[出典] In vivo epigenetic editing of Sema6a promoter reverses transcallosal dysconnectivity caused by C11orf46/Arl14ep risk gene. Peter CJ, Saito A [..]  Akbarian S, Kamiya A. Nat Commun. 2019-09-11.  (bioRxiv. 2018-12-10)

 Icahn School of Medicine at Mount SinaiとJohns Hopkins University School of Medicineを主とする研究グループは今回、健常者23名と、11p13を欠失しているWAGR症候群27名の遺伝情報とMRI画像を組み合わせて、左右の大脳半球をつなぐ交連線維の太い束である脳梁の形成が、染色体11p13にコードされている核タンパク質遺伝子であるC11orf46/Arl14epに左右されること、すなわち、C11orf46ハプロ不全が、脳梁の形成不全と相関することを見出した。

 続いて、マウスin vivoにて、shRNAの子宮内エレクトロポレーションを介してC11orf46をノックダウンし*、脳梁を形成するニューロンの投射が不全に至ること、この不全が、shRNA耐性野生型C11orf46を共発現させることで一部レスキューされるが、知的障害と関連するshRNA耐性C11orf46 (R236H)変異体の共発現ではレスキューされないことを、同定した [* crisp_bio: ブログ記事タイトルではこれをWAGR症候群モデルマウスとした]。

 さらに、HEK293T細胞in vitroおよびマウスin vivoでの実験から、C11orf46因子によるSema6a遺伝子発現の調節が、脳梁形成を左右することを同定した。C11orf46をノックダウンしたニューロンでは、H3K9me3レベルが低下し、セマフォリン6a (Sema6a)を含む軸索発生を制御する一連の遺伝子群の発現が亢進していた。

 ここで、Sema6a遺伝子のプロモーターを標的とするsgRNAに依存するdCas9-SunTagシステムを介して、オリジナルのSunTagシステムのVP64に替えてC11orf46を10コピーSema6a遺伝子のプロモーターへとリクルートすることで、SEMA6Aの異常発現が正常化し、SETDB1によるH3K9のメチル化亢進を介して、脳梁の形成不全の修復を実現した [Fig. 5のa-dとe/fをそれぞれ引用した左下図と右下図参照]。
Fig. 5-1 Fig. 5-2