[出典] Analysis of short tandem repeat expansions and their methylation state with nanopore sequencing. Giesselmann P, Brändl B [..] Müller  FJ. Nat Biotechnol. 2019-11-18; [News] DNA repeats – the genome's dark matter - First direct analysis of pathogenic sequence repeats in the human genome. Max-Planck-Gesellschaft. 2019-11-19.

背景
 STRs (ショート・タンデム・リピート)の伸長は神経精神疾患をはじめとする疾患の病因変異である。その中で、C9orf72遺伝子に存在する(GGGGCC)リピート伸長が病因である前頭側頭型認知症 (FTD)と筋萎縮性側索硬化症 (ALS)、ならびに、FMR1遺伝子に存在する (CGG)リピートの伸長が病因である脆弱X症候群において、個人間ばかりでなく一個人内にも見られるリピート伸長の変動と、DNAメチル化の局在的変動とが、疾患の表現型に影響を与えることが知られてきた。

成果
 Max Planck Institute for Molecular Geneticsを主とする研究グループは今回、(1) ナノポアシーケンスの生データ (イオン電流シグナル)からSTRの検出と正確な定量を可能とするアルゴリズムを開発し、(2) CRISPR-Cas (Cas12aとCas9)により増幅を経ることなく標的領域を2桁以上エンリッチメントする技術 (原論文 Fig. 2 参照)、および、(3) SRT同定と同一アレルにおけるSTR領域と隣接領域のCpGメチル化の解析 (原論文 Fig. 3 参照)と組み合わせて、これまで困難であったSTRs伸長の同定と解析を可能にした。
 新たに開発したアルゴリズムは、short tandem repeat identification, quantification and evaluationになぞらえてSTRique (原論文 Fig. 1 参照)と命名して、GitHub Webサイトから公開し、また、メチル化解析を組み合わせる解析手法を'methylation-aware STRique'と称した。
 'methylation-aware STRique'によって、驚くべきことに、伸長の長さや5′CpGアイランド (CGI)プロモータのメチル化状態にかかわらず、患者由来のC9orf72 STRをカバーする全てのリードにおいて、殆どまたは全くGpGメチル化が存在しないことを、同定した。
 CRISPR-CasによるエンリッチメントとSTRiqueによるSTR判定は正確であるだけでなく、これまでのサザンブロッティングに基づく判定では3日間を要していたところ、1日 (~16時間)で完了する (原論文 Supplementary Figure 2 参照)ことからも、STRsの研究およびSTRs伸長に由来する疾患の診断に有用である。