crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] Medical relevance of common protein-altering variants in GPCR genes across 337,205 individuals in the UK Biobank study. DeBoever C, Venkatakrishnan AJ, Paggi JM [..] Dror R, Rivas MA. bioRxiv. 2019-12-15.
 GPCRsは、重要な生理機能を担い、FDA承認薬のほぼ3分の1の標的分子とされ、変異のマッピングも進んでいる。課題は、遺伝変異と表現型変異および疾患の間の相関関係の同定であり、遺伝変異が機能に影響を及ぼす分子機構の解明である。Stanford Universityに Université de Montréalが加わった研究グループは今回、GPCRsの遺伝変異とフェノタイプの変異との相関を、GWASとは対照的なフェノムワイド関連研究 (phenome-wide association: PheWAS) [1]の手法で探った。
 英国国勢調査での分類であるwhite British337,205名の英国Biobank [2]からのデータを元に、156種類のGPCRsにおけるありふれた (common;  MAF > 1%)269種類のミスセンス変異および短縮型変異の相関を、275種類のフェノタイプへとマッピングし、既知と新奇の相関138種類を同定した。5種類はバイナリー・フェノタイプとの相関であり、133種類が定量的形質との相関であった。偽発見率 (FDR) は5%であった [crisp_bio注: 以下に同定された相関を例示する]
  • Mas関連GPCR (Mrgpr)ファミリーのメンバーであり痛覚に関与するMRGPREの遺伝変異 rs12295710が、偏頭痛と相関
  • CX3CR1 [3]の結合ポケットに位置するrs3732378と、甲状腺機能低下症との相関
  • これまで機能不明であった5種類のオーファンGPCRsと量的形質との相関同定:単球数および比率と相関するGPR35の既知および新奇遺伝変異が含む
  • 苦味受容体として知られているTAS2R38の変異と、自己申告に基づく紅茶やコーヒーの摂取との相関
  • ADRB2の変異体に関して、最も高頻度なハプロタイプに対して異なるシグナル伝達を誘導する2種類のハプロタイプの同定
[参考記事]
  1. crisp_bio 2017-08-16 遺伝型と表現型の相関を同定する新たな手法PheWAS (phenome-wide association) の展開
  2. crisp_bio 2019-01-08 英国500,000人のバイオデータ公開のインパクト
  3. 抗フラクタルカイン抗体による関節リウマチ治療の可能性. 今井俊夫、久保井良和. 臨床リウマチ. 2019 年 31 巻 2 号 p. 169-177.
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット