[出典] Cytosine base editor 4 but not adenine base editor generates off-target mutations in mouse embryos. Lee HK [..] Willi M, Hennighausen L. Commun Biol. 2020-01-09

 NIHのNIDDKとNHLBIの研究グループは、ABE7.10 と、CBEの中で比較的高精度なBE4がそれぞれマウス胚に誘導するオフターゲット変異をトリオ解析 (Fig. 1引用左下図 a とTable 1引用右下図参照)で同定し、ABEとBE3について報告されてきた結果と同様な結果を得た。
FIG. 1 TABLE 1
すなわち、base editorsをインジェクションしないコントロールとABEをインジェクションした胚に対して、BE4をインジェクションした胚に限りオフターゲット変異が発生した。
  • ABEとBE4による標的編集実験には共通のsgRNAsを使用し、ABEについては33変異アレル、BE4については17変異アレルを得て、BE4についてのみ誤変換と欠失が発生することを同定した (左上図 b 参照)
  • オフターゲットのde novo SNVs誘導については、ABEでは119ヶ所とコントロールと同程度であり、BE4では221箇所に達した (Fig. 2引用下図 B 参照)。Indels発生については、BE4とABEおよびコントロールの間に有意差がなかった (Fig. 2引用下図 C 参照)。FIG. 2
  • BE4とABEの臨床応用にあたっては、BE4のオフターゲット変異誘導の他に、稀ではあるがABEによるC-to-Tの誤変換の発生 [1]と、CBEとABEによるDNAではなくRNAの塩基編集 [2-3]に留意する必要がある。
 [BE3またはBE4およびABEによるオフターゲット変異関連crisp_bio記事]
  1. 2019-09-24 ABEは、AからGへの変換に加えて、CからGまたはTへの変換ももたらす
  2. 2019-04-19 塩基編集ツールCBE (rAPOBEC1)とABEは、DNAを編集する間に、RNAも編集する
  3. 2019-06-12 BE3とABE7.10によるRNAオフターゲットSNVs大量発生とその抑制法
  4. 2019-03-02 C-to-T塩基編集(BE3)は、イネでもマウスでも、大規模なオフターゲット変異を伴う
  5. 5. 2018-11-28BE3とCas9がオフターゲットとオンターゲットに誘導する変異プロファイル2報 [第1項] 一塩基編集(BE3)はオフターゲットSNVsを顕著に誘発する
  6. 2018-11-16 D. R. Liuによる塩基編集技術 (BE)のレビューと最新論文: 1. 一塩基編集(Base editing): 生細胞のゲノムとトランスクリプトームの精密化学; 2. マウス胚において、シトシンBE(CBE)とアデニンBE (ABE)の高精度編集を検証
  7. CRISPRメモ_2018//19 [第4項] 極めて効率の良いウサギのRNA誘導塩基編集(BE3, BE4-Gam; ABE)