1. CRSIPR/Cas9の細胞型特異的デリバリーを実現するバイオミメティック金属有機構造体 (MOF)
[出典] Cell-Type-Specific CRISPR/Cas9 Delivery by Biomimetic Metal Organic Frameworks. Alyami MZ [..] Khashab NM. J Am Chem Soc. 2020-01-17
  • KAUSTの研究グループは、CRISPR/Cas9をゼオライト様トポロジーのイミダゾレート構造体 (zeolitic imidazolate frameworks, ZIFs)に封入し、これをCC-ZIFと称し、このCC-ZIFを癌細胞膜で被覆し、これをC3-ZIFと称した。
  • 乳がん細胞株MCFの細胞膜で被覆したC3-ZIFを、癌細胞 (MCF-7またはHeLa)、または正常細胞とインキュベーションし、MCF-7に高効率で取り込まれ、正常細胞への取り込みは無視できる程度であることを確認した。
  • FMCF-7におけるEGFPの発現抑制で遺伝子編集活性を評価し、MCF-7で被覆したC3-ZIFの抑制度がHeLaで被覆したC3-ZIFの三倍に及ぶことを同定した。加えて、MCF-7で被覆したC3-ZIFがMCF-7腫瘍細胞に蓄積されることも同定した。
2. In situ 塩基編集 (BE) による乳癌モデルマウス作出
[出典] In situ CRISPR‐Cas9 base editing for the development of genetically engineered mouse models of breast cancer.  Annunziato S, Lutz C [..] Jonkers J. EMBO J. 2020-01-13
  • The Netherlands Cancer Instituteの研究グループは、BRCA1欠損トリプルネガティブ乳癌 (TNBC)マウスモデルWB1P [*]を樹立し、Cre誘導性Cas9-sgRNAにより特定の遺伝子の欠損が及ぼす作用の解析が可能なことを示したが [*]、今回、Sanger InstituteおよびWeill Cornell Medicineと共同で、Cre誘導性BE3を介して点変異を導入することで、ミスセンス変異とナンセンス変異の作用の分析が可能なことを示した ([*] crisp_bio 2019-01-27 [第1項] BRCA1変異乳癌のドライバー遺伝子候補群から有力な抗癌剤標的を効率良く同定可能にする新手法)。
3. CRISPR技術により仮性狂犬病ウイルス (PRV)に量子ドット (QD)を組み込むことで、シングル・ウイルスのin vivo追跡を実現
[出典] Single Virus Tracking with Quantum Dots Packaged into Enveloped Viruses Using CRISPR. Yang YB [..] Cai XH, An TQ. Nano Lett. 2020-01-13.
  • Harbin Veterinary Research Instituteの研究グループが、 Vero細胞とHeLa細胞において、dCas9/gRNAにより、PRVの核酸にQDを結合させ (以下、PRV-QD)、PRV-QDの吸着、微小管にそった細胞質への移動および核への侵入をリアルタイムで観察可能であることを示した。
4. メタゲノムの条件付き依存性ネットワーク解析により32種類のCRISPR関連遺伝子 (cas遺伝子)を発見
[出典] Network-Based Prediction of Novel CRISPR-Associated Genes in Metagenomes. Weissman JL, Johnson PLF. mSystem. 2020-01-14.
  • University of Marylandの研究チームが、ゲノム配列のアライメントを基礎とするcas遺伝子探索に変わるネットワーク解析によりメタゲノム配列から直接探索する手法を開発 (FIG. 1引用下図参照)mBio
5. [レビュー] CRISPR/Cas9システムの"nongenetic"モデル植物ゲノム編集への応用
[出典] [REVIEW] Considerations in adapting CRISPR/Cas9 in nongenetic model plant systems. Shan S [..] Yang B. Applications in Plant Sciences. 8(1): e11314.
  • University of Floridaを主とする著者らは、レファレンス・ゲノムが未決定で形質転換の手法が確立されていない植物を"nongenetics model plant"と定義し、"nongenetics model plant"ゲノム編集へのCRISPR/Cas9技術の適用の仕方、事例 (植物24科にわたる45属, FIGURE2 引用下図参照)Plant
    および課題を紹介し、将来を展望:植物の選択法; 標的遺伝子の選択法; 近縁のモデル植物で実証されたベクターを利用 (sgRNA, 多重化、Cas9エンドヌクレアーゼ); トランジェントアッセイの薦め; 形質転換 (外植片の選択と再生, CRISPRシステムのデリバリ, 形質転換体の同定); ゲノム編集結果の評価 (誘導された変異検出, オフターゲット検出, 変異の遺伝性); 展望 (キク科の遺伝子機能と表現型の多様性, 多倍数性, 遺伝子機能と花器の起源)