2020-09-29 その表紙を飾ったDevelopmental Cell 誌掲載論文の書誌事項を追加, 投稿タイトルと本文テキストを改訂(ファクトには変更無し)、Cas13a関連crisp_bio記事リストを更新
2020-01-15 bioRxvに準拠した初稿

[出典] CRISPR-Cas13d induces efficient mRNA knock-down in animal embryos. Kushawah G [..]  Bazzini AA, Moreno-Mateos MA. boRxiv. 2020-01-14 > Dev Cell 2020-09-28 (online 2020-08-01).

 初期胚発生は卵母細胞に蓄積された母性遺伝子産物によって進行することは知られていたが、母性遺伝子を編集する技術が不十分であったため、母性遺伝子の機能解析は進んで来なかった。Stowers Institute for Medical Research、Andalusian Center for Developmental Biologyなどの米国・スペインの研究グループは今回、RNAを標的とするCRISPR-Cas13システムの中でもCRISPR-RfxCas13d (CasRx) [*]を介して、ゼブラフィッシュを始めとして、動物胚における母性遺伝子の機能解析が可能なことを実証した。
  • はじめに、ゼブラフィッシュ胚において、cas13d mRNAおよびをCas13dタンパク質による母性遺伝子由来mRNAと接合子mRNAの効率的かつ精密なmRNAノックダウンを実証した。
  • ノックダウン効率は平均76%であり、標的遺伝子のノックダウンに相応した表現型が呈された。
  • Cas13ファミリーの中でも、Psp/PguCas13bとLwaCas13aはゼブラフィッシュ胚においてノックダウン活性を示さなかった。
  • ゼブラフィッシュに続いて、メダカ(Oryzias latipes)、キリフィッシュ (Nothobranchius furzeri; 卵生メダカの一種)、およびマウスの胚においてもCas13d-gRNAによるノックダウンを介して胚における遺伝子機能解析が可能なことを示した。
[Cas13d関連crisp_bio記事 (ブログ投稿または更新の時系列順)]
  1. [*] 2018-03-17 これまでで最小かつヒト細胞で活性なCas13dの同定と解析2報 [Salk研 (Cas13d/CasRx);Arbor Biotechnologies/NCBI (Cas13d)]
  2. CRISPRメモ_2018/05/05 CRISPR-Cas13d RNAガイド・リボヌクレアーゼの構造基盤
  3. CRISPRメモ_2018/09/21_1 [第2項]CRISPR-Cas13dのRNAガイド・リボヌクレアーゼ活性の構造基盤
  4. CRISPRメモ_2018/05/06 [第1項][Research Highlights] RNAノックダウンとスプライシング制御を可能にする小型のCas13d (CasRx)をハイライト
  5. 2018-10-05 スプライシングの制御を可能とするCRISPR技術を開発:CASFx (CRISPR Artificial Splicing Factors) [CasRxとdCasRxにスプライシング因子を融合]
  6. CRISPRメモ_2019/04/17-1 [第2項] タイプVI-D CRISPR-Casシステムにおいて、アクセサリータンパク質WYL1がエフェクターCas13dの活性を亢進する機構
  7. CRISPRメモ_2019/06/13-1 [第1項] X線結晶構造解析によるCas13dの構造機能解析
  8. 2019-12-30 Cas13dによるRNAノックダウンに最適なcrRNAsの設計モデルを構築
  9. 2019-09-08 ゲノムDNAとmRNAの生細胞内動態をリアルタイムで観察可能とするCRISPR LiveFISH
  10. 2020-02-23 新型コロナウイルスのCas13dによるin vivo治療の可能性
  11. 2020-03-19 Cas13dによるRNAノックダウンに最適なcrRNAsを超並列スクリーン結果に基づく機械学習モデルにより設計
  12. 2020-04-13 Cas13d/CasRxにより神経細胞消失を修復: 成体マウスin vivoでグリア細胞を神経細胞へと転換
  13. [20200430更新] 新型コロナウイルスとインフルエンザA型ウイルスの感染・増殖をCRISPR-Cas13d (CasRx)で阻止する
  14. [2020-06-18更新]  人工スプライシング因子をCas13dに由来するCasRxで実現
  15. 2020-09-01 モデル生物の転写物とウイルスRNAを標的とするCas13dノックダウンに最適なgRNAsの設計
  16. 2020-09-15 CRISPR-Cas13dはバイオ医薬品の宿主細胞CHO細胞の改変に有用