2020-11-10 更新 参考記事へのリンクを追加:ゲノム編集で野生種を一気に作物に~トマトから見えてきた未来の農業「天然」の植物にとっての遺伝子組み換えと「ゲノム編集」(4) 鳥居啓子 (テキサス大学オースティン校冠教授/名古屋大学客員教授). 論座 2020-11-10; Nat Biotechnol論文の標的遺伝子の手掛かりとなったシロイヌナズナ遺伝子ERECTAを鳥居教授が発見したエピソードも記されている。
2019-12-25 初稿
[出典] Rapid customization of Solanaceae fruit crops for urban agriculture. Kwon CT [..] Lippman ZB. Nat Biotechnol. 2019-12-23.
[出典] Rapid customization of Solanaceae fruit crops for urban agriculture. Kwon CT [..] Lippman ZB. Nat Biotechnol. 2019-12-23.
作物の品種改良による食糧問題の解決が試みられているが、CSHL, Wonkwang University, Weizmann Institute, Boyce Thompson InstituteならびにUniversity of Floridaの米韓イスラエルの研究グループは、都市環境での栽培を容易にする品種改良を実現した。対象は、トマトである。
世界人口の増加にともなう耕地の減少、水資源の減少および気候変動が、将来の農業ひいては地球規模の食糧供給にとって重い課題となっている。その解決策としてこれまで主として、大規模農業においてトウモロコシ、イネ、大豆および小麦 といった主要作物の生産性を高める試みが行われ、その手段の一つとして品種改良による収量向上の研究開発が進められてきた。一方で、大規模農業は環境に負荷をかけるリスクを伴うこともあり、近年、都市環境での持続可能な作物栽培 (urban farm/都市型農業)を目指して、例えば、垂直農法や環境を自動制御する屋内植物工場の開発が進み始めた。
都市型農業はこれまでレタスをはじめとする葉菜類に限られていた。都市型農業では、栽培条件が極めて厳しく、また、小型で栽培サイクルが速いことが求められるためである。研究グループは、収量を損なうことなく果実やベリー類を小型化することを目指した。
- 陸上植物は一般に頂端分裂組織を介して主たる幹が伸長し、また、幹から枝が発生し伸長するという無限成長 (indeterminate growth habit)という様式をとる。研究グループは先行研究で、フロリゲン植物ホルモンシステムにおける2種類の開花調節因子に変異を誘導することで、無限成長型であるトマトから動物に見られるような有限成長 (determinate growth habit)型でコンパクトな品種を作出していた。すなわち、古典的な開花抑制遺伝子SELF RUNNING (SP) の自然変異あるいはCRISPR/Cas9誘導変異によって有限成長型とし、加えて、SPのパラログSP5Gにも変異を導入することで、開花促進とコンパクト化を実現した。
- 研究グループは今回、EMS(エチルメタンスルホン酸)により誘導していた葉と花の (節間)間隔が極めて短く実が高密度で成る品種の遺伝型と、類似の変異体の遺伝型、およびCRISPR-Cas9による候補遺伝子のノックアウト実験に基づいて、シロイヌナズナのERECTA (ER)遺伝子のトマト相同遺伝子 (Solanum lycopersicum ER: SlER)にも変異を導入することを選択し、CRISPR-Cas9により、SP、SP5GおよびSlERの三重変異体を作出し、都市環境でに栽培に適したトマト品種を樹立するに至った。節間を短縮する手法は、グランドベリーのコンパクト化にも有効であった。
[参考] Nature Biotechnologyの関連ツイートのリツイートを以下に引用
CRISP_SCIENCE@ScienceCrispa perfect fit for Happy Holidays Cards https://t.co/ONN5AyKYJK
2019/12/24 20:17:56
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