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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] Evolutionary classification of CRISPR–Cas systems: a burst of class 2 and derived variants. Makarova KS, Wolf Y [..] Koonin EV. Nat Rev Microbiol. 2019-12-19

 CRISPR-Casとcas遺伝子の進化的分類体系は、2015年版 [1]の2クラス/5タイプ/16サブタイプから、2019年版は2クラス/6タイプ/33サブタイプへと、拡大した。注目点は3つ:
  1. クラス2CRISPR-Casシステムの探索と検証が進み、RNAを標的とするタイプVIと、タイプVの新たなサブタイプが発見された。タイプVは、トランスポゾンにコードされたTnpBヌクレアーゼから繰り返し進化し、新たなサブタイプを形成するであろう多数のバリアントを伴うことが示された。
  2. ヌクレアーゼ活性を欠き獲得免疫応答とは異なる機能を帯びていると思われるバリアントが発見された。その中には、タイプIV、タイプIおよびタイプVが含まれており、多くは可動遺伝要素 (MGE)にコードされていた。これらのバリアントのうち、Tn7様トランスポゾンにコードされたCRISPR-Casバリアントが、crRNA依存のDNAトランスポジションに関与することが実験的に示された [2-3]。これらのバリアントの中には起源を容易に推定可能なものもあるがCRISPR-Casの分類体系での位置付けは今後の課題である。
  3. CRISPR-Casシステムの特定のバリアントと相関する多数の補助的 (ancillary)遺伝子ファミリーが、特にタイプIIIシステムにおいて、多数同定され、シグナル伝達と調節に関与することが示唆された [4-7]
 レビューで取り上げられたトピックス:クラス1とクラス2の特徴;生物分類に利用されるrRNAのような共通遺伝子が存在しないCRISPR-Casシステムの分類法;機能モジュールとコア遺伝子の解説;クラス1の分類体系と遺伝子座の構造 (Fig. 1);クラス2の分類体系と遺伝子座の構造 (Fig. 2);部分的に共有されている遺伝子に注目したCRISPR-cas遺伝子間ネットワーク構築;CRISPR-Casシステムの6種類のタイプのアーケアとバクテリアにおける分布;コアと補助的cas遺伝子;CRISPR-Casシステムの起源と進化。

[参考レビューとcrisp_bio記事]
  1. An updated evolutionary classification of CRISPR-Cas systems.  Makarova KS [..] Koonin EV. Nat Rev Microbiol. 2015 Nov;13(11):722-36. Online 2015 Sep 28.
  2. 2019-06-08 CAST: CRISPR-Casシステムとトランスポザーゼの協働により、標的ゲノムを切断することなく、外来DNAの挿入を実現
  3. 2019-06-13 短縮型I-F CRISPR-Casを帯びたトランスポゾンにより、DSBを介さず大腸菌ゲノム標的サイトにDNAをノックイン
  4. CRISPRメモ_2018/09/10 [第3項] [レビュー] CRISPR-Casシステムは、獲得免疫を超えて様々な細胞過程に関与している
  5. CRISPRメモ_2018/06/24 [第4項] アーケアとバクテリアのタイプⅢ CRISPR-Cas遺伝子カセット隣接領域に保存されているタンパク質の網羅的探索から39種類の新たなcas遺伝子ファミリーを同定
  6. CRISPRメモ_2018/05/23 [第1項] CRISPRicity:CRISPR-Casシステムに機能的に強く連関する遺伝子を網羅的に探索
  7. CRISPRメモ_2017/08/07 [第3項] バクテリアの獲得免疫機構におけるセカンドメッセンジャー発見
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