell disease and transfusion-dependent β-thalassemia" MHRA. 2023-11-16. https://www.gov.uk/government/news/mhra-authorises-world-first-gene-therapy-that-aims-to-cure-sickle-cell-disease-and-transfusion-dependent-thalassemia

[CASGEVY™の投与方法]
  • CASGEVY™は、患者の骨髄から幹細胞を取り出し、実験室で細胞内の遺伝子を編集することによって投与される。その後、患者はコンディショニング治療を受け、骨髄の状態を整えてから、編集された細胞を再び患者に注入する。
  • 患者や、治療された細胞が骨髄に定着し、安定した形のヘモグロビンを持つ赤血球を作り始めるまで、少なくとも1ヵ月は病院の施設で過ごす必要があると見込まれている。
 [科学諮問委員会 (Commission on Human Medicines) による承認のベースとなった臨床試験の概要]
  • SCDを対象とした臨床試験では、現在45人の患者に投与されている中で、主要有効性中間解析の対象となるのに十分な期間投与された患者は29名であった。これらの適格患者のうち、28名 (97%)は治療後少なくとも12ヵ月間、重度の疼痛発作からフリーであった。 
  • 輸血依存性β-サラセミア患者を対象とした臨床試験では、現在54人の患者に投与されているが、主要有効性中間解析の対象となるのに十分な期間、試験に参加していたのは42人であった。このうち39名 (93%)は治療後少なくとも12ヵ月間赤血球輸血を必要としなかった。3名は赤血球輸血の必要性が70%以上減少した。 
  • 治療による副作用は、吐き気、疲労、発熱、感染症リスクの増加など、自家幹細胞移植に関連するものと同様であった。
  • 臨床試験中、安全性に関する重大な懸念は確認されなかった。
  • 試験は現在進行中であり、安全性については、MHRAと製造業者により引き続き注意深く監視されている。
 [最近の関連crisp_bio記事]
2023-06-17 プレス発表:2023 Annual European Hematology Association Congressにて、exa-celの臨床試験CLIMB-111 (βサラセミア)とCLIMB-121 (鎌状赤血球症)においてそれぞれ主要評価項目と副次的評価項目を満たしたと発表した [businesswire 2023-06-08 ]。また同日、FDAが重篤なSCD患者と輸血依存性βサラセミア患者を対象とするexa-celの生物製剤承認申請を受け付けたとプレス発表した [Businesswire 2023-06-08]
 
2022-06-13  exa-cell (exagamglogene autotemcel; 旧 CTX001)治験の進捗
[出典] NEWS “Patients With Longer Follow-Up Treated With exagamglogene autotemcel (exa-cel) at the 2022 European Hematology Association (EHA) CongressVertex 2022-06-11
 Vertex Pharmaceuticals IncorporatedとCRISPR Therapeuticsが,進行中の治験 (CLIMB-111,CLIMB-121,およびCLIMB-131)から、輸血依存性βサラセミア(TDT)患者 44人と血管閉塞性クリーゼ (VOC)の再発を特徴とする重症鎌状赤血球病(重症SCD)患者 31人にexa-cellを投与後1.2~37.2ヶ月追跡した結果を,第26回欧州血液学会議 (EHA 2021)にて報告した.
  • TDT患者44人のうち42人は,追跡調査期間中輸血することなく過ごせ,2名の患者では,輸血量が75%および89%減少した
  • 重症SCD患者(過去2年間のVOC発生回数は年間平均3.9回)31名全員において,追跡調査期間中VOCが発生しなかった.
  • 安全性は,ブスルファンによる骨髄破壊的治療と自家幹細胞移植に概ね一致し,exa-cellの注入後,すべての患者において好中球と血小板が生着した.
  • TDT患者のうち2人がexa-cellに関連すると考えられる重篤な有害事象(SAE)を経験したが,解消した.SCD患者にはSAEは発生しなかった.
Exagamglogene autotemcel (exa-cel)とは 
 Exa-celは,TDTまたは重症SCDの患者を対象に,患者自身の造血幹細胞に生体外でCRISPR/Cas9遺伝子編集を加え自家移植することで,赤血球中の胎児ヘモグロビン(HbF)を大量に生産させる治療法である.HbFは一般に出生後に成人型ヘモグロビンに切り替わるが,exa-celを介したHbFの上昇によってTDT患者の輸血の必要性を軽減し,SCD患者の苦痛や衰弱を緩和する可能性がある.進行中の試験の初期の結果はこの期待に沿っており,2021年1月にThe New England Journal of Medicineに掲載されていた.
 Exa-celはこれまでに、米国FDAからTDTとSCDの双方について,再生医療先進治療(RMAT),ファーストトラック,希少薬,希少小児疾病の指定を受け,また,ECからも希少疾病用医薬品に,欧州医薬品庁 (EMA)からはTDTとSCDの双方の優先的医薬品(PRIority MEdicine, PRIME)に指定されていた.
 
CLIMB-111,CLIMB-121,および,参加者登録を開始した2~11歳のTDTとSCDの患者を対象とするCLIMB-141またはCLIMB-151にて,exa-cellの投与を受けた患者を対象に,exa-cellの安全性および有効性を評価する長期 (最長で15年間)非盲検試験CLIMB-113が計画されている. 

2021-06-12 第26回欧州血液学会議 (EHA 2021)で,CTX001の有効性を報告
[出典] Press Release "Vertex and CRISPR Therapeutics Present New Data in 22 Patients With Greater Than 3 Months Follow-Up Post- Treatment With Investigational CRISPR/Cas9 Gene-Editing Therapy, CTX001TM at European Hematology Association Annual Meeting" CRISPR Theapeutics. 2021-06-11
 CTX001™を投与した患者22名 (追跡期間3ヶ月以上、4ヶ月から26ヶ月 )について、CTX001に対して一貫して持続的な応答を示す新たなデータを発表した。CTX001は、輸血依存性βサラセミア (transfusion-dependent beta thalassemia: TDT)および重症鎌状赤血球症(SCD)に対する単回治療法として、2つの第1/2相臨床試験が進行中である:
  • CLIMB-111臨床試験 https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03655678: TDT患者15名 (β0/β0またはその他の重度の遺伝子型を持つ6名を含む)は,最終フォローアップ時に輸血を受けていない.
  • CLIMB-121臨床試験 https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03745287: 重度のSCD患者7名は、CTX001の注入から最終フォローアップまで血管閉塞クライシス (VOC)を発症していない.
  • TDT患者5名とSCD患者2名については1年以上フォローアップしているが,その間,CTX001治療に対する安定した反応が持続していた.
2021-04-27 欧州医薬品庁 (EMA), CTX001™ を輸血依存性βサラセミア治療薬 (Transfusion-Dependent Beta Thalassemia: TDT)としてPRIME (PRIority MEdicines)プログラムに指定
[出典] "Vertex and CRISPR Therapeutics Announce Priority Medicines (PRIME) Designation Granted by the European Medicines Agency to CTX001™ for Transfusion-Dependent Beta Thalassemia" CRISPR Therapeutics 2021-04-26 03:80 ET. https://www.globenewswire.com/news-release/2021/04/26/2216841/0/en/Vertex-and-CRISPR-Therapeutics-Announce-Priority-Medicines-PRIME-Designation-Granted-by-the-European-Medicines-Agency-to-CTX001-for-Transfusion-Dependent-Beta-Thalassemia.html
 CTX001™ はこれまでに,EMAから鎌状赤血球症 (SCD)とTDTの治療薬としてオーファンドラッグ (希少疾病用医薬品)に指定され,SCD治療薬としてPRIMEに指定されていた.また,米国FDAからは,SCDおよびTDTの治療薬として,再生医療先端治療(Regenerative Medicine Advanced Therapy: RMAT),ファスト・トラック,オーファンドラッグ,およびRare Pediatric Disease Disease (希少小児疾患治療)指定されていた.
[注] PRIMEは,アンメット・メディカル・ニーズ [https://answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/704/]に大きく応える可能性を示した革新的な治療法をできるだけ早く患者に提供することを目的として,開発者を支援するプログラムである.
2020-12-06 付記 NEJM 2020-12-05論文と2020年12月開催の米国血液学会議での発表紹介記事へのリンクを追加: crisp_bio 2020-12-06 鎌形赤血球症 (SCD)とβ-サラセミアのCRISPR療法CTX001の治験, 進捗
2020-06-12 CRISPR ThrapeuticsとVertex 第25回欧州血液学会会議で、CTX001の治験の成果を発表; 投稿タイトルを"....「安全かつ効用」の第一歩を踏み出した"から"....前進"に改訂
  • βサラセミア患者2名について、CTX001を1回投与後、それぞれ15ヶ月または5ヶ月経過したところで、ヘモグロビンが正常レベルに達し (その大半は胎児型ヘモグロビン)、輸血不要の状態が続いている。
  • SCD患者もCTX001を1回投与後、ヘモグロビンレベルが正常に達し(46%が胎児型ヘモグロビン)、血流閉塞に伴う疼痛から解放されている
  • 3名の被験者にCTX001に起因する重篤な副作用は見られず、肺炎と気道感染症が見られたが治癒した。
2019/11/20 初稿
[出典] [NEWS] First CRISPR treatment for blood diseases shows early benefits in two patients. BEGLEY S. STAT News. 2019-11-19; [Press Release] CRISPR Therapeutics and Vertex Announce Positive Safety and Efficacy Data From First Two Patients Treated With Investigational CRISPR/Cas9 Gene-Editing Therapy CTX001® for Severe Hemoglobinopathies. CRISPR Therapeutics. 2019-11-19.
[crisp_bio 2019-12-08追記] [NEWS] CRISPR’s “magnificent moment” in the clinic. Zipkin M. Nature. 2019-12-06

 CRISPR TherapeuticsとVertexが開発してきたCRISPR/Cas9遺伝子治療 CTX001は、鎌状赤血球症 (SCD)やβサラセミアを、病因であるHBB遺伝子の修復ではなく、患者由来CD34陽性造血幹細胞・前駆細胞 (HSPCs)をex vivoでCRISPR/Cas9で編集した細胞 (以下、CTX001細胞)を患者に戻すことで、生後1ヶ月を過ぎると発現が止まる胎児型ヘモグロビンの発現を誘導する遺伝子治療である (本段落は、「CRISPRメモ_2018/09/03  [第1項] VertexとCRISPR Therapeutics、CTX001®の治験をドイツで開始」から再録一部改訂)
 両社は2019年11月19日に「SCD (NCT03745287)とβサラセミア (NCT03655678)の患者を対象とするCTX001®第1/2相試験から、それぞれ1名の患者において、安全性と効用が確認された」と発表した
  • 患者にブスルファンを処方して病因変異を帯びている骨髄細胞を抹消した後に、胎児型ヘモグロビンを生産するようにCRISPR/Cas9で改変したCTX001細胞を投与したところ、CTX001細胞が骨髄に定着することを確認した。
  • ドイツで治験に参加したβサラセミア患者では、治療開始後9ヶ月の段階で全ヘモグロビンの量がほぼ正常レベル (11.9 g/dL )に達しその99.8%が胎児型であり、年間~16回程度必要であったの輸血を必要としない状態にまで至った。副作用はブスルファン投与に伴う肺炎、白血球レベル低下および肝臓の肥大と黄疸が見られたが、これらは治癒し、また、CTX001がその原因ではなかった。
  • 2019年半ばに米国で治験を開始したSCD患者は4ヶ月経過したところで、血管閉塞性の症状から解放された (これまでは、年に7回血管閉塞性症にの対症療法を受けてきた)。SCD患者の場合も、全ヘモグロビン量がほぼ正常レベル (1.3 g/dL)に達し、胎児型ヘモグロビンが25-30%を占めればSCDが治癒するとされているところ、その47%を胎児型ヘモグロビンが占め、また、赤血球の94.7%が胎児型ヘモグロビンを発現していた。副作用は、ブスルファン投与に伴う敗血症、胆石および 腹痛に留まり、治癒した。
[ヘモグロビン異常症の遺伝子治療関連crisp_bio記事とプレスリリース]