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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] CF-PA2Vtech: a cell-free human protein array technology for antibody validation against human proteins. Morishita R [..] Sawasaki T. Sci Rep. 2019-12-18.

 抗体は、ペプチド、タンパク質および化合物といった特定の分子の検出に広く使われているが、標的分子に対する特異性には課題を残しており、抗体を使った実験データの信頼性を高める努力が続いている [1-3]。セルフリーサイエンス社と愛媛大学プロテオサイエンスセンターの研究グループは今回、抗体の品質を効率よく同定可能とする技術、CF-PA2Vtech、を開発し、その性能を抗HA抗体と抗PD-L1抗体の交叉反応性の同定で実証した。
  • 研究グループは、ヒト全長cDNAsのN末端にFLAG-GST (グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)を融合し、コムギ胚芽無細胞 (Cell Free: CF)タンパク質合成技術 (生化学, 2007)に基づいて19,712種類のヒト組換えタンパク質を合成した上で、10~14種類のタンパク質を混合し、グルタチオンを表面に結合させた磁気ビーズと強力なマウネットプレートを介して、384ウエル x 12枚または1,536ウエル x1枚のプレートのウエルに固定したタンパク質アレイ (Protein Array: PA) を構築していた[Figure 1の一部引用下図A/B/C参照]Figure 1  part
  • 研究グループは今回、このPAに基づいて抗体 (Antibody: A)の特性評価 (Validation: V)する技術 (technology)を確立し、CF-PA2Vtech、として発表した
  • 市販の抗-HA抗体 (TANA2, MBL)または抗-PD-1抗体(D4W2J, Cell Signaling Technology) をモデルとして実証実験を行い、PAからそれぞれ、13種類と3種類のヒトタンパク質と結合することを見出し [抗-HA抗体についてTable 1引用下図参照]、この交叉反応性を免疫ブロット法で裏付けた。Table 1
  • CF-PA2Vtechでは全てのタンパク質が全長cDNAに紐付けられていることから、設計されたエピトープの配列との相同性検索から交叉反応したタンパク質のエピトープ候補配列を推定し、続いて、アラニンスキャニングにより、それらがエピープであることを裏付けた。
  • 抗-PD-1抗体(D4W2J)の場合、エピトープは残基Ala274を囲むペプチド (•••GPRSAQPLR•••) とされているが、Figure 4/Table 2引用の下図にあるように、PD-1であるClone-4の他のClone-1, -2および-3のエピトープ候補は、SAQそしてまたはRxAQの配列を帯びていた。研究グループは、アラニンスキャニングの結果も受けて、抗-PD-1抗体(D4W2J)は、主としてRxAQ配列をエピトープとして認識するとした。Fig. 4- Tab 1
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crisp_bioブログのカテゴリ「PDIS事業成果」の意味:PDISは創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業の略称であったが、この事業終了後のAMEDにおける後継プロジェクトに由来する成果も「PDIS事業成果」にカテゴライズ。
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