1. バイオミネラリゼーションを介したCRISPR/Cas9 RNPナノ粒子 (Bm-RNPs NPs)のデリバリーによる遺伝子編集
[出典] Biomimetic mineralization-based CRISPR/Cas9 ribonucleoproteins nanoparticles for gene editing. Li S [..] Han H. ACS Appl Mater Interfaces. 2019-11-27
 著者らは、in situでのRNPのバイオミネラリゼーションが可能であることを見出し、Bm-RNPs NPsをプロトプラスト細胞にデリバーすることで、イネいもち病菌Magnaporthe oryzaeのscytalone dehydratase (SDH)遺伝子の編集を実現した。

2. ABEによる開始コドン変異誘導を介して効果的な遺伝子サイレンシングを実現
[出典] Efficient Gene Silencing by Adenine Base Editor Mediated Start Codon Mutation. Wang X, Liu Z, Dang L [..] Zhou F, Ma X. Molecular Therapy. 2019-11-28
 先行研究から、CBE (C-to-T)を介して遺伝子の読み枠内にSTOPコドンを誘導することで、二本鎖DNA切断を介さずに、遺伝子ノックアウトを実現するツールが報告されている (CRISPR-STOP; i-STOP)。
 華南師範大学 、東呉大学、上海科技大学などの中国研究グループは今回、表題のように、CBEよりもオフターゲット編集が抑制されているABEを介して開始コドンのATGをGTGまたはAGGへ変異させることで高効率で高精度な遺伝子サイレンシング (遺伝子ノックアウト)を実現し、induce gene silencing (i-Silence)として発表した。
3. RCasFISH: CRISPR/dCas9を介した固定細胞/組織 in situでのmRNAの高速で高感度な可視化を実現
[出典] RCasFISH: CRISPR/dCas9-mediated In Situ imaging of mRNA transcripts in fixed cells and tissues. Wang M, Chen K, Wu Q, Peng R, Zhang R, Li J. Anal Chem. 2019-11-29
 著者らはCRISPR/dCas9-MS2をベースにした可視化システムを開発し、固定細胞およびフォルマリン固定またはパラフィン包埋組織における1.5時間程度での1分子レベルの分解能でのmRNAの可視化と定量化を実現した。 RCasFISHの性能を乳癌患者由来パラフィン包埋組織断片におけるHER2  mRNA分子の定量で実証した。
 [dCas9を利用した可視化ツール関連crisp_bio記事]

4. [レビュー] Casヌクレアーゼ、Cas改変体、および、塩基編集 (BEs)による植物ゲノム編集の最新動向
[出典] [REVIEW] CRISPR-Cas nucleases and base editors for plant genome editing. Gürel  F, Zhang Y, Sretenovic S, Qi Y. aBIOTECH. 2019-11-30
  • 図1にCasヌクレアーゼに対応するDNA DSBの修復パスウエイと、BEに対応するDNAミスマッチとニック修復パスウエイのモデル図
  • 図2にCas9オーソログと変異体と、Cas12aオーソログと変異体の一覧 (テキスト中でCas12bについても記述)
  • 表1にBEsによる植物ゲノム編集例の一覧
5. セルロース分解性好熱菌C. thermocellumの内在タイプI-BシステムとG. stearothermophilus由来タイプII Cas9システムによるC. thermocellum遺伝子編集
[出典] Development of both type I–B and type II CRISPR/Cas genome editing systems in the cellulolytic bacterium Clostridium thermocellum. Walker JE [..] Olson DG, Eckert CA. Metab Eng Commun. 2019-11-28
 University of Colorado、Oak Ridge National Laboratoryなどの米国研究グループは、C. thermocellum内在システムに加えて、他の3種類の好熱菌由来Cas9のC. thermocellumでの活性評価に基づいて、G. stearothermophilus Cas9 (GeoCas9)を選択し、内在と外来の2種類のCRISPR-CasシステムとテンプレートによるHDRを介して、pyrFへのナンセンス変異導入を試み、Acidithiobacillus caldus由来の好熱性リコンビナーゼを併用することで、HDR効率の改善を実現した (タイプI-Bの場合は40%から71%へ、GeoCas9の場合は、12.5%から94%へ)。