[出典] Immediate, multiplexed and sequential genome engineering facilitated by CRISPR/Cas9 in Saccharomyces cerevisiae. Li ZH [..] Liu M, Wang FQ, Wei DZ. 
J Ind Microbiol Biotechnol. 2019-11-25. 
 華東理工大学に新合新生物医药集团 (Hunan Norchem Pharmaceutical Co., Ltd)が加わった研究グループが今回開発したCas-3Pは、Cas9を発現するプラスミド (pCas9)一種類と、gRNA発現を担う異なる選択マーカ付き直鎖状のプラスミドバックボーン3種類 (P1, P2およびP3)を組み合わせることで、S. cerevisiaeにおいて、多重かつ連続した遺伝子ターゲッティングを実現した。
  • P1/P2/P3のセットには遺伝子ターゲッティングを終えたプラスミドを除去する仕組みを予め組み込んでおく。すなわち、P1, P2およびP3には、プラスミド除去の標的になる部位 (CS1, CS2およびCS3)を組み込み、同時に、それらを標的とするgRNA_CS1、gRNA_CS2およびgRNA_CS3を、P2、P3およびP1に組み込んでおく。
  • こうすることで、Cas9を予め発現させた細胞に、異なるgRNAとドナーDNAのカセットを順次3種類のプラスミドバックボーンと共にP1 -> P2 -> P3の順に送達するサイクルを経て、gRNAを帯びたプラスミドの構築やgRNAプラスミドの除去操作を繰り返すことなく、多重な遺伝子ターゲッティングを連続させていくことが可能になった。
  • Cas-3Pの実証実験の中では、α-ガラクトシダーゼ遺伝子の挿入とβ-カロテン合成経路構築を実現し、さらに、パチョロールの生産最適化を、プロモータの置換、3種類の遺伝子の過剰発現および4遺伝子のノックアウトにより実現した。
  • Cas-3Pによる単一、二重および三重の遺伝子ターゲッティングの効率はそれぞれ3〜4日間で75%, 36.8%および8.2%に達し、パチョロールの生産最適化は10日以内で達成された。
  • 以上、Cas-3PはS. cerevisiaeのセルファクトリ化を促進するツールである。